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財務・M&A戦略

財務戦略


取締役 代表執⾏役共同社⻑ 若⽉ 雄⼀郎

MSV実現に向けた財務・M&A戦略

取締役 代表執⾏役共同社⻑ 若⽉ 雄⼀郎

「資本コスト」への意識

当社は「EPSの最大化」と「PER最大化」を図りながら、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト:約6%)を最終的に上回るM&Aを実行する方針です。積極的なM&Aに伴うのれんの計上により資本効率はやや低下傾向にありますが、そもそも買収する会社は初年度からのEPS貢献を見込んでおり、買収後の利益成長やキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の短縮化などを通じて、3~4年でROICがWACC(連結ベース)を上回ることを目指し、資本効率の改善につなげています。資本効率の低下は、リスク増大につながるため警戒心を持って注視する必要がある一方、ROICに傾倒し過ぎると優良なM&Aの機会損失につながりかねないため、利益成長とのバランスが必要と考えています。

当社が展開する市場のリスク・リターンの優位性に加え、強固なバランスシートや低ファンディングコストにより、リスクをコントロールした上で、EPS向上を加速させることは十分可能と考えています。

下表の通り、2019年以降に買収した主要なアセットのROICは、買収以降の利益成長とバランスシート・マネジメントが奏功し、年々改善しています。Betek BoyaのROICは買収2年目で連結ベースのWACCを上回っており、PT Nipseaは買収4年目の2024年、DuluxGroup(太平洋)もROICが徐々に改善し、2024年にスプレッドがプラスになると見込んでいます。

WACC・連結ROIC・EPS
WACC・連結ROIC・EPS
個社ROIC※1
個社ROIC

「アセット・アセンブラー」モデルに資する財務戦略

当社の資本政策は、財務規律を維持しつつ、成長投資を優先的に実施し、EPSの持続的増大を通じてTSR(株主総利回り)を向上させることに主眼を置いています。

財務規律

①負債調達を優先、②レバレッジ余力を維持、金融機関・格付機関との対話の促進、③EPS増加を前提として資本調達も選択肢、の3点を重視しています。塗料・周辺事業はキャッシュ・フロー創出力が非常に強く、当社としてはM&Aの実現に向けた資金を確保するべく、低ファンディングコストを積極的に活用していきます。

設備投資・M&A

将来の持続的成長に向けて積極的に設備投資を実施していますが、当社事業の売上規模やキャッシュ・フローに比べると設備投資の負担は比較的限られています。生産能力の増強やDX・研究開発の強化などの新規投資は規律を持って各地で実施していることから、M&Aこそが最も資金需要の高い投資先となります。「アセット・アセンブラー」モデルのもと、引き続き良質で低リスクのM&Aを適正なバリュエーションで積み上げていきます。

株主還元

M&Aを中心とした成長投資を最重要視する中、株主還元についてはEPSの増大を通じたTSRの向上に主眼を置いています。
配当は、業績動向、投資機会などを総合的に勘案しながらも、配当性向30%を目途に安定的に行う方針です。(配当金・TSRの推移は「財務ハイライト」参照)

資本政策
資本政策
設備投資額
設備投資額

財務規律の徹底と最適資本構成の構築によるバランスシート・マネジメント

財務規律の徹底に向けては、当社は負債調達を優先する一方、低コストの資金調達を継続するべく、レバレッジ余力を維持しています。当社のリスクの性質について金融機関や格付機関からの適切な理解を獲得することが非常に重要であることから、積極的な対話の実施や開示資料の充実を図っています。

バランスシート・マネジメント

バランスシート・マネジメントとしては、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)をKPIの1つに設定しており、各パートナー会社は各地域・事業で取引条件を見直すなどの短縮化を進めています。政策保有株式についても、最近実施した売却などを通じて、継続して縮減に取り組んでいます。固定資産(有形固定資産、無形資産、のれん)はM&Aの実施などにより増加傾向にあります。そうした中、資産効率や収益性の観点から積極的にモニタリングしており、欧州自動車用・インド事業の譲渡や、日本グループや船舶用事業の構造改革をはじめとした戦略的なコーポレート・アクションを適宜実施しています。
のれんについては、「自律・分散型経営」による円滑なPMIの実施や適切なバリュエーションで「良質なM&A」を積み上げることで、減損リスクを低減しています。

