質問者A
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A1まず、TUC市場は2025年に当初期待していたほど成長せず、事業状況は非常に低迷しました。中国経済が低迷を続ける中、当社はTUB事業の経験を踏まえ、より慎重に事業を拡大することを目指しました。
先ほどご説明の通り、当社はTUC市場で「市場の主導と成長」に重点を置いています。成長の鍵は主要な大都市における「カラー&テクスチャー」の追求、3~6級都市での大幅な成長と市場シェアの拡大にあると考えています。 3~6級都市はこれまで当社の中核事業ではありませんでしたが、今では新たな重点事業となっています。3~6級都市に進出する中で、ダイナミクスが異なる市場について当社も研究を重ねています。
先ほどご説明した通り、当社は3~6級都市に進出するに当たり、いわゆる「最前線基地」と位置付ける工場を設置し、中国の遠隔地や小規模都市における事業運営方法を習得しました。それらを学ぶにつれて、市場のダイナミクスやパートナーの多様性を認識するとともに、適切なパートナーと不適切なパートナーの存在を確認できたため、弱いパートナーについては慎重に排除していく必要があります。
強力な「Nippon Paint」ブランドは多種多様なパートナーを引き付ける中、より強力なパートナーとの関係を強化し、弱いパートナーとの取引を減らす取り組みを進めています。
こうした取り組みはTUC事業の構造的な変化とは言えませんが、これまでそれほど強みや経験がなかった分野へ進出する方法となります。
当社は常に学び続けており、成長していく中で慎重に行動しています。当社はこの事業分野を継続的に推進し、低迷する市場の中でも成長を実現できると考えています。そして、追い風が吹いた時には、その風に乗って成長することができるでしょう。 -
A2最初の質問は、2026年にTUC事業でHSD成長を実現できると納得してもらえるような成長要因や背景についてでした。基準年は2025年ですが、市場は期待外れの状況です。
TUC市場は約5%縮小したと想定しています。TUC市場と一概に言っても実際には細部に課題を抱えており、TUC市場のさまざまなセグメントの中で、実際に大きく縮小したのは内壁用エマルション塗料でした。しかし、TUC市場全体が縮小する中で、テクスチャー・ペイント分野は内装用、外装用ともに成長を続けています。ただし、この分野は成長しつつあるものの、市場規模は大きくありません。
中国の内装用エマルション市場の縮小ペースは、今後鈍化する見通しです。当社は過去2年間にわたってこの事業分野の技術面、オペレーション面の双方で大幅な改善を進めてきました。この結果、内装用エマルション市場が縮小する中でも、当社はこの分野の競合他社から確実にシェアを奪い続けています。
これは、第一に、当社がこの分野で優位性を確保し、製品面やコスト構造面などでの優位性がシェアの拡大につながっていることを示しています。多くの競合他社は現在、TUC事業の成長分野である内装・外装用テクスチャー・ペイントに注力し始めています。この市場の規模は小さいものの、急速に成長しています。各社はこの分野で競争しており、当社の市場シェアはまだ比較的小さい水準に留まっていますが、高いブランド力と製品ラインアップによって、市場を上回る成長ができると考えています。ここ数年にわたり、当社はテクスチャー・ペイントに注力しており、2026年も引き続き貢献すると考えています。具体的には、①緩やかに縮小傾向にあるが、TUC市場の大半を占める内装用エマルション塗料市場において支配力を拡大し、シェアを拡大すること、②規模は小さいものの成長を続けるテクスチャー市場において、競合他社と全面的な競争状態にありながら、市場成長を上回り成長すること、これら2つの要因により、TUC事業は2026年にHSDの成長を達成する見込みです。
2番目の質問であるコアとなる塗り替え需要を測る指標は、当社が「リフレッシュ事業」と呼んでいる塗り替えサービスの利用状況です。リフレッシュ事業は今後も確実に成長する見通しです。なぜならば、世界の他の経済圏がそうである通り、新築物件の老朽化や、マンションや戸建ての売買時には、必ず塗り替え需要が生じるからです。
