2022年12月期 第2四半期決算説明会 質疑応答要旨

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質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1下期の営業利益に含まれる一過性要因は、中国の貸倒引当金として約20億円を短信ベースで見込んでおり、上期に比べて大幅に減少する想定です。あまり楽観視はしていないものの、中国ではロックダウンの影響も徐々になくなるほか、第3四半期には非常に強い需要月である9月が含まれ、ロックダウン中に抑え込まれていた需要も見込まれることから、改善幅は比較的大きいと考えています。トルコにおける超インフレ会計の影響は一過性要因ではありません。

    営業利益改善へ貢献する要因の1つとして為替を想定しています。加えて、原材料価格が高止まりする中で製品値上げが浸透し、利益率が改善すると見込んでいます。これは特定の地域に限ったものではなく、全ての地域において見込むものです。日本も含めて精力的に値上げを進めてきており、相応の利益率の改善が進展する見通しです。なお、新規連結では、JUB社の約10億円がプラス要因となります。

質問者:JPモルガン証券株式会社 佐野智太郎氏

  • A1第2四半期で計上した130億円は監査法人と合意した金額であり、不動産ディベロッパーを中心とした顧客が対象です。第1四半期に発表した100億~150億円程度の見込み額に変更はないものの、中国においてロックダウンがさらに進む可能性や中国政府の政策面での懸念もある中で、150億円以上の引当金が発生しないとは断言しにくいのが現状です。為替の変動などで150億円を若干超える可能性はありますが、さらに100億~150億円を追加で積み増すことはありません。引当金を四半期ごとに追加計上すれば、投資家の皆さまも当社への安心感が得られないと考え、その点を踏まえたうえで、第2四半期で十分に計上した金額が130億円です。

  • A2上期のProject市場は、特にロックダウンの影響を強く受けたことに加えて、Projectの顧客は、政府系ディベロッパーから販売代理店まで幅広く存在するため、下期の市況回復を期待しています。ただし、Project市場自体は全体的に弱含んでいるのが現状であり、当社としてはシェアを確保しつつ、通期予想の収益を確保する方針です。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1製品値上げは第2四半期も十分に実施しましたが、原材料価格の高騰や中国のロックダウン影響を強く受けて減益となりました。下期は原材料価格の高止まりを見込む中で、値上げの浸透や追加値上げの実施による利益率改善を見込んでいます。

    また、第2四半期を底として、第3四半期は劇的に利益率が改善するかと言えば、地域ごとに需要の強弱もあるので断言はできませんが、アジア地域は従来第3四半期の需要が強い傾向であることから、不確定要素がなければ利益率は相応に改善可能と見込んでいます。第2四半期の利益率は、前年と比較しても当初想定通りに戻し切れていない実感はありますが、今回修正発表している営業利益1,050億円は達成可能と判断しており、グループ全体での目標値としています。

  • A2ビジネスモデルによって異なりますが、販売数量を拡大させながら、製品値上げを実施しているのが実態です。例えば、中国のDIYはプレミアム製品とエコノミー製品の2種類がありますが、プレミアム製品では数量も伸ばしながら製品値上げを実施しています。エコノミー製品については、販売数量を増やすことに注力しており、製品ミックスの影響で利益率の低下につながる可能性はありますが、プレミアム製品の利益率を犠牲にしているわけではありません。

質問者:ゴールドマンサックス証券株式会社 池田篤氏

  • A11点目のDIYの成長率については、説明資料P29にて通期予想を+15~20%とする中、第1四半期・第2四半期の成長率に対し、下期も概ね同程度の成長率を達成できると見込んでいます。第1四半期は旧正月による需要の落ち込みが想定よりも小さかった一方、第2四半期はロックダウンの影響を受けて期待したほどの数字ではありませんでした。しかし、ロックダウンの反動が第3四半期にあると見込んでおり、下期も+15~20%程度は達成できると想定しています。

