人材戦略
当社グループは、中国・アジアをはじめとする世界 45ヵ国・地域で事業を展開する日本発のグローバル 企業として、ステークホルダーへの責務を充足した上 で、人的資本の多様性と強みを生かしながら、MSVの 実現を目指しています。
MSV実現に向けた取り組み
MSVの実現に向けた人材戦略では、継続的な力強い成長を可能にする、優れた人材による多様で強固な組織を構築することが重要です。
人材は事業成長の原動力として、組織の中で重要な役割を果たします。優れた業績を上げているパートナー会社では、多様な人材で構成する強力なチームや優秀なリーダーがけん引するチームが成功を実現しています。重要なのは、個人ではなく、チームで目標を達成しようとすることです。
長期的に見ると、市場は必ず変化します。その変化に適応するだけでなく、その変化をチャンスと捉え、素早く活用できる人材が必要となります。目標を達成するためにリスクを取って失敗しても、その経験から学ぶことによって、変化を受け入れてチャンスをつかむことができます。MSVの実現には、心理的に安全で活気に満ちた企業文化を醸成することで従業員一人ひとりの挑戦を後押しすること、そして新たな価値提供やビジネスを実現する創造性を存分に発揮できるような、働きやすく、働きがいのある職場環境を整えることが重要です。
当社グループは、成長を維持できる組織を確立するため、人的資本に適切かつ必要な投資を行っています。技術系人材に向けても、革新的で生産性が高い技術開発のため、技術者のモチベーションを高める人事制度を構築するべく、長期的な視野で人的資本に投資していきます。
「人とコミュニティ」チームは、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」と「コミュニティとともに成長」の2つのマテリアリティを中心とした活動を展開しています。①女性幹部職の増加、②多様性の尊重、③コミュニティとの関係構築・活性化、を活動の柱に設定し、各国・地域で積極的な取り組みを進めています。
当社グループは、EPSの持続的成長の実現のため、従業員エンゲージメントの向上とそれによる採用コストの低減や生産性の向上を図っています。その上で、働きやすく、働きがいのある職場環境という、従業員に対する企業としての責務を果たしています。
研修時間や教育投資をKPIとして研修制度を拡充することや、女性幹部職比率をKPIとして、NIPSEAグループでは2025年までに35%、日本グループでは2025年までに10%などと設定しながら、さまざまな具体策を推進することは、強いチームを構築する上で重要な取り組みです。
こうした取り組みは、KPIの達成だけが目的ではなく、多様な考え方を受け入れる、変革に意欲的な組織であるという当社グループに対する社会の認識を高める意味もあります。年齢や性別、国籍、民族、宗教などを問わずに集結した優秀な人材がシナジー効果を生み出し、当社グループの変革のさらなる原動力になると確信しています。重要なのは、優秀な人材がより大きな役割を果たし、付加価値を生み出すことができる環境を整えることです。このような環境は業務効率を高め、変革をもたらすとともに、売上収益や当期利益に好影響を与え、最終的にはMSVの実現に貢献すると考えています。
人的資本に関する指標(2022年度)
NIPSEAグループ | DuluxGroup | Dunn-Edwards | 日本グループ | |
---|---|---|---|---|
女性従業員比率 | 25.0% | 32.7% | 30.0% | 22.5% |
女性幹部職比率 | 25.2% | 31.5% | 34.5% | 5.4% |
従業員満足度 | 75% | 80%( 2021年度) | — | 81% |
MSV実現に不可欠な人材開発
当社グループの持続的な成長のためには、優秀な人材を確保するだけでなく、働きやすく、働きがいのある職場環境と企業文化を整備し、一人ひとりの従業員が個性と能力を最大限に発揮できるように後押しすることが不可欠です。
当社グループは従業員の能力開発に重点を置いており、業績に応じて報酬を支給し、キャリア形成の機会を提供することで、優秀な人材の確保に取り組んでいます。
人的資本への投資として、各パートナー会社が直面する課題に応じて独自に開発した研修体制の拡充を図り、人材の質を高めています。
研修プログラムの拡充は、従業員のスキルアップという直接的な効果に加え、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上、新卒・中途採用における競争優位性の向上、退職率の低下といった効果も期待できるため、人材ポートフォリオを強化する上で重要な取り組みと考えています。
DuluxGroup
DuluxGroupは、向上心と高い技能を持ち、多様性に富んだ人材こそが継続的な成功の鍵と認識しています。DuluxGroupには、各部署の責任者が、関連する事業や地域、役割に特化した学習プログラムを活用しながら、継続的に部下の能力を向上させるという人材開発の文化があります。
DuluxGroup(太平洋)では、リーダーシップや基礎から専門的な分野までを網羅するスキル、製品に関する知識の習得を目的とする包括的な研修制度を導入しています。実施形態としては、社内プログラムや外部プログラム、オンラインプログラムのほか、ライブストリームやポッドキャストを利用した研修などがあります。3日間にわたる「ラーニング・フェスティバル」を毎年開催し、福利厚生や将来のスキル、自社事業に関する深い洞察力など、幅広い課題に関する学習を全従業員に提供しています。「自分の成長は自分で決める(Own your Growth)」、あらゆる学習機会を利用する、ことを従業員に奨励しています。
