グローバルチーム リーダーメッセージ
環境&安全
グローバルチームを通じた気候変動対応の強化
当社グループにとって最も重要なサステナビリティの影響に対処することは、MSVを確実にするために極めて重要な最優先事項です。「環境&安全」の中で特定された優先的な影響分野は、気候変動、資源と汚染(特に廃棄物と水)、労働安全衛生です。
各パートナー企業グループ(PCG:当社グループの地域または事業グループごとの会社群)は2021年、これらの影響分野において、目標や優先事項へ野心的な対応を進めてきました。本報告書では、これらの影響に関する連結ベースの指標を新たに公開しています。大部分の指標で前年度より改善が見られたことは喜ばしい一方、安全性のパフォーマンスは、重大なリスク管理を改善する必要性を痛感させるものでした。2021年のパフォーマンスを前年と比較すると、以下のような進展が見られます。
- ≪グローバル指標≫
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- 気候変動:温室効果ガス排出量(スコープ1、2)8%削減、エネルギー消費量14%削減
- 資源と環境:廃棄物発生量6%増、廃棄物回収量(リサイクル、再利用)4%増、取水量4%減
- 安全衛生管理:死亡事故3件(2020年はゼロ件)、休業災害10%削減
これらの結果の多くは心強いものであり、次年度のさらなる改善に向けた強力な基盤となるものの、NIPSEAグループで3名(社員1名、請負業者2名)の死亡事故が発生したことは、当社グループで働く全ての人々を守るために安全管理を効果的に行うことの重要性が高まっていることを示しています。ご遺族の皆様、職場の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
2022年は、各PCGのシニアリーダーで構成される新設のワーキンググループを通じて、より緊密に協力していきます。当社グループ全体にわたる最大のリスク・機会、改善に向けた優先事項を特定し、長期視点で確実な改善を推進するために、ベストプラクティスの共有、ベンチマーキング、学習、行動計画の実施を重点的に促進していきます。また、グループ全体のアプローチや基準が適切であるかどうかの判断に加えて、進捗状況の理解を深め、ステークホルダーに対する情報開示の改善に向けた追加のパフォーマンス指標の設定などにも対応していきます。
人とコミュニティ
人的資本の強みを生かし、MSVを追求
当社グループは、中国・アジアをはじめ世界30の国と地域で事業を展開する日本発のグローバル企業として、人的資本の多様性と強みを生かしたMSVへの貢献に加え、MSVが前提とするステークホルダーへの責務の充足を重視しています。
「人とコミュニティ」チームでは、「ダイバーシティ&インクルージョン」と「コミュニティとともに成長」の2つのマテリアリティを対象としており、活動の柱として①女性管理職の増加、②多様性の尊重、③地域社会との関係構築・活性化を設定して、各国・地域で積極的な取り組みを進めています。
こうした取り組みは、「女性管理職比率」などの指標に成果が表れることに加えて、当社グループが重要な指標の1つと捉えている「従業員満足度」にも反映されます。従業員満足度は、人材の採用・定着にかかる費用に影響する側面と、モチベーションの維持・向上などを通して生産性に影響する側面があることを踏まえて、各パートナー会社の状況に応じた自律的な対応を進めています。
イノベーション
日本ペイントコーポレートソリューションズ ホン・ジャン
サステナブル製品の開発推進とイノベーションの追求
日本ペイントグループのPurposeは、「サイエンス+イマジネーションの力で、わたしたちの世界を豊かに。」です。サイエンス+イマジネーションは、私たちの優れた技術力、知的財産・知的資産、組織力、技術的なネットワークをグループ全体で活用し、社会に貢献するイノベーションを生み出すことを意味しています。新型コロナウイルスが拡大し始めた2020年以降では、抗ウイルス技術への投資を大幅に拡充し、社会の課題を解決するための幅広い塗料製品を開発してきました。
私たちの技術的な使命は、塗料・周辺市場で世界をリードする技術集団を目指すとともに、日本と世界で成長を加速し、市場シェアを向上することです。
