グローバル
2026.03.10

継承と革新が生み出す ― 未来をひらく製品・技術 Vol.2 マツダ株式会社との半世紀を超える“共創の関係性”がかつてない「赤」をつくった

自動車用塗料開発者たちの挑戦の日々

#製品・事業 #自動車用塗料 #研究開発 #プロフェッショナル

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日本ペイントグループの独自技術は、顧客と想いを一つにすることで進化を遂げてきました。その一例がマツダ株式会社の自動車に命を与える「魂動(KODO)デザイン」の一端を担う、プレミアムカラー「ソウルレッドクリスタルメタリック」の開発です。企業の垣根を越えた共創活動により自動車塗装の従来の限界を打ち破り、市場に大きなインパクトを与えました。開発の背景には、「誰も見たことのない赤を生み出したい」というシンプルかつ純粋な想いがありました。

マツダを象徴する印象的な「赤」は40色以上

日本を代表する自動車メーカーの一つ、マツダ株式会社(以下、「マツダ」)のシンボルカラーである「赤」を、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社(以下、「NPAC」)は約60年にわたって共に創りあげてきました。その歴史は、NPACがマツダ本社工場の敷地内に事業所を開いた1967年にまでさかのぼります。
現在までに生み出された「赤」は40色以上。昭和のマツダを代表する車種といえる1980年発売の「ファミリア(5代目)」に採用された「サンライズレッド」や、1989年発売のライトウェイトスポーツカー「ユーノスロードスター」の「クラシックレッド」などは、市場に大きなインパクトを与えたヒットカラーとして世に広く知られています。その後、1991年にはロータリーエンジンを搭載したスポーツカー「アンフィニRX-7(3代目)」の「ヴィンテージレッド」、続いて2003年には前後のドアが観音開きとなり、スポーティーなデザインが魅力の「RX-8」の「ベロシティレッドマイカ」と、両社は時代のトレンドに呼応した「赤」を次々に発表してきました。
これらの数ある「赤」の中でも、2012年の「ソウルレッドプレミアムメタリック」を経て、2017年に誕生した「ソウルレッドクリスタルメタリック」(以下、「46V」)は、今やマツダブランドの代名詞ともいえる塗色です。車両ボディの塗色といえばホワイトパールや黒が上位を占める中、特に人気を集めている色であり、欧州の自動車メーカーからも注目されているこの「46V」には、自動車塗装の従来の限界を打ち破る画期的な新技術が組み込まれています。

諦めたくない!…自動車塗装の“限界”に開発メンバーが挑む

自動車用塗料の世界には一つの大きな壁がありました。それはカラー開発におけるデザイン時点での色と、量産化後に塗装した色とのギャップです。デザイナーが考えた色を製品化するには、耐久性をクリアし、量産化に適した塗料として仕上げる必要があるのですが、これらの過程を経る中でイメージした色が完全に再現されないことは、受け入れざるを得ないのが実情だったのです。
しかし、当時のマツダとNPACの開発メンバーは、このような業界の固定概念を仕方がないとは決して思っていませんでした。「諦めずに解決策を模索し、理想とする色を再現することが使命」と、課題に意欲的に向き合っていた当時の心境を口々に振り返ります。
完成イメージを共有するためにマツダ側のデザイナーが示したのは、深紅の輝きを放つ宝石等。「この輝きをボディに再現しよう」という一言から、「46V」の共創プロジェクトは動き出しました。

赤い宝石の写真
会議をする担当者たちの写真
開発風景

理想の外観と機能性を両立するナノレベルの顔料分散技術

理想とする「赤」の実現を目指して、開発メンバーは複数層からなる塗料の開発に挑みました。まずは、反射・吸収層と透過層というシンプルな2層構成としつつ、ボディに近い第1ベースの反射・吸収層で陰影感を際立たせ、その上に重ねる第2ベースの透過層で透明感のある高彩度の赤を実現するという道筋を描きます。しかし、既存の顔料の組み合わせでは限界がありました。そこでメンバーは、これまでとは異なる方法を模索します。
透明感のある高彩度な赤をつくるには、顔料の粒子を小さくして、光の乱反射を抑える必要があります。例えば、インクなどに使われる染料は、液体の中に溶けているため、光の乱反射が少なく、色が鮮やか(高彩度)なのが特徴です。しかし、染料は屋外耐候性が低いため、自動車用の塗料のように長持ちさせる必要がある場合には適しません。一方、耐候性に優れる顔料を使う場合、顔料の粒子を非常に小さくし、ナノレベルに分散させる必要があります。ただし、ナノ分散にはいくつかの課題があります。例えば、粒子が小さくなると表面積が増え、顔料の安定性や耐候性が低下したり、粒子が破損したりして耐久性が落ちたり、分散に時間がかかって生産効率が悪くなる場合もあります。

「46V」塗膜構成図
顔料の粒子のサイズと光の乱反射イメージ
自動車の塗装を指さす担当者の写真

鮮やかな「赤」はお互いの信頼関係によってつくられた

そこで「46V」では、これらの課題を解決する新たな技術の開発に取り組みました。自動車用塗料では実績のないナノ分散装置の新規導入のほか、分散に使う材料や条件の最適化を行いました。顔料をより細かく均一に分散させて、優れた質感と発色を実現するこの装置を、まだ上市もされていない段階で導入するのは、極めて異例のこと。限られたスケジュールの中で、お客様のご要望に応える製品を提供するための思い切ったチャレンジでしたが、導入の結果、顔料の粒子をより小さくしながらも安定性や耐候性を保つ技術を確立することができました。それに加えて、製品の付加価値向上にも大きく貢献しています。
もちろん、塗料側の開発だけですべての課題が解決したわけではありません。マツダ側の工程でも、例えば外観の品質を保つために高輝度アルミフレークが平滑に並ぶよう、塗装に工夫が施されており、さらにいえば、金型設計やプレス加工の工程でも最適化された技術が新たに生み出されています。
深みある陰影感と濁りのない輝きを放つ「46V」の発色は、NPACが塗料開発、マツダが塗装設備工程の開発と役割を分断するのではなく、お互いにどのような課題があるのかを常に共有しながら進めてきた、“共創の関係性”により実現されたと言えるでしょう。

自動車を囲んで立つ担当者たちの写真

技術を継承しながら、未来への可能性を広げる

「46V」の共創プロジェクトは、マツダとNPACの「誰も見たことがない赤を生み出したい」というベクトルが一致したことからスタートしました。開発メンバーが意匠性や品質にこだわり抜いただけでなく、営業、生産、調達と、各部門が熱量高く取り組んだからこそ、つくり上げることができました。
彩度や透明性、陰影感の表現において、他の追随を許さない極上の「赤」は、今もなお市場にインパクトを与え続けています。そんな共創関係にある両社共通の課題は、次世代への技術継承です。本音で語り合える関係性をもとに、若い世代に技術とマインドを伝えるためにはどうすればいいかと、盛んに意見が交わされています。
グローバル展開を見据えると、それぞれの国と地域に合った最適な生産体制を構築することも課題といえるでしょう。海外の法制度や文化を考慮した上での体制強化が今以上に求められることは明白で、そのために乗り越えなければならない壁も既にいくつか見えています。未来への可能性を広げるために、両社の共創と挑戦はさらに加速していきます。

自動車用塗料に関するお問い合わせ先

  • 日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社

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