独立社外取締役スモールミーティング 質疑応答要旨

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質問者:りそなアセットマネジメント株式会社 蔦谷智之氏

  • A1 まず、各パートナー会社の経営陣のサクセッションプランについては、「自律・分散型経営」に基づき、各パートナー会社グループ(PCG:地域・事業ごとのパートナー会社群)の中で議論されており、その内容は、共同社長を通じて取締役会へ報告され、取締役会からのフィードバックも行っています。
    当社はグループ内の主要経営陣をGKP(Global Key Persons)と呼んでおり、各PCGには数多くのGKP候補者がいます。取締役会はGKPの中から次世代の社長となり得る人物を常に模索していますが、各パートナー会社の事業を運営するための資質と、持株会社において経営を行うために求められる資質との間には、共通する部分も多くありますが、異なる部分もあります。次世代社長候補者については内部登用に加え、外部からの獲得も併せて検討しています。
    次に、2021年4月末に移行した共同社長体制については、非常に良好に機能していると評価しています。現在の共同社長両名はコミュニケーション能力が非常に高く、決断のスピードや、どちらが優先的に考え、どちらがそれを補完するか、といった点について常に2人の間ですり合わせがなされており、現在の当社を運営する上では現行の共同社長体制が最適だと判断しています。これは、NIPSEAグループのCEOとして複数の国・地域にまたがった事業運営への知見と経験を積んできたウィー共同社長が、日本事業の構造改革と収益性改善においても、若月共同社長とともに大いにその力を発揮していることからも見て取れます。
    共同社長の任期については、単純に年齢や在任期間の長短などではなく、共同社長本人やGKPのモチベーションをどれだけ高く維持できるかが重要であり、取締役会はその判断に基づく指名に責務を負っています。
    実際の指名プロセスについて2021年に共同社長体制へ移行した際を例に取ると、取締役会において問題意識を持ち始めたのはその1年以上前であり、決断が必要な時であると私が意識したのは約6ヵ月前でした。この約6ヵ月の間に徐々に候補者の検討や絞り込みを行いました。この際、過去に高いポテンシャルを持つ候補者たちにインタビューをしてきていた経緯もあり、非常にスピーディーに指名プロセスを実行できました。現在においても、共同社長体制を崩す必要は考えていません。共同社長がまだやり遂げていない仕事を完遂するために取締役会がいかに2人のモチベーションを上げていくかが一番の課題です。
    他方、取締役についても、各取締役がそれぞれの身の回りに適切な取締役候補者がいないか常にアンテナを張っています。当社は、指名プロセスにおいて、候補者リストを作り絞り込むという手法を採っておらず、私たちのネットワークを中心に候補者を選定し、現在の共同社長体制と対照しながら検討しています。現在はそのプロセスの半ばであるとお考えください。
    最後に、共同社長の評価方法については、定量的な評価に加えてGKPによる共同社長への評価も参考にしています。共同社長はGKPの各メンバーを評価していますが、取締役一人ひとりがGKPと直接コミュニケーションできる体制も構築しており、取締役会は共同社長とGKP双方の評価をヒアリングしています。
    また、私自身のサクセッションプランについては、翌年もこれまで以上に取締役会に貢献できると思う場合には指名委員会へ再任の希望を伝えますが、現在の社外取締役には筆頭社外取締役を務められる人物が複数いるため、あまり心配はしていません。

質問者:三井住友DSアセットマネジメント株式会社 穗坂悠氏

  • A1 統合報告書でもご紹介している通り、取締役会では、当社の方向性について議論するブレインストーミングやオフサイトミーティングを実施しています。「アセット・アセンブラー」モデルに関しては取締役会でも都度話題に上がりますが、じっくりと議論する場を3月と9月の年2回設定しています。そこでは、執行側がさまざまなケースを想定して作成した精緻なロードマップをもとに戦略を練っています。また、M&Aを通じたアセットの積み上げについて、DuluxGroupやNIPSEAのような規模の大きなアセットを今後も積み上げることが可能なのか、あるいはボルトオン買収(既存事業の補完・強化を目的とする買収)を進めるのかなどを繰り返し検討しています。
    「アセット・アセンブラー」モデルを可能とする「自律・分散型経営」は、根底に共同社長、GKP、取締役会の信頼関係がなければ効果を十分に発揮できません。そのため、「株主価値最大化(MSV)」や「アセット・アセンブラー」モデルを深く理解した人物をいかに当社内で育てる、あるいは外部から獲得できるかが重要となります。買収した会社の経営陣には既に素養のある人物もいますが、外部からの獲得についてはMSVを深く理解・追求できる人物は多くはなく、適任者を見つけ出す難しさはあります。
    昨今の当社の株価については、残念ながら満足はしておらず、執行からのさまざまな提案をもとに取締役会で議論していますが、今は踏ん張りどころと考えています。ROICやROE、さまざまなマルチプルの推移を見ると、2021年の「アジア合弁事業100%化並びにインドネシア事業の買収」を契機として、その後の買収などもあり、資本効率がやや低下しています。当社は資本効率の改善を進めていますが、コロナの影響やロシアによるウクライナ侵攻、中東紛争などによって株式市場全体がリスク回避に動くなど、センチメントが非常に厳しい状態です。当社事業は増収・増益を続け非常に健闘していますが、現在の世界的に混乱した状況では、中国リスクを契機として当社の株価がやや低下傾向に収斂していることは否めません。
    一方で、中国リスクや世界的な地政学リスクが多少なりとも緩和されれば、当社の現在の株価は投資するに十分足り得る低いバリューに留まっているとも見ています。