私たちのイノベーション戦略は、①適応可能な組織の構築、②実現力あるコアテクノロジーの開発、③周辺市場、新興市場への進出の3つの柱で構成されています。これは技術的な視点から、「株主価値最大化(MSV)」を実現するものです。私たちは顧客中心主義と社会的責任、社会との協調を重視する企業集団としての文化が今後の成功につながる鍵になると確信しています。
当社グループは「アセット・アセンブラー」モデルのもと、世界のパートナー会社間で技術協力、知的財産の共有が行われていることは注目に値します。パートナー会社の技術チームは、各市場や顧客ニーズに効果的に対応するため、高い自律性を維持しています。一方、パートナー会社間で技術の共有と能力の活用を進めるため、「グローバル・テクノロジー・カウンシル(GTC)」を設立し、技術交流に必要なプラットフォームと全ての塗料製品で運用できるプロジェクトを促進しています。
私たちは、知的財産の付加価値を向上するため、グローバルな技術提携の強化に適応できる体制を構築しました。建築用塗料の技術チームは、グローバルな技術コミュニティを形成し、共同の技術開発プロジェクトでベストプラクティスの共有と研究能力の有効活用を進めており、各国の顧客ニーズに対応する上で効果を上げてきました。他方、自動車業界の顧客は世界的な規模で事業を展開していることから、世界各地で自動車用塗料に携わる技術チームは2021年、日本ペイント・オートモーティブコーティングス(NPAC)のもとで一体化し、「One Team」に生まれ変わりました。
ガバナンス
日本ペイントコーポレートソリューションズ 井上 由理
適切なアジェンダ設定と迅速な対処で、リスクマネジメントをさらに強化
リスクの多くは現場に潜んでいます。したがって、最も効果的なリスクマネジメントを実践できるのは、純粋持株会社である当社ではなく、各地域・市場に精通した国内外のパートナー会社です。当社からの中央集権的なグループ内部統制を必要最小限にとどめる一方、“Integrity(誠実)ある経営集団”としてパートナー会社グループ(PCG:当社グループの地域または事業グループごとの会社群)に詳細な内部統制を委ねることが、当社グループのサステナブルな成長に最も貢献すると考えます。この認識のもと、当社は「アセット・アセンブラー」として各パートナー会社の自主性・自律性を尊重しつつ、グループのリスクをコントロールする取り組みを進めています。
当社は「アセット・アセンブラー」モデルに相応しい内部統制システムへ刷新するとともに、そのシステムの中に、新たに制定したグローバル行動規範や内部通報窓口、リスクマネジメントに関する方針を含めて、シンプルにグループのリスクを点検できる仕組みを構築しました。この内部統制システムを効果的に機能させるためには、当社と各パートナー会社の間で重要な情報が確実に共有される「相互信頼」と「シンプルなコミュニケーションルート」が大切であり、重大な不安や懸念が生じた場合には、日常のコミュニケーションチャネルを生かして即時・適切に対策がなされる体制としています。
2022年1月に特定した人的資本、原材料調達、ITなどのリスクへの対応は、地域ごとに実施した方がより効果的であると判断し、当社は各地域のマネジメントとともに個別・具体的に対策を行うこととしました。こうしたリスクマネジメント体制は、変化が著しく予測困難な現代社会において、新たなリスクへの臨機応変な対応を可能にする点で優れていると考えています。また、収益性の改善に向けて構造改革を進めている日本においては、データ分析を進めている監査部門との連携によるリスクマネジメント手法の高度化にも取り組んでおり、体制と手法の両面で深化・効率化を進めています。
今後はますます、ESGに係る環境、倫理的調達、人権などのグローバル共通のテーマがビジネス上のリスクになっていくと想定されます。このようなグローバルな社会的要請に係り各地域・事業単位では扱いにくい課題については、General Counselとしての「健全な警戒心」を持って、共同社長やグローバルチームとともに適切なアジェンダを設定し迅速に対処することで、当社グループのリスクマネジメントをさらに強化していきます。