2025年12月期 第2四半期決算 質疑応答要旨

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質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1中国の市況については、競合他社の決算も把握していますが、当社の現地見立てでは市場全体がマイナス成長となりました。説明資料P7のヒートマップ上も水色であり、おおよそ「-5~-10%程度」と見込んでいます。NIPSEA中国のTUCは-11%減収ですが、こうした市場環境の中で競合他社に対して特に劣後している認識はありません。市況は引き続き厳しく、中国政府の施策がポジティブに影響しているという情報は現地からは聞こえてきていません。こうした状況は現地の競合他社も同様の認識ではないかと推測しています。

    与信管理の詳細は差し控えますが、基本的にはTUCの販売代理店に対して実施しており、一部顧客で売掛金の支払いが大きく長期化しているケースもあり、与信管理レベルを引き上げました。また、市場在庫が膨らんでいる地域についても在庫管理を厳格化しています。当社としては中国市場の先行きを厳しく見込んでいるため、健全な事業運営の観点から警戒心を持って施策を実施しており、一時的に売上に影響が出ています。

    市況そのものについても、住宅流通が依然として改善しておらず、販売数量は特級・1~2級都市、3~6級都市いずれもマイナス成長となりました。特級・1~2級都市の売上構成比が約8割と高いため、特に大都市のマイナス影響が大きく表れた結果となっています。 価格競争が各所で発生しているわけではないものの、2024年第3四半期に市場センチメントが悪い中で積極的なプロモーションやディスカウントを実施したにも関わらず市場に受け入れられなかった経験もあり、拡販や市場シェア向上をいたずらに追求するよりも「利益ある成長」に注力しています。その結果として、第2四半期のマージンについては比較的満足できる水準を確保することができたと考えています。

    TUCの通期業績予想を下方修正したものの、下期は前年同期において成長率が低かったこともあり、プラス成長を見込んでいます。ただし、売上成長率のみを追求するのではなく、利益確保、マージン改善を重視していく方針です。

  • A2TUCの販売代理店に対する売掛債権は極めて安全性が高く、今回の施策によって減速が起きているわけではありません。当社はTUCの慣習として年末に全ての債権を回収する運用をしており、個別にリスクが高まっているわけではありません。ただし、年末に向けた回収を前提とした場合、掛けの支払いサイトがやや長期化している地域が一部あり、特定地域に対して与信管理を厳格化しました。与信リスクが高まったというよりも、市況が決して良くない中で先回りして健全な運営を図っているとご理解ください。

    在庫についても、異常な水準に急増したわけではなく、当社としては流通在庫が溜まっている状態はそもそも健全ではないため、在庫水準が多い一部地域には卸売を控える対応を実施しました。これも限定的な地域で実施した施策でありますが、売上には一定の影響がありました。

質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏

  • A1AOCの売上構成比は、米国が約7割、欧州が約3割弱で、アジアの割合はまだ小規模である中、米国・欧州の両地域ともに需要が弱い状況です。米国では金利低下による市場の回復を期待していたものの、現状では金利は下がっておらず、住宅市場というよりは建設市場全般が厳しい状況です。市場全体の数量が減少しているため、競合他社と比較して市場シェアを失っているわけではありません。顧客層は幅広く、特定の用途や業種に偏っているわけではないため、市況全体の影響とご理解ください。

    マージンについては、総コストのうち販管費の割合が非常に低い一方で、原材料費が大部分を占めるのがAOCの特徴です。そのため、原材料費と売値の間のコントリビューション・マージンを管理することが肝となり、AOCは売値、調達の双方に対する管理を徹底しています。ご指摘の通り、通常は数量減少によって固定費負担がマージンに影響しかねない局面ではあるものの、非常に無駄のない経営を徹底していることから、固定費負担が必ずしも影響してこない強さをAOCは持っています。一部の原材料は価格が上昇しているものの、原材料費率が高い収益構造のため、数量減少の影響を比較的抑えられています。もちろん、運営コストの低減や生産性の向上にも日々努力しており、安全面でも過去数年で大きな改善が進んでいます。

    当社は米国のペントアップ需要(抑えられていた需要が一度に増加する現象)が中長期的には顕在化すると見通しており、金利低下やインフラ投資が進めば市場回復が期待できますが、短期的には厳しい状況が続く見込みです。第2四半期のAOCは前年対比で厳しかったものの、今年から新規連結のため、当社グループとしてはキャッシュも含めて大きなプラスであることは間違いありません。その上で、今後は米国での販売数量の回復や欧州でのマージン拡大、市場シェアの獲得などの成長機会があると見込んでいます。

  • A2その通りと考えています。AOCはトップラインが伸びてもオペレーティング・レバレッジが大きく効くわけではありませんが、コントリビューション・マージンが大きいことから、販売数量が回復すれば利益額も確実に増加する見込みです。当社の中期的な見立てとしては、4~5年の期間で見れば1桁台後半の利益成長は十分に達成可能と見通しています。短期的には厳しい状況が続くものの、中期的な成長への見立ては変わっていません。

