リスクマネジメント
当社は、各PCGとの「相互信頼」に基づき、各PCG※が自律的に運営する内部統制システムを基本とするリスクマネジメントを実践しています。
内部統制の考え方
適切なリスクマネジメントはMSV追求の前提です。当社は、変化する社会情勢やステークホルダーのニーズを注視し、内部統制システムのあるべき体制・仕組みを適時見直し、適切な更新を行っています。2022年に刷新した当社の内部統制体制は、2年目を迎え、各PCGにも浸透してきました。各PCGが展開する塗料・周辺分野は、地産地消型の自律的な事業展開が適しているため、各PCG責任者に業務執行の権限と内部統制システムの運用責任を委ねることを基本としています。各PCG責任者が事業に応じたリスクを特定して対応し、共同社長は各PCG責任者から各種報告を受けながら、各PCG責任者の評価・選解任を行うことなどを通じて、グループ運営を統括することとしています。
内部統制システム基本方針における「グループ運営体制」の骨子
PCGに対する経営管理 | 重要案件の事前承認制、重要なリスクの適時報告体制など |
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PCG責任者の選解任 | 財務的要素に加え、内部統制に関する責務の達成度など、非財務要素も勘案して評価・決定 |
共同社長のPC重要会議への直接参加 | 重要なPCに関しては、その重要会議体に共同社長、その他の執行役が参加 |
「Audit on Audit」によるグループ監査 | 当社監査部と各PCGの内部監査部門の連携による監視 |
内部統制システム基本方針における3つの核
内部統制システム基本方針 | 日本ペイントグループ グローバル行動規範 当社グループ全社がグローバルに共有し、順守すべきコンプライアンス、倫理、サステナビリティに関する行動規範 |
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グローバルリスクマネジメント基本方針 「アセット・アセンブラー」モデルに基づく実効的なリスクマネジメント実践のための各社の役割・責任分担などを規定 |
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内部通報窓口 グローバル基本方針 各社による内部通報窓口の運用方針を規定 |
内部統制体制
この自律・分散型の内部統制体制に加え、気候変動をはじめとする地球規模の課題や将来に向けて行動すべき社会課題など、PCG 横断で取り組むべき課題に対しては、共同社長のリーダーシップのもと、5つのサステナビリティ・チームを組成し、グローバルな取り組みを推進しています。それぞれのテーマは、「環境&安全」、「人とコミュニティ」、「イノベーション」、「ガバナンス」、「調達」であり、各テーマに長けたビジネスリーダーを中心に活動を進めています
(「MSVの前提としてのサステナビリティ」参照)。
こうしたグループ内部統制システムによる各地域での事業に根差したリスクマネジメントと、各サステナビリティ・チームによる将来課題や社会的要請に関するグローバル活動の枠組みは、共同社長の指揮、Group AuditCommittee(GAC)※2における情報共有などを通じて各PCGに共有されています。そして、これらの枠組みを通じたコミュニケーションが「アセット・アセンブラー」モデルを支える「相互信頼」の基盤となっています。
適切なリスクマネジメントはMSV追求の前提であり、当社は、変化する社会情勢やステークホルダーのニーズを注視し、内部統制システムのあるべき体制・仕組みを適時見直し、適切な更新を行います。
リスクマネジメント体制
当社は「グローバルリスクマネジメント基本方針」において、共同社長をリスクマネジメントに関する当社グループ全体の最高責任者として、各PCG責任者を自ら展開する事業の第一線として、それぞれの役割を定義しており、役割に基づく各PCGにおける自律的なリスクマネジメントを適切に運用しています。具体的には、各PCG責任者はリスクベースアプローチを用いた自主点検・自己評価(Control Self-Assessment(CSA))を行い、対処すべきリスクを特定し、管理計画の策定や改善を実行する責任を負います。共同社長はこのCSAの結果報告を受け、グループリスクを地域・事業ごとに把握・分析した上で、各PCGの重要な経営会議体への直接参加などを通じて、実効的なモニタリング、必要なリスク対応を指示しています。実際に共同社長がCSAの結果報告をもとに具体的な対策の進捗を確認し、PCGの責任者と状況を共有するなど、タイムリーなモニタリングを実効的に行っています。また、共同社長は当社グループ全体のリスクを俯瞰し、PCG横断で対処するべき共通リスクが認識された場合には、「リスクマネジメント委員会」を招集し、対策を審議・決定することとしています。こうしたリスク分析の結果は、共同社長が監査委員会・取締役会へ報告するとともに、各PCGのリスクマネジメント・内部監査の責任者が一堂に会するGroup Audit Committee(GAC)において協議し、対応策に関するベストプラクティスの共有などを行っています。加えて、上記とは別に、既定のレベルを超える影響度を有するインシデントの発生やリスクの発覚など、グループ全体に影響を及ぼすような危機(災害や環境汚染、製造物責任、品質問題、不正行為など)が発生した場合は、適時または即時に共同社長への情報共有を行い、共同社長が必要に応じてグループ横断での対応を指揮する体制としています。