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1 先ほどご説明した、MSVを実現するための「アセット・アセンブラー」モデルに基づくロードマップには、買収のための資金調達方法としてデットファイナンスとエクイティファイナンスが明記されており、取締役会もこれを認識しています。取締役会では、どのような会社を買収できるか、買収時に新株発行による資金調達を実行した場合でもEPSにプラス貢献できるのか、といった点に議論を集中しています。ウットラムグループによる当社の完全子会社化や非上場化については現在議論しておらず、今後も議論することはありません。
    少数株主利益の保護については、ゴー取締役会長は、当社取締役であると同時に、当社の大株主という2つの立場にありますが、当社の取締役会においては9名の取締役の内の1名であり、それ以上でも以下でもありません。
    また、2018年のウットラムグループからの株主提案に基づいて選出された社外取締役のうち、原氏、諸星氏、私の3名が現在も社外取締役を務めていますが、日ごろの意見交換の内容などを踏まえると、私を含む3名は大株主の顔色を窺いながら取締役会で発言や判断をする人間ではありません。また、2018年に社外取締役候補として選出される際、ゴー氏に対して、「社外取締役として、あなたの意向とは異なる考えや判断をもとに取締役会で議論し、決議する可能性もあります」と念を押しています。2018年以降に就任した三橋氏、カービー氏、リム氏についても、大株主の顔色を窺うような人物ではないという点を重視して選出されており、独立性は確保されていると考えています。

質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1 これまで当社の株価は、高成長が見込まれる中国への期待の影響を受けてきましたが、昨今は、中国リスクに伴うネガティブな影響を受けていると考えています。共同社長から継続して説明している通り、NIPSEA中国のTUB事業は連結売上ベースでそれほど大きな割合を占めていません。しかし、昨今の経済状況を踏まえ、当社の株価は中国の不動産市況の変動に敏感に反応する場合があります。
    EPSの増加に対して株価が軟調のためPERが低下していますが、個々のパートナー会社がボルトオン買収を繰り返し、事業を継続して拡大させることで、結果として、当社連結業績に占めるNIPSEA中国事業の割合は低下する可能性があります。
    買収を決定する際の一番のポイントは、買収先の経営陣が私たちと信頼関係を構築するに十分な人材であるかを、取締役会が判断できるかです。私たち取締役会は、塗料・コーティング分野やその先の事業領域に十分な知見を備えており、買収先の経営陣を適正に評価し、一緒に仕事をして強固な信頼関係を構築することが可能と考えています。「アセット・アセンブラー」モデルでアセットを積み上げていく方針のもと、EPSを増加させてMSVに貢献するマインドを持った経営陣がいる企業を当社の仲間に加えていきたいと考えています。
    このように、着実にEPSを増加させていくことが、株価の上昇にもつながると判断しています。また、NIPSEA中国事業は高いブランド力を生かした施策を推進することにより、着実なシェア拡大を目指しています。特にTUCでは高い収益性を確保しており、TUBについてもインフラ関係や塗り替え需要に対応することで、より忍耐力のあるビジネスモデルに変革しつつあります。中国の景気変動の可能性はあるものの、安定的な収益とキャッシュ・フロー創出を十分に見込める想定です。
    一方で、株式市場の当社に対する評価が大きく変化するためのきっかけを作ることも求められます。取締役会は執行に対して、「アセット・アセンブラー」モデルはEPSの持続的成長を裏切らない、との信頼を市場から得る材料を探すよう依頼しています。

