2025年12月期 第3四半期決算 質疑応答要旨

文字サイズ

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1全体感については、市場環境は正直良くありませんでした。マクロ環境としても米国を含めて金利が低下しつつあるものの、急激にV字回復する状況にはなっていません。当社としては各地域でマージンや市場シェアの維持に努めており、豪州では厳しい環境下でも販売数量とシェアをしっかり伸ばしています。市況は地域によってまちまちであり、豪州では金利低下に伴い市況の好転も一部見られるかも知れない状況ではあるものの、全体として浮かれていられるような市況ではない状況です。
    トルコでは第3四半期に大規模なキャンペーンを実施し、当社の強力な資本力を背景とした拡販政策が奏功しており、販売数量、価格ともに想定以上の成果を上げました。
    全般的に為替は円高傾向ではあるものの、それを加味しても非常に健闘した決算であったと考えています。
    NIPSEA中国については、第2四半期はTUC市場が前年同期比-5~-10%程度縮小する中、当社は与信管理や在庫管理を強化したことで-11%減収となりました。第3四半期も与信管理の影響は残ったものの、市況はほぼ前年並みで推移する中、プレミアム製品の販売が好調に推移しました。全体の価格はやや低下した一方で、製品ミックスの改善によりマージンはむしろ向上しました。
    当社としては今の事業環境下で無理な押し込みをせず、健全な事業運営を徹底した結果、利益をしっかり確保できたと考えています。

  • A2市況については、特級・1~2級都市も3~6級都市も決して良い状況ではありません。都市部で需要が回復してきたというよりも、当社のプロモーション施策が奏功し、一部値下げも含めて市場に受け入れられた結果、プレミアム製品の販売が好調となりました。プレミアム製品はマージンが高いため、利益の確保につながりました。
    競合他社とは戦っているエリアや規模が異なるため、当社が認識している市況感とは異なりますが、市場環境は依然として厳しいと感じています。そのような中で利益を確保しようと運営していることをご理解ください。

質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏

  • A1米国の市況も依然として良いとは言えず、AOCの販売数量は前年同期比で-MSD(Mid Single Digit)の減少となりました。ただし、マージンはしっかり確保できているという意味では、AOCは非常に強いレジリエンスと市場で差別化できているトッププレイヤーであると引き続き認識しています。
    当局は追加利下げについて慎重な姿勢を取っており、今後も断続的な利下げトレンドが明確にならない限りは、需要の喚起としては少し弱いのかも知れません。インフレへの戦いと経済の活性化という対立構図において後者が勝つような局面になれば、ペントアップ需要が顕在化する可能性は高いと考えています。
    2026年の詳細については、2月の通期業績予想を発表する中でお伝えしますが、長期的なトレンドとして米国のインフラ投資の必要性や経済の底堅さは変わっていないと変わらず認識しており、AOCは2024年10月に発表した「1桁台半ば~後半」の利益成長は実現可能と見込んでいます。ただし、そうした成長が2026年に入ってすぐに実現するかどうかは現時点で見通せておらず、今はコメントを差し控えたいと思います。
    AOCの製品はインフラや住宅などの幅広い用途があり、まだまだ開拓余地があると考えているほか、欧州においてもビジネスシステムの浸透による成長余地は十分にあると見込んでいます。

  • A2当社のシェアは上がっているというよりも、ほぼシェアを維持している認識です。市場全体が縮小する中で、当社も販売数量は減少していますが、シェアを失ってはいない理解です。無理な拡販によってシェアのみを追求し、マージンを損なうことは現状の環境下では適切ではないと判断しています。
    AOCの強みはカスタム製品の開発力にあり、顧客へ付加価値を提供するべく、開発段階から顧客のニーズに応える製品を作り出している点が特徴です。したがって、カスタム製品の比率が高く、汎用品とは異なる付加価値の高い製品を安定的に提供できていることが強みとなっています。
    AOCの売上構成比は米国が約7割、欧州が約3割ですが、マージンは米国の方が高い状況です。そうした中、欧州ではビジネスシステムの浸透やカスタム製品の展開、原材料の購買、新製品の開発などを多面的に取り組んでおり、CEO自身も今後改善の余地があると見込んでいます。具体的な時期は現時点で明言できませんが、今後進捗があれば改めてご説明する予定です。
    AOCのマージンは高い一方で、売上とEBITDAの比率は単価変動の影響を受けやすいため、マージンそのものを当社として注視しているわけではありません。今後は前年同期との比較なども含めてご説明していきます。