中国市場は今後、一部の先進国市場と同様に、既にこのような状態に到達、あるいは近くそのような状況に到達すると予想しています。塗り替え需要は拡大し、非常に安定した事業の一部になると考えます。当社だけが他社よりも賢く立ち回っているというわけではなく、競合他社も塗り替え・改修市場に注目し、この分野に多大な労力を注いでいます。当社はマーケット・リーダーであり、「カラー&テクスチャー戦略」はうまく機能していると考えています。2026年までにコミュニティ・ストアを約2,000ヵ所で展開し、新たなイノベーションを市場に投入することで、サービス水準の向上、サービスへの顧客アクセスの改善、市場と近い位置にあるコミュニティ・ストアの運営者との連携強化を実現できると考えています。この市場を先駆けたイノベーションにより、2026年にかけて当社が優位な立場を得られると考えています。
最後の質問であるCCMについては、既に2万台以上を市場に投入しており、当社のカラー戦略において重要な要素となっています。
この取り組みは、中国の発展と成熟に伴い、建築用塗料の選択において「色彩と質感(カラー&テクスチャー)」が重要な要素になるという認識のもとで当社が推進してきた戦略です。当社は顧客が店頭で何千もの色から自由に選べる環境を整えることが成功の鍵と考え、約3年前から市場でCCMネットワークを積極的に拡大し、カラー&テクスチャー分野で成長を遂げてきました。こうした指標からみて、これは有意義な投資と捉えていますが、投資家の皆様に納得してもらえるのは、2026年以降に実際のパフォーマンスとして成果が表れてきたときだと考えています。
次に、3~6級都市における「アセット・ライト戦略」についてご説明いたします。NIPSEA中国は長年にわたり、大都市での成功に注力してきた結果、優位な地位を確立しています。一方で、競合他社はこれまで意図的に大都市を避け、地方の小規模都市で事業を展開してきました。当社が3~6級都市の市場を軽視してきたのは事実ですが、約3年前から認識を改め、地方都市への進出を開始しました。その際、「その地域に工場を建設し、そこから供給する」という従来の方法を採用しましたが、このアプローチは有効ではあるものの、より多くの資本と時間を要するという課題に直面しました。実際にいわゆる最前線の工場を13拠点設置することで、ビジネスを学び、市場環境やダイナミクスを理解し始めたことで、自社工場の建設にとどまらない段階に進んでいます。現在では自社工場の建設は大幅に抑え、代わりに、既に現地に拠点を置く小規模な地域サプライヤーを活用する方向へと舵を切っています。
こうした機会が生まれたのは、複数の要因が重なった結果です。1つは、中国市場の成長速度が鈍化したため、かつて優位に立っていた多くの小規模企業が市場縮小に直面するようになったためです。2つ目は、この5~8年間でコストが増大してきたことです。コストが増加する環境で、特に中国では、小規模企業はやや規模の大きな企業に比べて大きな打撃を受けています。そのため、一部の企業は、最盛期は終焉したと結論付けて、他の企業と提携して成長する道を選びました。先ほどご説明した「ブランドとパートナーとの提携」が重要な意味合いを持ってきます。
2024年だけを見ても、当社は地域パートナーの数を2倍に増やすことができました。このように、パートナー数を2倍に増やしたことで、従来の戦略である「その地域に工場を建設し、工場を拠点に事業を拡張する」方法を採用するよりも、はるかに迅速に市場浸透を図ることが可能になりました。結果として、こうした市場環境のもとで、「アセット・ライト戦略」が進化しました。より低コストで市場に参入することができ、より迅速な市場浸透も可能になりました。
質問者B
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A1寡占状態であれば良いものの、実際はそうではありません。おそらく株式市場では誰もが1~2企業にばかり注目しているため、寡占状態の印象ができあがっているのだと思われます。