バランスシート・マネジメント方針

2022年12月末時点

資産
  • 「現金・現金同等物」 2,426億円
  • 「営業債権及びその他の債権」 3,113億円
  • 「その他の金融資産(非流動資産)」 261億円
  • 「有形固定資産」 3,768億円
  • 「のれん」 8,255億円
  • 「その他の無形資産」 4,001億円
  • 合計 24,423億円
資産

「現金・現金同等物」
「営業債権及びその他の債権」

  • コロナ影響や中国不動産市況の悪化に対応したCCCの見直し(取引条件の見直しなど)
  • 将来の債権回収リスクを踏まえた対応(中国売上債権に対する貸倒引当金の計上など)

「その他の金融資産(非流動資産)」

  • 政策保有株式について、保有継続の合理性を毎年検証(2022年度も一部株式を売却)

「有形固定資産」

  • 事業売却や構造改革を通じて資産効率の向上や収益性改善に取り組む(欧州自動車用・インド事業の譲渡、日本事業・船舶用事業の構造改革など)

「のれん」「その他の無形資産」

  • 「自律・分散型経営」でPMIリスクを最小化し、「良質なM&A」の積み上げによる減損リスクを低減
負債
  • 「営業債務及びその他の債務」 2,568億円
  • 「社債及び借入金」 7,221億円
  • 合計 12,870億円
負債

「社債及び借入金」
(有利子負債)

  • 負債調達を優先し、レバレッジ余力を維持(2023年末時点のネット・デット/EBITDAは、追加のM&Aがない前提で約2.9倍を予想)
  • 格付機関からの評価(R&I格付「A」を維持)
  • 円ベースの安定した資金調達(低金利・長期年限)
資本
  • 「資本金」 6,714億円
  • 「利益剰余金」 2,725億円
  • 合計 11,554億円
資本

「資本金」
「利益剰余金」

  • M&Aなどの成長投資に向けて財務基盤を強化(第三者割当増資による資本増強)
  • EPSが増加する前提に、資本調達も選択肢
  • M&Aにおいて、ROICがWACCを上回るなど、資本効率も考慮
  • 配当性向30%を維持

負債状況

財務レバレッジとしては、2022年末時点のネット・デット/EBITDAが3.4倍(一過性調整後)、2023年末では追加のM&Aがない前提で約2.9倍となる見通しです(詳細は「中期経営計画(2021ー2023年度)の進捗」参照)。
負債による資金調達は基本的に全て円ベースで実施しており、2022年末時点で平均年限は3.5年、平均金利は税引前で0.35%と、極めて安定的な負債構成となっています。今後も新たな機会確保に向けた十分な負債余力を維持するべく、最適な資本構成を志向するとともに、借入金融機関や格付機関などからの信頼や信用を獲得していきます。(格付推移の詳細は「格付・社債情報」参照)。

ネット・デッド/EBITDA推移
ネット・デッド/EBITDA推移
負債状況
負債状況

※1 アジア合弁事業100%化・インドネシア事業買収に伴う影響を含む


持続的な成長に向けたキャピタル・アロケーションの考え方

前中計(N-20:2018-2020年度)の営業キャッシュ・フローが約2,400億円であったのに対して、2021年に実施したアジア合弁事業100%化に伴い、利益の社外流出がなくなったことなどにより、現中計(2021-2023年度)のキャッシュ・フロー創出力は向上しています。現中計の3年間で、営業キャッシュ・フローで約3,000億円を稼ぐ一方、継続的な売上・利益成長に向けて連結売上3%程度を設備投資に振り向ける計画です。こうして残った1,700億円の約半分は配当性向30%を目安に配当として株主還元する一方、残りはタイミングによって負債の返済、または新たなM&Aに充当していく方針です。今後も、金融機関や格付機関、株式投資家のサポートや理解を得ながら、2024年以降の成長戦略に沿ったM&Aに積極的に取り組んでいきたい考えです。

キャピタル・アロケーションの考え方

キャピタル・アロケーションの考え方の図節

※ リースによる設備投資は含まず


財務ハイライト

※1 ROIC(IFRS):税引後営業利益÷(ネット・デット+資本合計)
※2 2021年4月1日付で1:5の株式分割を実施したため、2018年1月に行われたものと仮定し、算出
※3 ネット・デット:有利子負債(社債及び借入金(流動・非流動)+その他の金融負債(流動・非流動))-手元流動性(現金及び現金同等物+その他の金融資産(流動))



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