若月共同社長メッセージ

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良質なアセットを持つ企業連邦として、
MSVで⼀致団結した“Integrityある経営集団”であることの強み

2021年4月に共同社長へ就任して以降、MSVの実現に向けた施策を果敢に実行できているポイントは3つあります。1つ目は、ウィー氏とのパートナーシップ、つまり、ウィー氏が持つ事業経験と私の資本市場の経験が互いに補完し合うことで、共同社長体制が効果的に機能し、スピード感のあるコーポレート・アクションを可能にしている点です。

2つ目は、取締役会議長の中村氏をはじめとする取締役メンバーとのコミュニケーションが密であることです。形式的に社内プロセスを踏むのではなく、実質的な議論を相当に高いレベルで交わしており、コミュニケーションの頻度や要点を絞った議論などが、迅速かつ高度な意思決定に結び付いています。経営の判断軸がMSVという共通言語で統一され、それが深いレベルで浸透していることがこれらを可能にしています。

そして、3つ目のポイントは、根本的に人間として「信頼」できる経営者の集団であることです。例えば、私と議長の中村氏は、同じ投資銀行出身者として、議論の詰め方や考え方から、軽重の付け方に至るまで思考に共通項が多く、執行の意思を尊重した上で、リスク判断を含めて壁打ちや議論に真正面から向き合ってくれます。こうした信頼できる取締役メンバーからの期待を受け止めながら、オープンで活発にコミュニケーションしているのが当社の特長です。まさに、私が経営者として大事にしている「Integrity」(誠実)が随所に現れており、“Integrityある経営集団”として一致団結しています。


迅速な経営判断がもたらした2つの大きな成果

「中期経営計画(2021-2023年度)」がスタートした2021年以降、そうした密なコミュニケーションを核にして成し遂げた成果を2つ挙げたいと思います。まず、2022年1月に実施した株式の海外売出しです。国内金融機関を中心とした伝統的で安定的な株主構造から、長期視点で当社の成長戦略に理解を示すグローバルな投資家層を新たに構築するという強い決意のもと、経営課題の1つとして捉えていた市場流動性の向上と潜在的な追加売却懸念に対して、当社としてプロアクティブに対処しました。当社の経営モデルである「アセット・アセンブラー」を対外的に初めて打ち出したのもこのタイミングであり、海外資本市場の優良な機関投資家をターゲットとして、当社独自の成長ストーリーを理解してもらいながら、当社に対してアクティブに評価してくれる投資家基盤を経営の意思としてグローバルに構築できたのは大きな成果でした。

2つ目は、欧州におけるCromology、JUB、NPTの買収です。共同社長同士の活発な議論もさることながら、買収のリード役であるDuluxGroupのパトリック・フーリハンCEO率いるチームや取締役メンバーとも要所を押さえた議論を積み重ねながら、スピード感を持って経営判断することができました。このように、MSVという共通言語とアクティブなコミュニケーションが、競争相手が複数いる中でも一連の買収を成功に導いた主因であり、今後のMSV実現にも大きく寄与すると私は考えています。


「中計」を通過点としたアスピレーショナルな視点こそが当社の経営スタイル

ここまでの中計の進捗を振り返ると、新型コロナウイルスの影響やサプライチェーンの問題に直面し、工業用市場は相応に苦戦した一方、建築用市場は根強い成長が見られました。こうした中、当社グループ全体としては原材料価格の高騰やインフレに見舞われながらも、不断のコスト抑制策や製品値上げの着実な実施による収益成長によって、各地域で市場シェアを維持・拡大しました。また、塗料周辺分野において、DuluxGroupの「Selleys」ブランドの伸長や、Vital Technicalの買収、ETICS(断熱材)に強みを持つJUBの買収などが寄与し、売上収益は想定以上の成果を出しています。オーガニック成長とM&Aによる積み上げが足元でしっかり実現できており、「アセット・アセンブラー」モデルの強さを改めて認識しています。

現中計で掲げる数値目標は、次期中計も見据えたマイルストーンの1つとして私は意識しているものの、中計達成そのものが目的ではありません。当社が目指すべき目的はあくまでMSVの実現であり、例えば、Cromologyの買収は中計のためやスケールメリットを追求したものではなく、株主価値に資するか否かの観点に立って、「健全な警戒心」を持ちながら判断しました。


上限なき成長をもたらす「アセット・アセンブラー」モデルの優位性

私は、当社の「アセット・アセンブラー」モデルというプラットフォームには大きく3つの優位性があると考えています。すなわち、①低ファンディングコストのメリットを十分に活用できる力、②持株会社の介入によらず、アセット会社のEPS寄与を維持・拡大する力、③当社の経営モデルに共感する世界中の優秀な経営クラスのタレントを惹き付ける力、です。

1点目の「ファンディングコストの低さ」は、M&Aにおいて極めて重要な要素です。低金利が継続する日本円をベースにすることで、金利が上昇した欧米企業に対し、その優位性は拡大しています。足元の低金利下における買収では負債調達を優先することで、通常EPSは増大しますが、負債にのみ依存すればいずれデットキャパシティの限界に直面します。それに対して、当社は株式による調達も視野に入れており、高いPER株式を使って相対的に低いPERの会社を買収すれば、全額株式を使ったとしても基本的にEPSは増大します。EPSの最大化は最適なレバレッジ水準の負債と株式を組み合わせることにより達成でき、これらの手法を繰り返せば、デットキャパシティの制約を受けず、上限なく継続的に買収を積み上げることが可能となります。対象としてはリスクの低い安定収益企業であり、そのような対象会社は相当数に上ります。