グループリスクマネジメント・プロセス
リスクマネジメント活動
グループにおける「リスク上位項目」への対応
当社は、毎年度実施する各PCG責任者によるCSA結果から、当該年度において自社内、社会動向などを踏まえリスク感受度が特に高く評価された項目を「リスク上位項目」として抽出・分析しています。2023年度の概況については、以下の通りです。
- 2022年度のリスク結果を踏まえて対応に着手した「国際税務などに係るリスク」はリスク感受度が低下
- 昨今の急速なデジタル化の進展に伴い、2022年度のリスク上位項目「事業継続計画に係るリスク」の内訳の1つ「ITリスク」がフォーカスされ、「IT利活用・ITシステムに係るリスク」がリスク上位項目となった
- その他、「サプライチェーンに係るリスク」「人的資本に係るリスク」「コンプライアンスに係るリスク」のリスク感受度は、2022年度に比べて横ばい、あるいは減少傾向であるものの、外部環境の影響が大きく、長期にわたる対策が必要なため、2023年度も連続してリスク上位項目と評価された
以上より、2023年度のリスク上位項目は下表の通り4項目になり、各PCGが必要な対策を実施しています。また、「リスクマネジメント体制」に記載の通り、継続してモニタリングを行い、必要な対処を行っています。
リスクヒートマップ
2023年度 リスク上位項目 |
リスク感受度の 変化傾向 (2022年度対比) |
リスク内容と主な対策 |
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IT利活用·ITシステムに係るリスク | 増大 |
情報資産の管理、データ漏えい、災害・障害に備えた体制、情報セキュリティ方針・規定の策定など
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サプライチェーンに係るリスク | 横ばい |
原材料の調達途絶、為替変動、在庫管理・ロジスティクス、与信管理など
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人的資本に係るリスク | 減少 |
グループ経営陣のサクセッションなど
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コンプライアンスに係るリスク | やや減少 |
社会的にリスクが増大している機密情報管理など
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コンプライアンスに関する制度と活動
グローバル行動規範の拡充
当社グループは、コンプライアンス、倫理、サステナビリティに関する「日本ペイントグループ グローバル行動規範」をグループ全社が共有し、順守しています。この行動規範は、各PCGにおいて各地のビジネス環境に応じて詳細化が行われるなど、共同社長のリーダーシップのもとで各国・地域へ幅広く受け入れられています。
また、事業活動における「腐敗行為防止」および「マネーロンダリング防止」に関する当社の役割を明確化すべく、2023年11月にグローバル行動規範の一部として「腐敗行為防止」および「マネーロンダリング防止」のステートメントを付加し、社内外へ周知しました。
コンプライアンス研修
国内においては、全役職員(日本ペイントホールディングスの社外取締役を除く全ての役員及び契約社員・派遣社員を含む従業員)に対し、コンプライアンスに関するメールマガジンの定期的な発信、ハラスメント講習、「国内行動規範」の浸透活動、その他対象者に応じたテーマ別の研修を随時企画・実行しています。これらの効果測定として、年に1回コンプライアンス理解度テストを実施し(具体的には、適正なマーケティング活動、贈収賄を含む腐敗防止、下請法などについて、法令や社内規程に関する理解度の確認等)、結果を次年度の教育研修に役立てることで、コンプライアンス知識・意識の維持向上に努めています。また、近時サイバー攻撃の脅威が高まっていることを背景に、情報漏えい防止を期して標的型攻撃メールの訓練やE-learningを定期的に実施しています。
内部通報制度
「日本ペイントグループ グローバル行動規範」と「内部通報窓口グローバル基本方針」において、秘密保持、通報者の不利益扱いの禁止を定めており、各PCGが本方針に基づく内部通報制度を自律的に整備し、利用者に周知の上、適切に運用しています。 各PCG責任者は、内部通報窓口の運用状況について、定期的(年1回)に監査委員会、取締役会へ報告を行っています。 加えて、重大な法令違反、不祥事、PCG経営陣による法令違反、非行やその具体的可能性の通報は、適時または即時に共同社長へ情報共有を行い、共同社長が必要な対応を指揮する体制としています。
