グローバル
2025.09.30

Real Voice:営業・技術・ユーザーが語る、船底防汚塗料「FASTAR」が実現したイノベーションの最前線

#製品・事業 #プロフェッショナル #株主・投資家情報(IR) #船舶用塗料

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Real Voice 営業・技術・ユーザーが語る、船底防汚塗料「FASTAR」が実現したイノベーションの最前線

環境規制強化への対応や燃費削減がグローバルに急務となる中、海運業界の現場に新たなイノベーションをもたらした「FASTAR」――その真価は、製品としての高い機能性にとどまらず、現場が抱える課題やニーズ、最先端の技術、そしてユーザーの実体験が融合することで生み出されたものです。

本企画では、営業、技術、ユーザーそれぞれの“Real Voice(生の声)”を通じて、プロフェッショナルたちの知見や想いのもと、FASTARがどのように現場の課題やニーズを捉え、いかに新たなスタンダードを生み出したのかを多角的に描き出します。日本ペイントマリンの持続可能な競争力と海運業界の新たなスタンダードを支えるイノベーションの最前線に迫ります。

大内 元気の写真

技術者の声 大内 元気 日本ペイントマリン
技術本部 研究開発部 開発グループ

Q1.FASTARが船舶用塗料業界にもたらした真の革新とは?

A1.FASTARの革新は、単なる性能の向上や既存技術の延長線上にとどまるものではありません。「親水疎水ナノドメイン構造」を新たに導入することで、従来の防汚塗料の限界を超える技術的ブレークスルーを実現し、船舶用塗料業界に新たなスタンダードを生み出しました。従来の防汚塗料は、塗膜の加水分解によって防汚剤を継続的に溶出させることで防汚性を発揮してきましたが、その溶出挙動の制御や効率には一定の課題がありました。FASTARはこれに対し、塗膜内部に親水性と疎水性の「ナノドメイン構造」を導入することで、防汚成分の保持や拡散をナノレベルで精密に制御し、防汚剤の継続的かつ効率的な溶出に成功しました。その結果、塗膜自体の分解や消耗速度を抑制しながら高い防汚性を維持できて、従来よりも少量の防汚剤で船舶の低燃費航行を長期にわたって実現しています。

こうした技術的な特性により、お客様は従来と同じ塗装設備で、従来と同等以上の塗装を容易に実施できるだけでなく、燃料油消費量の長期的な抑制による経済的メリットとCO2排出量削減を実現することができます。さらには、長年実績のある「HydroSmoothXT™ 」技術を組み合わせることで、船底の摩擦抵抗をさらに低減し、燃費削減効果を最大化するソリューションもご提供しています。

つまり、国際的なカーボンニュートラルへの潮流や厳格な環境規制が押し寄せる中、「環境への優しさ」「お客様の経済性」「塗装現場への適合性」の全てを追求して開発したのがFASTARとなります。10年かけてでも新技術を創り続ける日本ペイントマリンの技術力が業界の常識を刷新し、「今、選ばれるべき塗料」として自信を持ってFASTARをご提案しています。

従来品の防汚メカニズムの図解

Q2.顧客や現場の声はFASTARの誕生や進化をどう後押ししたのか?

A2.FASTARの真価は、過酷な自然環境にさらされるお客様の現場で生じる課題と向き合い、お客様や営業、技術サービスの担当者などの声を徹底的に反映したことにあります。

日本ペイントマリンの研究開発現場は、技術サービス部門や営業部門との物理的・心理的な距離が非常に近いのが特長で、お客様目線での厳しい改善要請や、現場の肌感覚に基づく解決のヒントが日常的に研究開発チームへ届きます。「お客様はもっと短い工期で仕上げたいと望んでいる」「天候に恵まれなくても万全の仕上げで塗装したい」「荒々しい接岸でも耐え抜く頑丈な塗膜を提供しよう」――営業や技術サービス部門の担当者から日々寄せられるこうした要望を、技術者一人ひとりが常に“自分ごと”として捉え、理解しようと努めています。

研究開発チームの技術者が現場に出向くケースも多くあります。お客様や塗装業者様の声を技術者自らが伺って、改良やフィールドテストを重ね、膨大な検証データで裏打ちされた成果を製品設計に反映させています。その結果、FASTARには現在4つの主力グレードを取り揃え、さまざまな運航条件に最適なご提案が可能となっています。また、時には技術者も営業担当者とともにお客様へのご提案の場に同席し、塗料の特長や技術へのご質問に直接お答えすることで、お客様からの信頼獲得に努めています。技術サービス部門ではお客様の現場に密着し、状況に応じた塗装方法のご提案や仕上がり状態の確認、アフターケアまで一貫した対応を行う仕組みを構築しています。こうした現場第一の姿勢と、部門同士が気軽に連携できる風通しの良い組織文化、日々の業務を通じ若手に技術を共有・継承しながら組織の高度化を目指す柔軟な開発体制があるからこそ、FASTARをはじめとする技術進化と顧客満足度の礎につながっていると感じています。

作業風景

Q3.日本ペイントマリンの技術は今後どこへ向かうのか?