質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1私はこれまでも「自己株式の取得は絶対にしない」とは申し上げておらず、「自己株式の取得よりもM&Aを優先したい」とご説明してきましたが、この基本方針に変更はありません。M&Aによる価値創出が当社の長期戦略の核であり、「アセット・アセンブラー」モデルも引き続き継続していきます。
    自己株式の取得に至った背景としては、現在の株価が非常に割安であると認識したためです。投資家から「これ程安いバリュエーションで、プレミアムもなく購入できる株式が欲しくないのか?」と指摘されたこともきっかけとしてありました。そこで、リリースでも記載の通り、純粋なファイナンシャル・デシジョンとして将来的なEPS成長を考慮しながら、このPERで取得する価値があると判断しました。つまり、収益が非常に堅調でありながら、株価が割安であるため、資金の振り向け先として自己株式の取得を選択しました。
    取得規模については、当社は現在も一定のレバレッジを維持しており、金融機関からは当社の安全な財務運営に信頼されて、低利で貸し付けてもらっています。こうした点も大きな方針変更があるわけではなく、今後もデレバレッジを継続しながら、次のM&Aにも対応できるバランスを考慮し、「300億円」という金額を決定しました。
    自己株式の消却については、現時点で消却する予定はありません。従来ご説明の通り、将来的なエクイティ・ファイナンスを否定しているわけではなく、EPSが十分に増加するようなM&Aや財務の安全性の担保に向けて株式を活用する可能性はあります。ただし、株式の活用に際して、自己株式を一度消却してその後新株を発行するケースと、消却せずに自己株式を利用するケースでは、手続き上の違いはないものの、登録免許税による税負担が異なります。これにより億円単位の差が出ることから、エクイティ・ファイナンスを実施しないことが確定するまでは、自己株式の消去は行わないことを判断しました。
    念のための補足としては、現時点で株式を発行する予定はなく、現在のように株価が安い状況では絶対に発行しません。将来的に株価が適正水準まで回復し、大部分を負債で調達し、株式を発行しても十分にEPSを確保できるようなM&Aに巡り合えるのであれば、エクイティ・ファイナンスの可能性があるということです。そうした機会を見据える中で、登録免許税の負担を考慮し、現時点で自己株式の消却は実施しない方針を採用しています。

  • A2配当方針に変更はありません。基本的に毎年少しずつ増配していく方針であり、配当性向という考え方は採用していません。短期的な配当よりは、M&Aによるデレバレッジを含めた価値創造を重視しています。これまでご説明してきた通りであり、今回の自己株式の取得によって方針が変わるわけではありません。
    株式交換の可能性については、株式交換をせずに増資することも十分にあり得ます。当社のM&Aモデルとしては、大部分を負債で調達しつつ、不足分を株式で補うケースになると考えています。株式交換のみで全てを対応するのは、当社株式のPERが非常に高い場合は選択肢となりますが、そうでない場合は合理的ではないため、通常は負債と株式のミックスになる理解です。

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1これまでもご説明の通り、四半期ごとに需要期が異なるため、前四半期比ではなく前年同期比で分析してもらいたいと考えています。説明資料P6の通り、第4四半期は前年同期比で増益を予想しています。
    調整前の営業利益については、AOCの PPA関連費用などが90億円強発生する見通しであり、現時点で確定はしていないものの、その前提に変更はありません。また、第4四半期は品川事業所における固定資産譲渡益として約70億円があります。さらに、2024年第4四半期はインド事業が2ヵ月分のみ含まれていた一方、2025年第4四半期は3ヵ月分がフルで反映され、AOCも同様にフルで計上されます。
    これらを踏まえ、2024年第4四半期の営業利益465億円に対して2025年第4四半期は+20%前後の増益となる見込みであり、マージンも若干の改善を見込んでいます。
    為替については、ある程度円安であった2024年第4四半期に対して、2025年第4四半期は円高を予想としています。足元の為替水準は、2024年第4四半期と同程度で推移しているため、多少の上振れ余地はある見込みです。さまざまな変動要因はあるものの、第4四半期も総じて順調に成長できる見通しです。

  • A2先ほどは「市況は底打ちの兆し」と申し上げましたが、売上と販売数量では若干異なります。販売数量は少し底打ちの兆しが見えてきましたが、12月は需要が多くない月であり、11月も米国では感謝祭があるため、多少の変動があります。当社としては楽観視しているわけではなく、下降トレンドから少し底打ちの兆しが見えてきた点をAOCの取締役会でも議論されていることを皆様へ共有しました。