しかし、塗料市場参加者としての観点からは、さまざまな市場セグメント、さまざまな分野においてあらゆる競合他社を尊重する必要があります。各製品カテゴリーで異なる競合他社が存在しますが、ここでは競合他社について言及しません。若月共同社長が投資家の皆様と対話をする際、ある競合他社がよく話題に上るようですが、それはその競合他社の競争力が非常に高いからです。2010年頃はほぼ無名だった企業が、今や市場で地位を築いて、有数の中国ブランドに成長しました。この結果、当社とその競合の二強体制という印象があります。
当社はその企業に打ち勝つことに力を注いでいますが、他の企業の動向にも目を配っています。気が付かないうちに違う方向から競合他社が現れ、大きなダメージを受ける可能性も無視できないためです。当社は、過去にも多くの競合他社の動向を注視してきました。大手不動産ディベロッパーを巡って競い合うTUB分野では各社と熾烈な争いを繰り広げていましたが、小売分野では現在、大都市において3つのブランドが激しい競争を繰り広げています。
3~6級都市では、省ごとに競争環境が大きく異なります。従来のエマルション塗料ではなく、テクスチャー製品にも目を向けると、また別の競合他社が存在しています。過去には大都市において、カラーと内装用テクスチャーの分野においてそれぞれ別の企業と競合していましたが、現在は競合他社によって買収され、親会社の全国的な戦略において重要な役割を担っています。したがって、買収された企業の製品ラインアップが買収元の企業に吸収されるにつれ、競争環境は大きく変化すると考えます。例えば、小規模都市の外装用テクスチャー分野は当社が新たに参入した領域ですが、製品ラインアップと流通網に関して当社は強みを持っています。先にご説明した通り、小規模都市では地域の販売代理店とASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)を展開しており、これによって当社は急速に成長することが可能になります。
当社は、競争力を持つテクスチャー製品ラインアップ、優れた流通網、物流、コスト面での優位性を生かすことができれば、この市場のあらゆる地域において、現地のテクスチャー・サプライヤーに対して打ち勝つことができると確信しています。当社は、地域ごとに競合との関係性や競争環境が大きく異なります。競合他社は極めて限定した地域に特化しており、倒すべき相手は日本ペイントであるとみなしています。しかし、当社には数多くの競合他社が存在し、中国各地に広がる省ごとに、各社に対して異なる対応をしなければなりません。
寡占が価格決定力につながるかどうかについては、経済理論的には確かにその通りだと思いますが、当社は各製品のセグメントにおいて、いわゆる平均販売価格(ASP)を競争力のある水準に保ちつつ、プレミアム価格を構築するよう努めています。先ほどもご説明した通り、当社はプレミアム市場ブランドを持つ大手企業として、互いに価格競争で消耗するのではなく、業界全体が豊かになっていけるよう、当社自らが適切な行動模範を示し続ける責任があると考えています。
質問者C
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A1当社が取り組んでいるあらゆる施策を踏まえると、低迷する市場環境下でも成長を維持できると確信しています。だからこそ、やや踏み込んだ表現にはなりますが、TUC事業が2026年にHSDの成長を達成する見通しであると申し上げました。2025年に当社が実行しようとしている、あるいはすでに導入済みの施策を背景とした見通しであり、そこに当社の自信の源泉があります。
マージンについては、売上構成がどのように変化していくかが大きく影響するため、一概にお答えするのは容易ではありません。当社にとって、利益を生み出す成長は良い成長です。一部の市場では競争が一段と激しくなる可能性があり、当社が高いシェアを持つ地域では、現地の状況に応じてマージンを調整することもあり得ます。
質問に対する単純明快な回答はなく、マージンが全体的に増減するかどうかについても答えられませんが、当社が強みを持つ分野においては、成長している、あるいは浸透を図っている領域でマージンをしっかりと押し上げていきます。
マージンに対する見方についてはやや慎重かもしれませんが、全体として2025年を上回る利益を上げるべきと考えます。それが、全社員に示している基本方針です。 -