質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1ヒートマップの通り、当社は引き続き市況が良いとは見込んでいない中、市場回復を前提とせず、いかに市場シェアや収益性を高めるかに注力しています。例えば、市況が悪くても製品価格を値上げできれば利益は上がりますし、販管費やプロモーション費用を抑制することで利益を確保していきます。もちろん、有意な投資は継続しますが、2024年第3四半期のように効果が薄い施策は慎重に実施していきます。今年の数量成長は厳しいものの、新規連結を含めて成長は可能と見通しており、その上で利益成長も十分に達成できると見込んでいます。

    上期と下期のマージンについては、上期は4ヵ月分とは言えAOCの貢献があるものの、PPAは含まれていないのに対して、下期においてはAOCのPPAや一過性コストの影響があります。そのため、上期のマージンはPPAを考慮すればもう少し低下する一方、下期はPPAを平準化すればマージンはもう少し上昇する見通しです。

    売上については、通期で大幅な減少は見込んでいませんが、数量面では市況の影響も受けてやや厳しい状況です。ただし、利益については説明資料P4~5に記載の通り、当初予想通りまたはそれ以上の水準を目指しており、利益は確保できる見込みです。 AOCの前年同期比-9%減収はあくまでは参考値であり、前年は連結対象外だったものが今年は全てプラスに上乗せされています。下期は数量ベースの底打ちを見込んでおり、市場がさらに縮小する前提は置いていません。結果として、10ヵ月のうち残り6ヵ月に市場が前年並みで推移すれば、-5%前後の着地は十分に可能と見込んでいます。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1NIPSEA中国に限らず、厳しい事業環境下では全体的にコスト管理を徹底しています。設備投資も含めて本当に必要かどうかを判断するための厳格な規律を持っています。中国においては、プロモーションやディスカウントの双方において、競争力やブランド価値を損なうようなコスト削減は避けつつ、あまり効果がない市場では無駄な支出を抑制しています。現場では投資意欲が強い一方、本部では慎重な姿勢を取るなど、もちろんせめぎ合いはありますが、最終的には両者のKPIである「利益ある成長」にたどり着きます。

    加えて、経営効率の改善を目的とした固定費の削減も中国に限らず全社的に継続して実施しています。こうした施策は当社グループのDNAとしてしっかり根付いており、厳しい事業環境下でこそより徹底できていると考えています。これらの取り組みが利益確保に対する当社の自信につながっています。

  • A2人員については継続的な見直しを常に行っており、余剰人員を抱えないよう調整しています。日本で以前実施した早期退職制度などのような大掛かりな施策ではありません。中国に限らず各地共通で人材の流動性が比較的高いこともあり、退職者が出てもすぐに補充するのではなく、外部からの採用が本当に必要かどうかを慎重に判断しています。
    特別なコストをかけて大規模に人員を削減し、その後利益を回復させるような施策は行っておらず、全て経常的な範囲で実施しているとお考えください。

質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏

  • A1AOCについては新たな発見や驚きは特にありません。今までの事業領域から一歩踏み出した買収ということもあり、買収前にAOCの強みを十分に調査した上で判断しており、買収後もその前提が崩れていないことはポジティブな要素です。買収判断を行った私やウィー・シューキムにとって新たな発見はありませんが、当社グループにおける買収判断はこれぐらいの粒度で行っていることの証左に他なりません。

    AOCは販売と原材料調達の比重が高く、原材料調達についてはもう少し取り組める余地があり得ることは以前よりご説明している通りです。これはAOCの調達のみならず、北米での調達、さらにはグループ全体の調達に貢献するものであり、1ポイント改善するだけでも大きな金額効果が期待できるため、現在グループ内で対話を深めています。

    また、現状の原材料市況は当社グループにとって有利な状況となっており、AOC単体の稼ぐ力を損なうことなく、グループ全体でもさまざまな施策を検討しています。やや抽象的な話に留まりますが、間違いなくポジティブな効果があると考えています。

質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏

  • A1現状、カスタム型と非カスタム型で大きな違いはありません。戦略としてはカスタム型の比率を高めていく方針ではあるものの、しっかり数量を販売していく点では非カスタム型あるいはコモディティ型の製品も必要となります。米国と欧州を比較すると、米国の方がカスタマイゼーションが進んでいる一方、欧州はカスタマイゼーションやビジネスシステムも含めて改善の余地があり、今後のアップサイドとしてさらなる成長を見込んでいます。

    つまり、付加価値に対してしっかりと対価を支払ってくれる米国に対して、欧州はややコスト意識が強く、付加価値に対する価格のプレミアム化が難しい市場となっています。全体としてはカスタム型を増やしたい認識は変わっていませんが、販売数量が伸び悩む中では厳しい側面もあります。

