ガバナンスへの取り組み
取締役会議長メッセージ

取締役会議長 中村 昌義
執行を支えるリスク許容度の新たな地平を求めて
私たちが推進する「アセット・アセンブラー」モデルは、各パートナー会社との相互信頼に基づく「自律・分散型経営」をベースにMSV実現を目指すものであり、既存ビジネスのさらなる成長に加え、買収による将来の成長機会を求め、優れた経営陣によって牽引される優良なアセットを積み上げていくことを志向しています。
当社は、これまでDuluxGroup、Betek Boyaなどの買収、ウットラムグループとのアジア合弁事業の100%化、インドネシアの塗料ビジネスなどの買収によりアセットを積み上げてきました。加えて、2025年3月にはスペシャリティ・フォーミュレーターとして米国・欧州市場においてリーディングポジションにあるAOCを買収し、「Paint+」、「Paint++」を超えたビジネスドメイン拡張を決断しました。
このモデルによりMSVをさらに追求していくには、これからも継続的に執行が許容し得るリスクの範囲を広げ、水準を高めることが不可欠です。そのためには、グループ全体のリスクマネジメントの実効性を私たちが常に確認できていることが大前提であり、この前提を盤石にするために、グローバル行動規範(日本ペイントグループ グローバル行動規範)に基づく各パートナー会社における自律的な監査、これと並走する「Audit on Audit」モデルに基づくグループ監査体制の2つが鍵であり、それらの進化に注力しています。
加えて、許容リスクを見極める監督機能は、取締役会の独立性の維持と多様性の向上に求められます。実際、2020年度以降当社の成長ステージに呼応し取締役会構成の新陳代謝を行いつつも、常に独立社外取締役を過半数とし、取締役一人ひとりの確固たる独立性と多彩なバックボーンに裏付けられた多様性の確保に努めています。これらが奏功してこそ、買収事案における潜在的なリスクを、当社既存ビジネスと比較・類推しつつ、多様な経験と多角的な視点から客観的に精査・助言し、執行をエンカレッジすることが可能になるのです。
私たち取締役の一人ひとりが執行の取り得るべき適切なリスクのレベルを検討し続け、取締役会としてリスク許容度を高めることは、MSV実現に向けた良質なアセットの積み上げ、ひいては少数株主の利益に資するものであると確信しています。私たちは、執行と監督の緊密なコミュニケーションにより情報の乖離を限りなく小さくしつつ、常時進行する成長戦略議論を通じてこのような取り組みを深化させ、これからもより機動的で柔軟な意思決定に努めてまいります。
2025年6月30日
指名委員長メッセージ

指名委員長 原 壽
MSV実現に向けた最適な執行・監督体制の構築
当社は2025年3月にAOCを買収しました。これは、取締役会で議論してきた「アセット・アセンブラー」としての成長戦略の成果であり、執行のスピードはますます加速していきます。次の成長ステージでは、予期せぬリスクを含む多様な局面に迅速かつ柔軟に対応し、最適な候補者を指名することが、指名委員会の役割です。
2020年に指名委員会等設置会社へ移行して以来、当社は激変する環境下において、最適な執行・監督体制を常に検討し、ブラッシュアップを継続しています。この取り組みは、当社のミッションであるMSV実現に向けて、適切な執行や監督を行う仲間を見極めることを目的としており、その結果、新たに7名の取締役が選任され、9名の取締役が退任しました。これにより、各取締役の独立性を確保し、取締役会としての監督機能を維持・向上させています。
執行側では、共同社長を筆頭にPCGの主要経営陣のチームワークを確認し、最適な体制をモニタリングしています。後継者計画においては、「育成」よりも「発掘」に重きを置き、優秀な人材が自ら成長する環境を提供することに注力しています。そのため、画一的な基準による選抜や計画的な育成に依存せず、社内外の人的ネットワークを通じて優秀な人材の発掘に努めています。さらに、買収機会を通じて外部の経営人材の適性も検討し、必要な人材を確保する体制を整えています。
これらの活動を通じ、指名委員会は将来を見据え、これからもMSVの実現に向けた最適かつサステナブルな執行・監督体制の構築・維持に努めてまいります。
2025年6月30日
報酬委員長メッセージ

