当社グループは、経済成長の不確実性、産業界の激しい変化、環境規制の厳格化などの大きな課題に直面しています。しかし、こうした課題を解決する革新的な製品、特にカーボンニュートラル社会の実現に寄与し、SDGsに沿ったサステナブルな特長を持つ製品に大きな事業機会があると確信しています。当社グループは、環境に優しく、エネルギー効率が高く、経済的に実現可能な塗料製品の開発を目指し、イノベーションに取り組んでいます。
抗ウイルス塗料のイノベーション
当社グループは2020年9月、日本市場で「PROTECTONⓇ(プロテクトン)」ブランドを立ち上げました。ウイルスや細菌の脅威から人々の生活を「PROTECT」する機能に加え、その機能をあらゆるものの表面に「ON」することから、このブランド名に決定しました。
この時から、当社グループの塗料・表面処理技術の全てを結集し、工業用、 DIY用、家庭用などの各種製品を提供しています。2022年2月には、日本ペイント(NPTU)から「PROTECTONインテリアウォールVKコート」と「PROTECTONフロアVKクリヤー」、日本ペイント・オートモーティブコーティングス(NPAC)から「PROTECTONカーインテリアVKコート」がそれぞれ発売され、3つの新製品がPROTECTONシリーズに加わりました。「インテリアウォール」シリーズの内壁用に加えて、床用の水性クリヤー塗料「フロアVKクリヤー」は、ウイルスを含む飛沫などが床面に付着した際、抑制効果を発揮します。「カーインテリアVKコート」は、車内装部材への均一塗布と基材への固定化により、美しい外観と抗ウイルス機能の持続を実現します。
当社グループは東京大学とともに、感染リスク低減を実現する抗ウイルス・抗菌機能を備えたコーティング技術に関する共同研究を行っています。これは、2020年5月に締結された産学協創協定に含まれている共同研究テーマの1つです。
当社グループは、世界各地で共同してウイルス対策に取り組んでいます。
中国では2021年10月、「ウイルス除去、健康の盾」を意味する抗菌技術「ClearShield」を発売しました。この技術を用いた革新的なコーティング製品とフィルムは、中国の抗ウイルスコーティング規則に準拠した高い抗ウイルス性と耐変色性を備えています。 2021年1月には、塗膜表面に付着したウイルスと細菌を抑制し、ホルムアルデヒドを除去、揮発性有機化合物(VOC)を低減、低臭気設計の抗ウイルス・抗菌キッズペイントを発売しました。
マレーシアでは、銀イオン技術を用いて、塗膜表面に付着したウイルスや細菌を持続的に抑制し、ウイルスなどの感染拡大を抑える「ウイルスガード」を開発しました。シンガポールでも、銀と酸化第一銅の技術をそれぞれ用いたコーティング製品「ウイルスガード」と「ウイルスガードプラス」を発売しました。
建設業向けクロム(Cr)フリー・プライマー
近年、VOCや重金属を対象とした公害防止に関するさまざまな規制が施行され、建設業界では環境保護への関心がますます高まっています。当社グループは、クロム(Cr)を含まないコイルコーティング用プライマーを開発しました。この製品は現在、工業用途で重要な役割を果たしています。環境に優しいコーティングは、装飾や保護を目的とした、広い面積を持つ金属への塗布に活用されています。
米労働安全衛生局の調査で、六価クロムは使用者に重大な医学的リスクをもたらすことが分かりました。肺がんを誘発する可能性だけでなく、鼻や喉、肺の炎症の原因となり、長期間さらされると潰瘍や中隔穿孔を引き起こす恐れがあります。当社グループの新製品であるクロムフリーのコイルコーティング用プライマーは、使用者に対する医学的リスクを排除し、規制要件を満たすことができます。加えて、工業用油性プライマーに比べ、耐腐食性と機械的特性に優れています。
クロムフリー・プライマー製品は、世界最大のコイルコーティング市場である中国の顧客向けに発売し、クロムの使用を完全に廃止しました。
自動車内装用機能性加飾フィルム
自動車業界では、次世代自動車への移行が進むにつれ、自動車の役割が変化しています。例えば、運転席へのデジタルコックピットの導入や移動空間の快適さが求められています。自動車部品では、電動化や先進安全技術の導入により、一部の車種でフロントグリルが廃止され、センサーやカメラを内蔵したパネルに置き換えられています。同時に、環境への影響を低減するための対策強化が求められています。こうした市場の需要に応え、当社グループは2022年2月にコーティングされた機能性加飾フィルムを発売しました。このフィルム加飾では、塗装工程での空調制御や大型乾燥ラインが不要となるため、お客さまの二酸化炭素排出量削減(スコープ1、2)を効果的に支援します。
また、このフィルム技術は、自動車の外装だけでなく、自動車以外の用途での展開、応用も可能です。当社グループは塗料メーカーとして、革新的で有用なソリューションを提供し、社会的課題の解決に貢献していきます。