    ◆補足
    当社の戦略として中国依存度を下げるといった発言はしていません。また、中国事業は今後も継続的に成長させていく方針であり、中国事業を縮小させるような意図は全くありません。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A1 執行から提案されたM&Aの案件について、取締役会での討議を経て、提案通りに実行に至らなかった事例もあります。当社はM&A案件を検討する際、買収先の経営陣に「当社グループに加わって何をしたいのか?なぜそうしたいのか?」を問い掛けます。売却意向のある企業の経営者は事業運営上で何かしらの悩みを持ち、その悩みを解消してさらに事業を飛躍させたいという考えを持っていることが多くあります。当社は、買収先の経営陣が経営者としてどのような大志を抱いており、当社がその助けとなることで、いかに当社のMSVに貢献できるのかを重視しています。
    上記のようなプロセスを経て買収を決定していますが、結果としてCromology社やBetek Boya社は外部要因によって今の状況に直面しています。買収時の計画との差異は都度検証しています。例えば、2023年9月末にDuluxGroup社の経営陣が来日した際には、彼ら自身が買収時に提示した計画の達成度について、その差異や要因を明確に示し、今後の中期計画などを議論しました。
    減損リスクの管理については、買収価格を決定する際にどのような状況で減損損失が発生する可能性があるか細かく分析しています。さらに、減損損失の発生リスクについては毎四半期で検証を続けており、毎回非常に精緻に確認しています。トルコの超インフレ会計については、逐次現場から報告されており、監査委員会もリスクの度合いについて、取締役会に逐一報告しています。
    なお、取締役会として、買収の意思決定に当たり減損損失の懸念があるなら当然やめろと言います。一方、M&A戦略において将来的な減損リスクというのは常に内在しますので、そのメカニズムを取締役会も十分理解し、極力起きることがないように対処しています。

    ◆補足
    当社が減損リスクを恐れないといった表現のレポートが見られましたが、それは誤りであり、現在は修正されています。当社は最初から減損リスクがあるならM&Aは実施しませんし、常に健全な警戒心を抱きながらEPSの拡大を目指しています。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1 「リスクの低い」とは、収益性が低いということではなく、取締役会としてリスクが低いと判断できる経営陣・事業であり、株式市場にも取引を評価していただけると信じています。また、取締役それぞれが株式市場に対する見識を持っており、取締役会では案件の内容だけでなく、プレスリリースをはじめとした開示の内容やその方法についても、執行やインベスターリレーション部の意見を踏まえて議論しています。
    取締役会は、買収先候補を検討する段階から議論に加わり、その後の各プロセスにおいても都度議論しています。デューデリジェンスを実施する前の時点で、相手先より提示された見通しだけでなく、当社で作成した見通しに基づいて、EPSへプラス貢献できるかどうか細かく分析しています。同時に当社の資金調達能力、格付機関からの評価などを総合的に吟味しています。さらに、買収後の経営体制などについても、執行からの提案をもとに事業計画と照らし合わせて検討しています。
    各プロセスにおいて取締役会で議論しますが、最終的には「執行が買収先企業と信頼関係を築けるかどうか」が判断のポイントとなります。
    私の経験では、何がしかの無理をして買収した案件はあまり良い結果にならないと考えており、各プロセスにおける見極めが重要です。

質問者:JPモルガン証券株式会社 仲田育弘氏

  • A1 取締役会は、実際に開かれるボードルームでの議論だけにとどまらず、私個人の感覚としては毎日のように当社の取締役として活動しています。必要に応じて両共同社長や、大株主であり取締役の1人であるゴー氏を含め、他の取締役とも連絡を取り合っています。
    少数株主にとって問題になり得る局面や案件があれば、執行側が取締役会へ議題を上げる前に、取締役会議長に打診する必要があり、事前に執行側から概要を聞くことが取締役会議長としての責務となります。
    執行側からの打診の段階で、取締役会へ上げるかどうかを執行側と取締役会議長で判断します。判断が難しい場合は、必要とあれば各委員会へ相談し、検討の上、取締役会として議論するかを判断します。取締役構成の多様性維持に努めていることもあり、さまざまな意見が出てきます。塗料・コーティング業界に精通している者、日本よりもさらに成熟した資本市場に長く携わっていた者、PMIで苦労した者からの意見に加え、少数株主利益をある意味で蔑ろにした過去の案件についての見識のある者の意見や、会計上の判断に関する意見などを聴取し判断しています。
    取締役会議長として差し戻しを判断する場合もあります。執行側の時間と労力を無駄に費やすことを避けるのも、取締役会としての責務です。

  • A2 正直に申し上げて、それはあまり起きていません。ご質問の背景には、欧州自動車用事業・インド事業を当社からウットラムグループへ譲渡した後、インド事業をウットラムグループから買い戻した案件が1つの関心事項としてあると認識しています。
    本件譲渡は、短期的な再建にかかる追加投資・費用をウットラムグループが負うことで当社のリスク軽減を図っています。上場会社として当該事業を保有し続けるよりも、連結対象から外すことでより大胆な施策を講じることができます。当社がウットラムグループという大株主を抱えている最大の利点だと考えています。
    当然ながら、ウットラムグループと当社は完全に線引きされており、それぞれが独自に判断しています。取締役会としては案件の検討に当たって、必ずしも否定的ではなく、当社グループの事業に精通した非上場会社であるウットラムグループが大株主である関係を、少数株主の利益を確保した上で、利用できる可能性があるのであれば大いに利用しようという考えでした。
    しかし、こうした類の案件については、欧州自動車用事業・インド事業のほかは、過去にアジア合弁事業100%化とインドネシア事業の買収の事例はあるものの、件数としては限られています。なお、欧州自動車用事業に関しては買戻しの状況は整っていません。


※一部の質疑応答に個人のプライバシーに触れる内容が含まれていたため、本要旨からは割愛しています。

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