報酬委員長 リム・フィーホア
共同社長の適切かつ果敢なリスクテイクを後押しする評価・報酬決定
私たち報酬委員会は、共同社長の評価と報酬決定を審議の基軸としています。「共同社長のパフォーマンスのどのような側面を評価すべきか?」、「どのような報酬でそれを反映すべきか?」は、激変する当社を取り巻く環境、当社の成長戦略のステージに応じて刻々と変化していきます。私たちの評価・報酬決定が、共同社長に良い影響を与え、積極的な行動につながっているかを他社や市場比較を踏まえ常に確認し、その効果を見定めています。
当社は2025年3月にAOCを買収し、塗料周辺分野へのポートフォリオ拡充を決定しました。これは、共同社長が既存ビジネスのオーガニックな成長とインオーガニックな優良アセットの積み上げを、適切なリスクテイクを伴い推進してきた成果です。このような大きな一歩をさらに進めるには、よりいっそうの持続的なモチベーションの向上が求められます。これらを踏まえ、私たちは、単年度業績や市場環境によって短期的・機械的に騰落する評価に偏ることを避け、中長期的なM&A戦略の実行によって生じる新たなリスクに関する分析や当社のバリエーションへの影響を精査した上で、共同社長の戦略遂行のパフォーマンスを包括的に評価し、報酬を決定しました。また、指名委員会や監査委員会とも連携しながら主要経営陣とのコミュニケーションも積極的に行い、こうした総合的評価の実効性向上を図っています。
当社取締役会は、MSVの実現へ向けた中長期的な戦略議論に注力しています。その取り組みに並走し、私たち報酬委員会は、共同社長をはじめとする執行側の適切かつ果敢なリスクテイクを促すとともに、それを支える取締役会の健全な監督機能を向上させることを眼目としています。この追求こそが、株主の皆様との価値共有に資する私たち報酬委員会の責務です。今後も、執行と監督の両輪を適切にドライブする評価・報酬決定に努めてまいります。
2025年6月30日
監査委員長メッセージ

監査委員長 三橋 優隆
「Audit on Audit」体制の高度化
「アセット・アセンブラー」としてMSVを追求する当社グループにおいて、監査委員会は「Audit on Audit」の枠組みの中で内部統制システムが適切に運営され、有効に機能していることを確認することによって、執行によるリスクテイクをサポートする立場にあります。
2024年度の監査委員会では、M&A案件のプロセスやサイバーセキュリティリスクへの対応状況など、注視すべき領域を設定しました。モニタリングの過程では監査部と協働して情報を収集したほか、GAC(Group Audit Committee)の場も有効に活用して関係者への確認を行いました。また、買収先の「のれん」に関しては、執行サイドや会計監査人の双方と評価方法の合理性などについて丁寧にコミュニケーションを取り、減損リスクに対する適切な対応が行われていることを確認しました。
当社グループでは2025年3月にAOC買収を完了させ、今後「アセット・アセンブラー」としてのポートフォリオ多様化が本格化することが見込まれます。監査委員会には従前以上に経営目線での監査が求められる中、「Audit on Audit」による組織監査の実効性をさらに高め、執行をサポートしていく必要があり、その一環として2025年度から監査部の活動を強化します。具体的には、監査部が各PCGの内部監査部門などとの間で従来以上に緊密な連絡を取り合い、特に当社グループへの参加後月日の浅いパートナー会社における内部統制面の運営状況などに関して集中的にモニタリングを行います。
一方で、グループ内の内部監査関係者が集まり情報交換をするGACは、「Audit on Audit」を進める上で極めて有効な手段であると認識しており、環境に応じたトピックを採り上げるなど、引き続き充実を図っていきます。
2025年6月30日