A3.今だけでなく、10年先の海運業界と社会を見据えた課題を解決する――私たちはこうした信念を大切にしながら、船舶用塗料や防汚技術の開発に日々取り組んでいます。船舶用塗料は一度塗られれば、船体と塗膜にとって過酷な海洋環境に何年にもわたってさらされます。そのため、地球温暖化による海水温の上昇や新たな生物汚損・付着リスク、国際的な環境規制の強化など、“将来のまだ見ぬ課題”にもいち早く技術で応えていかなければなりません。

FASTARの開発では「ナノドメイン技術」で突破口を切り開きましたが、私たちはさらなるアイデアを構想しています。「ナノドメイン技術」は、これから先の多様な規制や気候変動シナリオに応用できる基盤技術であり、今後もさらなる革新へとつなげていきます。また、先端技術についても、将来の主力になる日を見据えて、研究開発を続けています。

当社は加水分解型の「錫フリー船底防汚塗料」を世界に先駆けて製品化し、技術革新と社会実装で船舶用塗料業界をリードし続けてきました。カーボンニュートラルや持続可能な社会に貢献するべく、環境性能や現場適合性を担保し、経済性を高い次元で実現する船舶用塗料や防汚技術を今後も追求し続けます。未来を見通す“健全な危機感”と技術者としての“飽くなき知的好奇心”の双方を持って、お客様や現場と密に連携しながら、マリンチーム一丸で船舶用塗料の新たなスタンダードを築いていきます。

谷口 智哉の写真

営業担当の声 谷口 智哉 日本ペイントマリン
営業本部 東日本営業部 東京営業所

Q1.海運業界の課題や顧客ニーズに営業としてどう応え、FASTARをどう提案しているのか?

A1.最近の海運業界では、環境対応と低燃費性への要求・要望が日増しに高まっています。船を運航するオペレーター側は燃料費への意識が高いため、船体の摩擦抵抗を抑え、運航コストを下げることが可能な低摩擦・低燃費性の塗料を求める傾向が顕著となります 。一方で、船を保有する船主側としては、資産としての船体価値の維持や船体の長寿命化、そしてトータルコストへの関心が高いのが特徴です。

FASTARは、こうしたオペレーター、船主それぞれが抱える多様なニーズに応える日本ペイントマリンの戦略製品です。低膜厚で高い防汚性を発揮し、塗装工数やドックでの滞在期間の短縮が可能であるという特長に加えて、環境負荷の低減や海生生物の付着に伴う外来種対策など、グローバルの喫緊の課題にも貢献できる優れた製品となっています。

実際の提案現場では、「従来製品よりも薄い膜厚でもしっかり性能を発揮できる」という新たな価値をどのようにお客様に納得していただくかが鍵となります。お客様によっては新たな技術革新ゆえの戸惑いや抵抗が少なくないため、技術部との連携によって技術的な説明を丁寧にしながら、まずは1隻に採用していただいています。そして、その後、採用実績や現場データを積み上げることで、「確かに効果がある」とお客様に体感していただき、徐々に全船へ採用いただいています。

作業風景

Q2.営業現場で直面する課題を、技術部などとの連携でどう乗り越えているのか?

A2.営業と技術部、技術サービス、マーケティング部などが文字通り「一枚岩」になって動いているのが日本ペイントマリンの強みです。営業だけでは伝えきれない技術的な説明や、現場における信頼構築には部門の垣根を越えたサポートが不可欠です。従来の常識を覆す新たな価値を提供するのがまさにFASTARの特長であることから、お客様に納得感を持っていただくには理論だけでなく、実際のデータや現場の声が重要になってきます。

例えば、1隻目の採用でFASTARの性能を確認いただいた後、技術サービスがドライドック時には目視で、就航中にはドローンや水中カメラを使って船底の状態をチェックするなどの現地調査を実施し、膜厚や船体の汚損の状況をまとめてお客様にフィードバックしています。また、マーケティング部が燃費やパフォーマンスの解析データを資料化するなど、お客様が求めるニーズに直結した提案や報告につなげています。

お客様は独自に塗料の性能解析をされるケースも多く、当社としても根拠を持ってしっかりと説明できる体制が重要です。営業自身が塗料や塗装仕様を提案する場面も多いですが、実船でのパフォーマンスの測定やトラブル時には技術メンバーの知見や現場対応にとても助けられています。こうした組織横断の風通しの良いチームワーク、組織文化があるからこそ、お客様の厳しい要望にも真摯に対応し、一歩踏み込んだ提案や対応ができています。その結果、「1隻採用して終わり」ではなく、次の受注やリピートにつながっていると感じます。

展示会風景

Q3.今後どのように海運業界や顧客に貢献していきたいか?

