- 研究開発
- 2020.09.27
膜厚可視化による長期防食技術
塗装膜厚を可視化するSI(Self-Indicating)機能により、適切な塗膜厚を確保し、長期の塗膜防食性能を発揮します。
膜厚可視化による長期防食技術とは
船舶の防食塗料として広く用いられるエポキシ塗料の塗膜寿命は、規定膜厚が確保されていること、均一な塗膜であることに大きく左右されますが、規定膜厚を均一に得るためには、塗装者の経験と技能が必要です。また、広大な面積であるため、膜厚不足の箇所が発生しやすく、腐食発生の起点となってしまいます。
SI(Self-Indicating)とは、規定膜厚に達しない塗膜面の下地を透けた状態に保持する機能です。点ではなく面での膜厚判定が可能であり、塗装中でも乾燥後でもその透けが確認できることが大きな特徴です。この特性により、塗装者は塗装中に規定膜厚に達したかを目視判定できるだけでなく、膜厚不足の箇所を目視で発見できるため、膜厚不足による錆の発生を確実に防止できます。
どのような技術か?
本技術のポイントは、自己識別(SI)技術に最も適する色を選択することにあります。色相の違いや隠ぺい性を調べた結果、バフ(淡い黄褐色)とブルーが、適切であることを見出しました。塗装膜厚に応じて様々な不透明度を持つ特殊な顔料を使用する事で自己識別(SI)を自由自在に制御、仕様膜厚の異なる様々な箇所へ適応できるようになりました。また、塗料成分の配合調整により塗料の粘性と硬化をコントロールし、ピンホール、クラック等の塗膜異常の発生を抑制し、より強靭で緻密な塗膜を得ることができました。目視による膜厚確保と強靭な塗膜形成により、国際的なバラストタンクの防食標準を満たし、多くの船舶を腐食から保護しています。
社会課題解決への貢献
金属を腐食から保護することは、世界の全ての分野に共通する課題です。建造中または就航中の海上輸送船舶で腐食に関連する損傷による損失額は、約500〜800億米ドルと世界のGDPの約3%に上るとされており、ある統計では、船の故障の90%は腐食によるものとされています。腐食を防ぐ最も効果的な方法の一つとして塗装があげられます。このSI機能により誰が塗装しても規定膜厚の確保が容易になり、塗膜品質の向上、建造工程の合理化に貢献します。就航後の防食効果が従来の塗装システムと比べ格段に向上します。日本ペイントマリンは確かな防食性を発揮するSI塗料の供給を通じ、船舶という社会基盤の保護に貢献します。