- グローバル
- 2026.11.04
開発ストーリー:地域の課題解決に貢献する“ご当地塗料”の開発秘話 ― 東北編 積雪・凍結から家を守る。耐久性と高外観を追求した屋根用塗料
冬の寒さがひときわ厳しい東北地方。この地域の住宅ではトタン屋根が多く使われています。雪が滑りやすく、積雪に耐えられる特性が必要なためで、地域の気候や暮らしに深く根ざした特徴的な風景の一つです。積雪や凍結が多い場所では、トタン屋根に塗られる塗料にも大きな負荷がかかります。こうした課題や現場が直面する悩みに塗料メーカーとしてどう向き合ってきたのでしょうか。東北地方の美しい街並みを支える定番製品へと結実した“ご当地塗料”開発の足跡をたどります。
東北の寒冷気候から生まれた強い塗膜

東北の寒冷地の中でも特に青森や秋田、岩手、そして山形、福島の会津地方などでは、多くの住宅にトタン屋根が使われています。瓦屋根や化粧ストレート屋根は水分が内部に染み込むと、水が凍って膨張し、割れてしまうことがありますが、トタン屋根は金属製のため水が染み込みません。また、積雪により建物にかかる重量が増えるため、比較的軽量なトタン屋根が好まれる傾向にあります。
この地域特有の自然環境は、トタン屋根用塗料にとっても過酷なものです。冬になれば雪が積もり、日中には雪が溶け、夜には再び凍結します。その氷や雪が屋根から滑り落ちるとき、塗装面には大きな負荷がかかります。そのため、積雪に耐える強い塗膜が必要となります。また、トタン屋根の塗り替え市場では、高光沢でぽってりとした、いわゆる“肉もち感”のいい仕上がりが好まれます。高外観と厳しい環境にさらされるがゆえの機能性の両面をクリアすることがトタン屋根用塗料には求められます。
塗装現場での課題は作業性向上と寒暖差対策
一方、塗装現場においても課題がありました。塗装する際には屋根に上って作業をしますが、塗料が乾くのが遅いと、塗り重ねるために屋根に上った際に踏み跡が残ってしまいます。「塗膜のベタつきが消えず、いつまでも屋根に上れない」「もっと早く乾く塗料がほしい」という塗装現場からの声がありました。また、寒暖差の大きい東北地方では、「ブラッシングを避けたい」という声が多く聞かれます。ブラッシングとは塗料が乾き切る前に夜露で濡れたとき、結露水の影響で塗膜表面が荒れてしまい、つやがぼやけて白っぽくなってしまう現象です。これらの現場の困りごとを解決したい思いが、新たな塗料開発の原動力となりました。
速乾性と光沢感の二律背反を解消し、定番製品に

2000年代前半に販売していたトタン屋根用塗料「シリコンルーフ」は、他社品に比べて速乾性や光沢感、耐久性の面で苦戦を強いられていました。そこで施工現場からのニーズも受けて、東北支店が中心となり、マーケティングや開発部門と連携しながら新たな製品の開発に着手することになりました。開発において課題となったのは、素早く乾くことと光沢感を出すことの両立でした。つやを良くしようとすると乾燥が遅くなり、乾燥を急ぐと凹凸が目立ってきれいに仕上がらないという、相反する性能だったからです。
開発部門ではこれらの課題を解決するために、乾燥硬化性や耐久性に優れた樹脂を新たに開発し、肉もち感を出す手法や硬化性を制御する手法についても、実験室と現場との間でテストを繰り返しながら調整しました。こうして完成した「シリコンルーフⅡ」は、速乾性を向上させることで作業効率向上に貢献しています。さらに、塗膜の表面をなめらかに保つことで、光沢感を向上させると共に、トタン屋根が持つ雪を滑らせる効果を長持ちさせ、塗り替え頻度を低減させることにもつながっています。現在では求めやすい価格と扱いやすさから、東北のトタン屋根用塗料の定番として多くの住宅で採用されています。
劣化進行を抑えつつ、高平滑で美しい仕上がりを実現
「シリコンルーフⅡ」が普及する一方で、市場からはさらなる耐久性と美しさを求める声が寄せられるようになりました。そこで、外壁用として多くの支持を集めている塗料「パーフェクトトップSi」に採用されている劣化抑制技術を屋根用塗料にも取り入れることにしました。一般的な塗膜は酸素や水、紫外線にさらされるとラジカルと呼ばれる悪玉菌のような物質が発生し、樹脂を破壊することで塗膜の劣化が進行します。このラジカルの発生を抑え、かつ発生したラジカルを封じ込めることで、塗膜の劣化を抑制する技術を採用しました。
また、より美しい仕上がりを実現するために塗膜表面を平滑に近づけることにも一層注力しました。凹凸があると光が乱反射して、きれいな光沢が出にくくなってしまうためです。
開発担当者は夏場の酷暑を想定し、屋根の温度が80度の高温環境でも高外観を実現するための検証を繰り返しました。さらに、実際に冬を越させて塗膜が剥がれないかを確認する実際の現場でのテストも行うことで、市場の声を反映する製品をつくり込んでいきました。こうして完成したのが、ハイエンドモデルとなる「ファインパーフェクトルーフ」です。劣化を抑制する技術を採用し、光の乱反射を防ぐ高平滑性を付与することで、さらなる耐久性と光沢感を実現しました。
「つや」を生み出す鍵は ― 粘性制御と表面調整技術
つやは光が塗装面に当たって反射するときに生まれます。反射する光の角度が一定であればあるほど、つやが高くなります。塗膜の表面に凹凸があると光は乱反射してしまうため、平滑な状態にしなければなりません。そのために必要なのが、粘性制御と表面調整技術です。これにより、塗膜のレベリング性(均一に平らになる力)が向上します。「ファインパーフェクトルーフ」は、軽く伸びやすい塗料のため、作業性にも優れているという特徴があります。


地域の声を起点に改良を重ね、街を彩り続ける
現在、この2つの製品は明確な強みを持って現場で使い分けられています。乾燥の早さとコストパフォーマンスを重視する場合は「シリコンルーフⅡ」、高外観と耐久性を重視する場合は「ファインパーフェクトルーフ」というすみ分けで、お客様のニーズに合わせた提案が可能になりました。「塗料を売れば売るほど、街がきれいになる。」このような想いで開発された塗料は、東北をはじめとする寒冷地の家々を厳しい冬から守り続けています。地域の声に耳を傾け、改良を重ねてきた製品がこれからも東北の美しい街並みを彩っていきます。