  • A2そう簡単な構図ではありませんが、大枠でご説明すると、カスタム型の製品は当社独自の配合情報を持っているため、競合他社が容易に代替できない一方、価格転嫁を一方的に進めると顧客離反のリスクもあります。顧客理解を十分に得ることを前提に価格転嫁を進めやすい点は、間違いなく当社の強みとなります。

質問者:東洋経済新報社 山田雄大氏

  • A1現時点での見立てとしては、下期に売上が目標を若干下回る可能性があると見込む一方、利益は必達として、厳しい市況下でもコストコントロールなどを徹底しながら気を緩めず取り組んでいます。

    先ほども申し上げた通り、前年同期との対比では為替の影響が大きく、業績予想も円ベースで算出しているため為替の影響を受けます。第2四半期では売上収益で388億円、営業利益で52億円程度の為替影響を受けています。前年の第2四半期と比較して現在はかなり円高で推移しており、米ドルは158円から143円へ、人民元は21.8円から19.9円へ変動し、相応に影響を受けました。当社事業は地産地消型が基本であり、輸出による増減というよりは、決算上為替換算による影響が生じます。下期は少しでも目標を上回るよう努力しますが、市況要因や為替要因は当社でコントロールできないため、慎重な見通しを持っています。私としては大げさな約束をしたくありませんので、楽観論は申し上げません。

    私自身、中国の市況については第1四半期あるいは前年も結構慎重な見通しを続けてきましたが、現状はその見立てが残念ながら当たっているため、下期にかけても厳しい状況になることを覚悟した上で事業運営に取り組んでいます。したがって、コントロールできない要素はあるものの、コントロールできる部分についてはしっかりコントロールしながら上振れを目指していきます。

質問者:CLSA証券株式会社 張一帆氏

  • A1日本は市況が芳しくない中で、この水準に満足しているわけではなく、さらなる努力が必要と考えています。ただし、日本市場は急激に変化するものではないため、その中で2桁台のマージンを確保できている点は成果の1つです。特に汎用、工業用などは事業環境が厳しく、今後については楽観視せず、厳しい見立てのもとで売上成長とコストコントロールにしっかり取り組んでいきます。

     NIPSEA中国以外については、主にBetek Boyaが大きく寄与しています。説明資料P19に記載の通り、Betek Boyaの実質ベースは超インフレ会計適用後で+33.8%の増収となっています。現地では約30%のインフレが続く中で販売数量も増加しました。NIPSEA中国以外の約1,000億円のうち359億円がBetek Boyaとなり、インドネシアは+2.7%の増収にとどまったように、アジア全体の成長としては厳しい状況です。

    第2四半期は、東南アジアを含めて米国関税の影響を受けました。これは関税による直接的な影響というよりも、現地の消費者センチメントの低下の影響もあり、インドネシアなどの市場はあまり良くなかった認識です。競合他社は一定の成果を出していますが、市況全体としては競合他社も厳しい状況だったと推察しています。そのため、厳しい事業環境下で堅調な結果を残したものの、下期はよりいっそう努力すべきと考えています。

質問者:コーティングメディア 近藤亮吉氏

  • A1日本事業全体の数字からすると船舶用の規模は決して大きくありません。説明資料P16に記載の通り、自動車用も厳しい市況の中で一定の成果を出しています。一方で、工業用や汎用はマイナスとなっていますので、船舶用のプラスは大きな貢献をしていますが、船舶用だけが牽引しているわけではありません。

  • A2船舶用が一番大きい事業であることは間違いないものの、その他の事業も含まれています。

  • A3船舶用は今後も好調に推移すると見込んでいます。市場が数量成長する中で、「FASTAR」をはじめとした当社製品の競争力が発揮されています。また、日本事業の船舶用にはグローバル事業も含まれており、アジア、中国、シンガポールを含めたドライドックでの補修需要も確実に取り込めています。こうした需要や競争力を背景に今後も成長を継続できると見込んでいます。

質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏

  • A1一言で申し上げれば、やはり利益成長となります。何度も申し上げている通り、資本はM&Aを中心に使っており、第2四半期の営業利益は前年同期に比べて+36.2%増加しています。為替が円高に振れてもこれだけ利益が増加していることこそ、「アセット・アセンブラー」モデルの強みとなります。また、キャッシュ創出力も高いため、レバレッジを効かせながら次のM&Aを早期に実行していく方針です。安定したキャッシュを生み出すことができる優秀な経営陣を持つ企業を継続的に買収していくことが、「アセット・アセンブラー」モデルの要諦となります。

    したがって、決して低成長とは考えておらず、利益は大きく成長し、マージンも上昇しています。当社はこれを資本を活用して実現しており、この点が配当や自社株買いを重視する企業との本質的な違いです。M&Aはリスクと捉えられがちですが、M&Aの実績を積み重ねることで安心感を持ってもらえるよう努めています。こうした考え方を当社の取締役会でも十分に議論した上で進めており、PERの向上に向けて投資家の皆様に納得いただけるよう取り組んでいます。

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