A3.FASTAR採用の初期こそ競合製品と比べた優位性を明確に示すことが難しい時期もありましたが、絶えず製品改良を重ねる中で「性能が安定した」「トータルコストが下がった」など、お客様から評価の声をいただくことが増えました。最初は1隻だけ採用されたお客様も、実際の性能やアフターサービスを評価いただき、最終的には全船をFASTARに切り替えていただいたケースもあります。

こうした実績がFASTARの知名度や信頼度の底上げに結び付いているほか、営業担当としてFASTAR採用を進める上での大きな自信につながっています。私個人としては今後、新造船分野や海外営業にも挑戦しながら、ジェネラリストとしてグローバルな海運業界の課題解決に貢献したいと考えています。環境対応や二酸化炭素削減といった社会的要請は今後ますます強まる見通しであるため、FASTARや次世代技術で「海運業界の新たなスタンダード」を作る営業の最前線を走っていきたい考えです。

NSユナイテッド海運株式会社の写真

ユーザーの声 NSユナイテッド海運株式会社 船舶管理グループ 保船チーム

Q1.国際的に環境規制が強化され、燃費削減などが厳しく問われる今、
海運会社から見た船底塗料に対する視点や期待とは何でしょうか?

A1.近年、国際的な環境規制の強化や燃費効率の向上、省エネルギー運航の重要性がいっそう高まる中、船底塗料の選定は、船舶運航コストの削減や環境負荷の低減の両面から、当社にとって極めて重要な課題です。燃費削減の方法には船体形状の改良やプロペラの最適化などのさまざまな選択肢がありますが、既存船に対する大規模な改造はコストや工期の面で難しい場合があります。一方、船底塗料の見直し・変更は、比較的短期間かつ低コストで実現可能であり、即効性のある対策として有効です。高性能な船底塗料を適切に選定することで、船体の汚損を抑え、摩擦抵抗を減らすことができて、継続的な燃費削減が期待できるため、当社としても実効性の高い対策として関心を寄せています。

Q2.数ある船底塗料の中で、実際にFASTAR導入に至った決め手は何でしょうか?

A2.船底塗料の選定に当たり、当社は施工後の性能維持やメンテナンスのしやすさ、コストパフォーマンスを重視していました。従来の製品と比較検討した結果、FASTARは独自の塗膜技術による高い防汚性や塗装工程の省力化、さらに当社の要件に合致したコストパフォーマンスなどが決め手となり、総合的な判断で採用を決定しました。

導入検討の過程では、日本ペイントマリンの営業担当者よりFASTARの特長やメリットについて丁寧な説明があり、価格面での優位性も具体的に提示されました。こうした営業担当者の提案力と協力姿勢も、最終的な採用決定の後押しとなりました。

船舶写真

Q3.FASTAR導入後の評価と、日本ペイントマリンに対する今後の期待とは何でしょうか?

A3.FASTAR導入後は、防汚効果を目視で確認できており、従来品と比較しても塗膜の状態が良好に保たれています。現在、日本ペイントマリンによるFASTAR導入前後の性能比較も実施していただいており、その検証結果にも注目しています。

また、日本ペイントマリンの営業・技術両面からのきめ細かなフォローアップや、データに基づく効果検証といったアフターサービスにも信頼を寄せています。今後は、さらに厳しくなる環境規制や多様化する運航ニーズに対し、よりユーザー目線に立った技術提案や、よりいっそう進化したサポート体制を築いていただけることを期待しています。

コラム:NSユナイテッド海運株式会社とは?
1950年創業の日本の海運会社(本社:東京都千代田区)として、外航貨物海上運送事業を中心に展開し、特に鉄鋼原料やエネルギー資源などのバルク貨物輸送分野において高い競争力を有しています。 安全管理グループと船舶管理グループが連携しながら、船舶の安全運航を支えるきめ細かな管理とサポート体制を構築しており、安全性と信頼性の確保に努めています。
また、環境保全にも積極的に取り組んでおり、最新の環境技術を導入するとともに、船舶の安全運航の徹底を通じて海難事故ゼロを目指しています。
今後も誠実で良質な海上輸送サービスを提供することで、社会の発展に貢献していきます。

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