    2点目のローン返済拒否などの影響については、DIYにおいて消費者心理などへの影響がないわけではないものの、不動産ディベロッパーと住宅購入者間における住居の引き渡しに関連する問題であると認識しています。中国政府は、不動産ディベロッパーが住居を引き渡さないのであれば、住宅購入者のローン返済を猶予することを提言する一方、住居の引き渡しが完了すればローンの返済を再開するよう指示が出るものと想定しています。もっとも、本件自体が事業に大きく影響するとは見込んでおらず、中国政府は住宅の完工を担保することで国民の納得感を得ることに焦点を当てていると認識しています。当社が現在新たに進めている案件は、代金引換による取引形式が多いため、不必要にリスクが高まるとは考えていません。結果としてProject市場は弱含む傾向にあるものの、当社としての打ち手はあると考えています。

    3点目のDIYにおける売上の数量・価格分析については、プレミアム製品はしっかりと値上げを進めているものの、プレミアムと比較して単価の低いエコノミー製品の数量が伸びていることから、製品ミックスの影響があると見込んでいます。ただし、エコノミー製品も含めて全体の数量・価格を引き上げて売上が増加すれば、営業レバレッジで固定費の吸収も可能になります。エコノミー製品の販売数量が増加することで、利益率が若干低下するかもしれませんが、利益の絶対額は伸ばしていく考えです。

  • A2中国全土で見ると、上海などの大都市は厳格なロックダウンとなりました。大都市はプレミアム製品における優良市場ではあるものの、売上全体に占める割合が50%を超える規模ではありません。ロックダウン解除に伴う需要の反動はあり得ますが、第2四半期の売上がそれ程減少しなかったことから、大きな反動にはならないと見込んでいます。むしろ、これまであまり注力してこなかったエコノミー製品に対して、ヒト・モノ・カネを投入することで収益を上げていきたいと考えています。

質問者:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 藤田知未氏

  • A1第2四半期は原材料のみならず販管費や物流費においてもインフレの影響が顕在化し、製品値上げが若干追い付いていなかった側面があります。ただし、製品値上げの状況は地域ごとにばらつきがあり、例えば4月に値上げを実施している地域もあれば、6月に追加値上げをしたDuluxGroup社もあるなど、混在しています。加えて、値上げの浸透度合いなどもまちまちであり、例えばDIYでは値上げ=即日適用となるケースもあります。

    つまり、第2四半期は販売数量の増加と価格転嫁がもう少し進捗すると見込んでいましたが、コスト圧力が想定以上に強く、売上は想定よりもあまり進捗しなかった実感です。ただし、想定と大きく異なったわけではありません。

    原材料の調達は地域ごとに異なっており、例えばナフサや石油関連の原材料は精製技術も非常に進歩しているほか、酸化チタンについても中国での需給がかなり緩んできたため、価格については下落までいかずとも、これ以上に上昇する可能性は少ないと見通しています。全体で見た場合、米ドル高の影響を受ける地域として話題に上がるのはトルコのみです。為替ヘッジが自然にできている部分もありますが、当社グループのうち米ドル高で苦慮している地域は少なく、利益面でも為替影響を除くとおおよそ年初の想定と合致することから、米ドル高が利益率の圧迫要因になっている認識はなく、影響もあまりないと見込んでいます。

  • A2昨年は前年対比で利益率の下落が続いてきましたが、今下期は前年対比で改善すると想定しており、改善の度合いが重要と考えています。当社は従来、原材料価格は第2四半期まで上昇し、第3四半期以降は下落こそしないものの高位安定すると想定していました。こうした想定の中で、第1四半期から第3四半期に加え、場合によっては第4四半期においても可能な限り値上げを実施する計画を進めています。今回、このような想定内の事項に加え、中国の引当金やトルコの超インフレ会計などの想定外の事項が発生しました。

質問者:CLSA 証券株式会社 張一帆氏

  • A1米国の汎用については、競合他社も含めて慎重な見方をしています。利上げは住宅購入の抑制となることに加え、賃貸住宅も相場が下落していないため、引っ越しもしにくい状況です。塗り替え需要は、新築購入や引っ越しのタイミングで発生しやすいため、足元の不動産市況下では、西海岸を中心に固定ファンを持つDunn-Edwards社も下期に影響を受けると想定しています。しかしながら、説明資料P29に記載の通り、米州汎用の通期見通しは前年比+5~10%成長と見込んでおり、上期が好調だった分、下期は若干の減速となるものの成長を維持する前提としており、塗料需要が20~30%減少するとは考えていません。