CromologyとJUBについても、新入社員の研修や法令・社内規定で義務付けられている研修、専門能力研修、リーダーシップ能力研修など、従業員のビジネス能力や専門的なスキルを支援する学習プログラムを実施しています。
NIPSEAグループ
NIPSEAグループは、組織全体の成長と成功には研修と能力開発が重要であると認識しています。従業員の総合的な能力開発を確実にするため、個人のニーズに合わせた学習・能力開発計画を国・地域ごとに策定しています。研修のニーズを分析する「トレーニング・ニーズ・アナリシス(TrainingNeeds Analysis)」を毎年実施し、職務レベルごとに必要な能力の向上に焦点を絞りながら、効果的な学習プログラムを策定しています。
従業員の学習能力のさらなる向上に向けては、2021年度から学習管理システム「ラーニング・マネジメント・システム(Learning ManagementSystem)」を順次導入しています。同システムは多言語に対応しており、各国・地域でそれぞれのニーズに合わせた学習プログラムを策定することができます。
NIPSEAグループの学習プログラムには、リーダーシップ能力「リーダーシップ・コンピテンシーズ(LeadershipCompetencies)」(AGILE)、安全衛生・環境、情報技術、身体的・精神的健康に関する研修や基礎研修などがあります。
2022年度は延べ162万6,370時間、従業員研修を実施しました。
Dunn-Edwards
Dunn-Edwardsの研修は、現在の職務遂行に必要なスキルや知識を提供するだけでなく、将来を見据えた専門能力の開発に役立つプログラムを開発・実施することを目指しています。テクノロジー(学習管理システム、対話型プログラムなど)と従来の研修手法(マイクロラーニング、実践研修など)を併用し、進化を続ける職場環境においてキャリア形成を成功に導く多種多様なツールやリソースを提供しています。
社内研修プログラムは、部署ごとに作成した新入社員オリエンテーションに加えて、営業や製品性能、小売・事業管理、労働法、ハラスメント防止、リスク管理、安全、有害物質(HAZMAT)、ダイバーシティ&インクルージョンなどに関する職種別のプログラムを提供しています。
また、全従業員(正規従業員、非正規従業員)が利用できる「学費補助プログラム」も提供しています。認定教育機関での学位取得だけでなく、専門資格プログラムや職業訓練プログラム、教育セミナーも対象になっています。
日本グループ
日本グループでは、全従業員を対象として期待する役割やキャリアステージに応じた研修(新卒・中途採用者向けオリエンテーション研修、フォローアップ研修、新任幹部職研修、年次研修など)を実施しています。2022年度には、一部チームのリーダーを対象としたリーダーシップ研修を新たに開始したほか、コミュニケーション・プログラム(1on1、フィードバック、コーチング)を実施しました。また、海外のパートナー会社や取引先とのやり取りが多い従業員に対し、選抜型の英語研修も実施しています。
2022年度は延べ2万8,000時間の従業員研修を実施しました。
従業員満足度の向上により期待できる効果
従業員エンゲージメントの向上は、優秀な人材が継続的に最大限の力を発揮できる環境の整備につながります。「アセット・アセンブラー」モデルのもと、当社グループへ新たに加わったパートナー会社の従業員満足度を定期的に調査・モニタリングしています。
各パートナー会社の調査結果は、同じ地域の同業他社平均などの指標や過去のデータを用いて比較・分析し、従業員満足度を向上させるために必要な措置の検討に活用しています。
例えば、NIPSEAグループのエンゲージメント・スコアは2022年度に75%に達し、2019年度と比べて5ポイント上昇したほか、APAC(アジア太平洋地域)平均を5ポイント上回りました。
DuluxGroupのエンゲージメント・スコアは2021年度に80%に達し、当社グループに入る前の72%を8ポイント上回りました。DuluxGroupは、事業分野ごとのパルスサーベイや退職する従業員との面談などのさまざまな手法を通じて、従業員エンゲージメントの評価を実施しています。従業員エンゲージメントを推進する上で鍵となるのはリーダーです。各部署のリーダーは、定期的な意見の聞き取りや部下との能力開発に関する面談を通じて、チームのエンゲージメントを見直し、従業員エンゲージメントの向上に努めています。
Dunn-Edwardsでは、従業員満足度調査に代えて、退職者へのインタビュー調査を実施しています。同調査で得られた分析データから、入社後の2年間が会社とのつながりを築く上で最も重要なこと、従業員の定着には報酬・退職金制度(401(k))や幹部職のリーダーシップが重要であることが分かりました。こうした調査結果を踏まえ、他社よりも魅力的な制度を提供するために報酬・退職金制度の方針を定め、あらゆるステージでのキャリアアップ研修を展開・拡充しています。
日本グループでは、日本ペイント労働組合が定期的に実施する従業員エンゲージメント調査の結果を経営陣と共有しています。