当社のファンディングコストの優位性は、低リスク・安定収益資産の集合体によるレバレッジ力と、MSVの前提条件である金融機関への責務の充足を両立させる経営力にあります。しかし、低ファンディング力は当社だけではありません。次の2点目、3点目と組み合わせることで、当社独自の優位性が生じます。

2点目の「EPS寄与の最大化を引き出す力」は、まず買収対象会社の魅力やリーダーシップの強さ、特にCEOの資質が高い会社に対する目利き力に現れます。加えて、当社は買収後も対象会社のブランドや歴史に対するリスペクトを失わず、優秀な人材のモチベーションを高く維持することで、本社が管理・干渉をせずにスケールメリットなどを提供することにより、パートナー会社がEPS寄与の拡大を続けられるのです。

そこには、現地子会社の自律的な判断を促す方が意思決定の遅滞を避け、競合に打ち勝つ迅速・適切な判断が可能という考え方がベースにあります。

自律性と結果責任の組み合わせを最適化することで、パートナー会社の潜在成長力を引き出し、相当数の優良な会社を積み上げることができる力こそが、当社の強みの1つです。

3点目は「経営クラスのタレントを惹き付ける力」です。当社グループのもと、MSVに共感し、自律性と結果責任を組み合わせた上で、さらなる成長が可能なプラットフォームは、多くの優秀な人材を惹き付ける力があり、今後のM&Aにおいても非常に有効です。当社グループ入りしたCEO自らがそのメリットを実体験として伝播することで、新しい買収でも同様の共感を生み出し、買収後の円滑なエンゲージメントをもたらします。ここに至って、当社の考え方は、世界中の数多くのトップ人材から共感を得ています。

私たちは、こうした強みに自負を持つ一方で、M&Aのようなリスクあるアクションに対して常に「健全な警戒心」を持ちながら、EPSの継続的な拡大を志向しています。①優良な会社を適切なバリュエーションと最適なファンディングで積み上げ続ける力、②買収後の会社の潜在力を開花させる力、③優秀な人材を惹き付け、連邦経営を拡大させる力、を備えた当社の「アセット・アセンブラー」モデルは世界でもユニークな存在であり、MSVという唯一のミッションと併せて投資家の皆様の期待に応えるモデルであると確信しています。

取締役 代表執行役共同社長 若月 雄一郎
PER 「良質なM&A」の実績を積み上げ、
将来の成⻑期待を⾼める

サステナビリティがMSV実現の前提であることを明確化

MSVの実現には、顧客や取引先、従業員、社会などへの責務を充足することが大前提になります。サステナビリティは、ステークホルダーに対する責務の充足の一環として取り組むものであり、MSVの前提条件の1つという位置付けです。この考え方は取締役会で繰り返し議論されており、当社の共通認識として、グループ全体で徹底しています。

一方、社会が企業に求めるサステナビリティの具体的な要求事項は常に変化しています。これらの変化はEPSやPERの両方に影響する内容も含まれており、常にアンテナを高く張る必要があると認識しています。例えば、取引先からの原材料の調達において児童労働などの問題に適切に対処しなければ、顧客が製品購入を控える、投資家が投資判断から除外するなど、売上の減少や株価の下落に直結しかねません。これらのリスクを回避するには、実際のサステナビリティ活動において、日本に位置する本社が中央集権的に指示するのではなく、「自律・分散型経営」のもと、各地域・市場のニーズを熟知する各パートナー会社とのエンゲージメントを高めることが最も効果的なアプローチになります。

こうした考え方を整理して新たに作成したのが、従来の「ESGステートメント」に代わる「サステナビリティ基本方針」です。サステナビリティを当社の事業活動と強く結び付けた上で、サステナビリティがMSV実現の大前提であることを明記しています。

上場企業である当社において、サステナビリティ自体を目的にすることはありません。一方、ステークホルダーが要求する水準や範囲は日々変化する中、当社はこうしたステークホルダーからの期待に応えた上で、MSVを追求してまいります。


顧客・取引先・社会の要請をビジネスチャンスに

CO2排出量(スコープ1,2)の削減に向けては、千篇一律な基準を世界共通で設けるのではなく、各地域・市場の実情に合わせた適切な取り組みを進めていきます。当社は大手化学メーカーと比較して排出量は少ないものの、代替エネルギー開発などの取り組みを着実に進め、排出量を削減していきます。全てのサプライチェーンにおけるCO2排出量(スコープ3)についても徐々に対応を開始しています。製品面では、塗装回数を減らす、早く乾燥させるなど、ビジネスにつながる機会が拡大しており、顧客ニーズの変化をイノベーションのチャンスと捉え、高付加価値な製品を現地需要に合わせて開発していきます。

サステナビリティにかかる責務の充足に向けては、2022年度に「調達」の新チームを発足・追加しました。既存チームとの多少の重複はあるものの、各チームで抱える課題も増加する中、新チームの設立がボトムアップで上がってきたことを契機としており、新チームを通じて人権問題を含む倫理的調達を巡る課題を「見える化」することを狙いとしています。当社グループの持続的な成長には取引先との健全な協力関係が不可欠であり、調達における当社グループの基本的な考え方を改めて開示するなど、持続可能な調達の確保と取引先との関係性の強化につなげていきます。


EPSの継続的拡大に対する期待・信頼を資本市場から引き出す

資本市場との有意義な対話は欠かすことができず、レバレッジを高めた中でも負債の返済が可能であることや、適切なリスクを取りながらも持続的なEPSの積み上げが可能であること、オーガニック・インオーガニックな成長を志向していることへの期待・信頼の醸成が重要です。「PERの最大化」に向けて、継続的なEPS向上への自信に裏打ちされた積極的なIR活動や最適な財務戦略、サステナビリティの推進を進めてまいります。当社グループは引き続きMSVの実現を図っていきますので、今後ともぜひご期待ください。

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