    豪州については、DuluxGroup社は新築向けの販売が非常に少なく、収益性の高い塗り替え向けが主力であり、大型の小売店舗やプロ向けの流通網において圧倒的なシェアを有しています。豪州では引っ越しのタイミングだけではなく、日常的に塗り替えが行われるため、金利上昇などの影響を受けて塗料需要が減少するとは考えていません。しかし、2020~2021年の2年間は、コロナ影響によって在宅時間が増えたことで塗り替え特需が発生しており、その期間と比較すると、反動減となる今期は販売数量が若干減少すると予測していますが、数量の減少分を製品値上げによって補うことで成長を継続していきます。

    欧州ではウクライナ情勢の影響などもあり、消費者心理の冷え込みが発生していますが、Cromology社はプロ向け直営店での販売が大部分であり、大型小売店ほどの大きな落ち込みはなく、現時点で競合他社のように大きな影響は受けていません。しかし、今後の見通しが明るいわけでは決してなく、現状の市場環境の中でいかにシェア向上できるかが重要となります。

    このように、地域によって影響度合いは異なっており、米州は若干の弱含み、豪州は安定、欧州は弱含みとそれぞれ見込んでいます。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A1大きく影響を与え得るものの1つが貸倒引当金だと考えています。6~7年前に中国でProjectセグメントを立ち上げ、大手不動産ディベロッパー上位30社、上位100社に注力しながら、様々なソリューションを提供することでシェアを向上させてきました。当時は、特定のディベロッパーに対して売上債権の回収を長期化する施策は、一定のリスクはありつつも、競合他社に打ち勝つための有効な手段でしたが、中国政府のさまざまな抑制策によって、準民間系を始めとした不動産ディベロッパーは厳しい局面に立たされています。

    こうした環境下、当社は2021年後半から、政府系ディベロッパーとの取引の増加や建築業者などディストリビューター案件に注力することで、債権回収リスクの分散を図っており、大手ディベロッパーの比率は徐々に低下しています。従来とは市場環境が異なるとの認識のもと、収益とリスクのバランスを図りながら事業を展開しています。

    なお、中国の新築物件においては、内装を塗装していないスケルトン住戸ではなく、内装が施された即入居可能な住戸の販売が増加しており、DIY需要の一部がProjectに流れています。しかし、当社DIYの価格転嫁力や強いブランド力を考えれば伸びしろはまだあると考え、2021年からDIYにより注力してきました。その結果、2019~2020年に1桁台前半程度だったのDIYの成長率は、2021年には前年比+35%と大きな成長を果たしました。

    DIYでは、売上債権の回収期間が短いし、基本的に年末には回収や清算が完了するため、リスクは非常に限定的です。当社がProjectに依存する体制であれば懸念はもっともですが、Nipsea中国はDIYの売上が大半であり、DIYは高い成長を維持しているため、リスクは高くないと考えています。

    地政学リスクについては、中国はデカップリングされている部分も多いですが、例えば全ての原材料が自給自足ではないため、一定のリスクは考えられます。また、仮に中国が孤立するような場合には、中国経済全体が混乱することで可処分所得が減少し、塗料需要が減少するリスクが想定されます。中国を巡る地政学リスクはあるかもしれませんが、当社事業上に影響を与えるリスクに大きなものはあまりないと考えています。

  • A2ゼロコロナ政策に伴う不動産ディベロッパーの資金繰り問題なども含めて、第2四半期に最悪期は脱したと考えていますが、依然として予断を許さない状況です。しかし、Projectは新築向けだけではなく、1990年代後半から大規模に供給されてきた住宅の大規模修繕需要が発生しており、これらの案件の獲得などを通じて、着実に事業成長へつなげていきます。

    債権管理については、大手不動産ディベロッパーの比率を減らす中、リスクがあるディベロッパーに対しては代金引換取引で対応する一方、今後も成長を見込む政府系ディベロッパーに対しては管理を徹底しながら取引を拡大していくことで、リスク管理と事業成長の両立を目指していきます。

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