2023年度にはグループ全社で、内部調査を実施した通報件数が合計53件ありました。通報のあった事案については、内容に応じて各PCGの適切な部門が調査・分析・対応を行い、体制整備や従業員教育など、不正・違反行為の未然防止につなげています。また、GACを通じて各PCGの通報/対応および普及活動の状況を共有し内部通報制度の実効性向上に努めています。
2023年度 内部通報実績
労働環境(労災、ハラスメント、差別) | 31件 |
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資産・情報の漏えい、流失(利益相反、横領、データの不正利用など) | 7件 |
不正会計 | 0件 |
法令違反(競争法違反、インサイダー取引、わいろ、業法違反等) | 4件 |
その他 | 11件 |
合計 | 53件 |
腐敗防止への取り組み
日本ペイントグループでは、グローバル行動規範(Global Code of Conduct)に、「公正な競争をします」「賄賂や腐敗行為を許容しません」「利益相反を防ぎ、贈答、接待は良識ある対応の範囲で行います」と定め、贈収賄・腐敗行為防止に取り組んでいます。
税の透明性
日本ペイントホールディングス(NPHD)およびグループ会社は、グループ行動規範である「Global Code of Conduct」に基づき、各国・各地域の法令遵守を徹底し、グローバルな事業活動・事業展開を行っております。それに伴い、コンプライアンス体制の整備、また適正に納税することは社会的責任であると同時に、NPHDおよびグループ会社が果たすべき社会貢献につながるものと認識しております。
さらに、NPHDおよびグループ会社は、透明性のある適切な税務運営のもと、ステークホルダーとの信頼関係の構築、また企業価値・株主価値を高めるとともに、グループの持続可能な成長の実現を目指します。
NPHDおよびグループ会社の税務方針は以下の通りです。
日本ペイントグループ税務方針
- 法令遵守
- NPHD及びグループ会社は、事業活動を行う各国・地域の税法関連法令等を遵守するとともに、これら法令等の精神に従い適切な税務申告・納税を行っています。いわゆる「租税回避地」の利用その他、租税回避のためのタックスプランニングは行いません。また、事前に外部専門家との検討を行い、適切な税務リスクの評価、および税務リスクの最小化に努めています。
- 税の透明性
- NPHDおよびグループ会社は、BEPS行動計画等の国際的な取り組みが、国際的な租税回避防止および税の透明性を確保するために重要な取り組みであると理解しております。BEPS行動計画の主旨に従って適切な税務管理を行うことによる税の透明性の確保に努めています。
- 移転価格税制への取り組み
- NPHDおよびグループ会社は、国外関連者との取引にあたっては各国・地域において適正な納税額となるために、OECD移転価格ガイドラインに従い、独立企業間原則に基づき設定しております。
また、各グループ会社の機能、資産およびリスクの分析等に基づき、その貢献に応じた適切な利益配分となっていることを定期的に評価し、移転価格文書の整備に努めています。- 税務当局との関係性
- NPHDおよびグループ会社は、各国の税務当局との信頼関係および健全かつ良好な協力関係を構築するため、当局とのオープンで適切なコミュニケーション、また当局からの要請に対して適時かつ正確な情報提供を行います。もしも当局との見解の相違が生じる場合は、誠意をもって当局と協力し、早期解決に努めます。
環境及び社会に関する活動
日本ペイントグループは、株主価値最大化(MSV)の過程において、環境及び社会に関係する責任の充足は大前提と考えており、様々な活動を実施しています。
・環境
環境については、取締役 代表執行役共同社長直下に世界各地域の主要パートナー会社からメンバーを集めたグローバルチームを設置し課題と対策の特定に取り組んでいます。その中で気候変動を含む環境対策についてグループ全体の方針を策定し、さまざまな取り組みを進めています。
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気候変動リスク・機会に対する戦略事例はこちらをご覧ください。
・社会
当社グループは、バリューチェーンを通じたコミュニティへの投資を行い、市場の拡大、ブランドの強化、地域コミュニティとの良好な関係を基盤とした持続的な成長を実現します。そして当社グループが活動するあらゆる地域における持続可能な発展を支え、推進するために事業活動を目指します。すべての人々に豊かな彩と快適さ、安心を提供することは、創業以来の私たちの変わらぬ使命です。
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