A2過去20年を振り返ると、日中両国が激しく対立しようとした局面が少なくとも3回はあったはずです。しかし、そのたびに事態は収束してきました。私は国際政治の専門家ではありませんが、理性が働き、日本が近いうちに中国向けに海産物を再び販売できるようになることを願っています。
当社は日中両国が現在の状況から抜け出し、緊張関係が緩和することを期待しています。こうした影響を2026年以降の見通しに織り込んでいるかどうかは別として、この問題について今後もしっかり注視していきます。
ただ当社は、日中関係の緊張を言い訳にするつもりはありません。当社のチームがコミットした成果を必ず達成させます。
質問者D
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A1先ほどご説明した通り、トルコのBetek Boyaを買収した際、Betek Boyaとトルコを、1962年にシンガポールを足場としてNIPSEAグループ全体が立ち上がったときの経験と類似していると見ています。このたとえに疑問を感じるのも無理はありません。1962年、つまり60年以上も前というのが想定しているタイムラインなのか、ということですから。もちろん、Betek Boyaとトルコを足がかりに北アフリカや中東、中央アジアに市場を拡大するのに、60年もかかることはないと期待しています。
当社にとってBetek Boyaとトルコは非常に魅力的な足がかりでしたが、まずBetek Boyaの経営陣にNIPSEAグループと日本ペイントグループについて理解してもらうため、あえてゆっくり展開していく方針を取りました。その結果、マレーシア+グループの一員として位置付ける形を取り、2019年以降の6年間を通じて、互いに学び合いました。その間、非常に有益で良好な関係が構築され、相互にメリットを享受することができました。
2024年は、互いを十分理解できたと判断し、Betek Boyaを中核とする独立したグループを編成するタイミングだと決断し、トルコグループにカザフスタンのAlinaを組み入れました。中央アジアの成長戦略の更なる進展を期待しています。Alinaはカザフスタンで高いシェアを保有するだけでなく、中央アジアの近隣4カ国(いわゆる「スタン諸国」)でも事業を展開しており、2つの側面で成長しています。まず中央アジアでの地理的な事業拡大、次にAlinaが強みを持つ従来のドライミックス分野にとどまらず、塗料・コーティング事業で製品ポートフォリオ拡大により成長を遂げました。中央アジア市場で注目すべき点は、トルコのブランド「Fawori」が各国で広く流通するようになったことです。当社はAlinaを成長の足がかりと位置付けており、同社の買収はこうした成長をある程度押し上げました。当社はこのモメンタムをさらに積み上げていきたい考えです。
中央アジアから北アフリカ、エジプトへの展開はやや状況が異なります。まず、2019年にBetek Boyaを買収した時点で、同社はエジプトに現地拠点として子会社を設置済みでしたが、注力対象ではありませんでした。そこで当社は工場の立て直し、チームの再編成を、Betek Boyaが置かれた市場を理解することに時間を費やす決断をしました。というのも、当時Betek Boyaはエジプト市場において、大手の競合他社や市場で一定の地位を確立していた他の企業に比べて非常に小さなプレーヤーに過ぎなかったからです。現在では、足場を固めつつあり、エジプトで成長が期待できる領域を把握しています。この2年間、エジプトでは通貨安、高金利、高インフレという環境に苦しんできましたが、その中にあっても、当社は確実にシェアを拡大しており、成長の軌道に乗り始める段階に来たと考えています。立ち上がりが遅かったことや経済状態などにより、エジプトでの成長はこれから始まろうとしています。エジプトが北アフリカ市場進出の拠点になることを期待しています。
ここまで北アフリカについて説明しながら、中東にはあえて言及しませんでした。中東の多くの国・地域が経済成長と自由化を進めており、この5年間で非常に魅力的な投資先として浮上してきました。
中東市場については、いくつかの当社のグループ会社が進出しておりますが、小規模な事業展開にとどまっています。より具体的な中東市場戦略についてお話できるようになる前に、もう少し時間をかけて市場をしっかり理解する必要があると考えています。