質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏

  • A1与信管理の強化に伴う販売数量への影響については、第2四半期でも内訳を開示していませんので、今回も詳細は差し控えます。
    第2四半期の状況としては、TUCの販売代理店の中でも比較的大きな取引先の債権が長期化したため、支払いが完了するまで卸売りに制約を掛けました。第3四半期では、大口の債権は減少した一方、小規模な取引先で債権の長期化が増加しました。2024年までは販売代理店における売掛金の長期化はあまり見られませんでしたが、当社の慣習として年度末までに全ての売掛金を回収する方針を継続しています。こうした規律の中にあっても、第3四半期も若干長期化している売掛金が生じてしまい、第2四半期と同じ程度で第3四半期にマイナス影響が発生しました。
    現地競合他社との比較については、第一に当社と競合他社では事業規模が大きく異なります。競合他社の収益力が向上しているのは事実ですが、当社との比較でまだ低い水準と認識しています。当社は建築用(TUC・TUB)、工業用、自動車用を合わせて約15%のマージンを確保しており、TUC単体ではさらに高いマージンを確保できている中、3~6級都市などの小規模セグメントに対して当社として取り漏れている分野は正直あると思います。これらへの対応については、中国チームの重要な経営課題であると認識しています。
    また、例えば、当社が圧倒的なパイオニアとして展開してきたリフレッシュ・サービスについて、競合他社がより低コストで提供するケースも地方都市で見受けられます。こうした小規模セグメントの収益性については計り知り得ないものの、当社としては今後の対応の必要性を検討しなければならないと考えています。
    全体として、販売数量・金額ともに当社が圧倒的に競合他社を上回っている現状を踏まえると、四半期ごとの多少の変動は大きな問題ではないと捉えています。また、競合他社はさらに小規模なプレイヤーのシェアを奪っている認識であり、当社が負けている感覚はあまりありません。

  • A2与信管理は特別なキャンペーンとして実施しているわけではなく、日常的な取引の中で債権の長期化が見られる取引先には卸売りを停止する方針を継続しています。債権の長期化が目立つことはこれまであまりなかったものの、2025年の第2四半期と第3四半期は市況の悪化に伴い多少発生しています。当社は年度末までに全ての売掛金を回収する方針を堅持していますが、明日から即時対応できるもの類のものではない中で、前もって対応をしているとご理解ください。
    第4四半期に向けては、需要が減退期に入るため、債権回収により重きを置くことになる見通しです。理想的には第4四半期の終了時点で債権関連問題がほぼ解消されている状態が望ましいですが、結果として一部で売りそびれや機会損失が発生する可能性もあります。
    ただし、全体としては市況影響の方が大きいと考えています。第4四半期の市況は前年同期と比べて特段良くも悪くもなく、ヒートマップ上はほぼフラットな見通しです。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A1後者については、その通りです。
    前者については、第2四半期の市況は前年同期と比べて-5%~-10%の落ち込みだったのに対して、第3四半期はほぼ横ばいだった認識です。2024年の第2四半期は大きな変化はなく、2025年の第2四半期はマイナス、2024年の第3四半期は横ばいで、2025年の第3四半期は横ばいと推移しており、多少の変動はあるものの、これらを踏まえて市場センチメントが改善しているとは言い難い状況と考えています。

  • A2第2四半期よりは第3四半期の方が改善した認識ですが、四半期で大きく改善したとは言えず、少なくとも第2四半期ほど悪化していない認識です。

  • A3今後も横ばい、もしくはややプラスになると見込んでいます。中国市場は依然として良い状況ではありませんが、当社としてはプレミアム製品の掘り起こしを通じてマージンの確保ができています。このような環境下で、成長と収益性のバランスが経営にとって重要と考えています。

質問者:CLSA証券株式会社 張一帆氏

  • A1米州セグメントは自動車用とDunn-Edwardsの建築用の両方を含んでおり、マージンの個別開示はしていません。建築用は主にファミリー向けの塗り替え需要が中心であり、カリフォルニア、ネバダ、アリゾナなどを中心に展開するプレミアムブランドです。先ほどもご説明した通り、米国では長期金利の上昇により住宅ローン金利が上昇し、住宅の買い替えや引っ越し需要にネガティブな影響を与えています。
    一方、AOCセグメントについては広義の建築向けであり、もちろん住み替え需要もあるものの、インフラ投資全般の需要も含まれるため、マージンにおいては米州セグメントほどの影響は受けていません。ただし、第3四半期の販売数量は-MSDの減少となっており、前年同期と比べると米国市場の厳しさが表れています。
    Dunn-Edwardsはプレミアムブランドとしての強みがある一方、自社店舗を展開している分、固定費が高いのが特徴となります。他方、AOCは店舗展開もなくBtoBを中心として固定費を厳格に管理しているため、販売数量が減少してもマージンを維持しています。両者の違いはこうした部分に由来している理解です。

  • A2原材料価格全般が下落傾向にあるため、基本的にはプラスの影響があります。ただし、競合他社の動向にもよるため、一方向に進むとは限りません。例えば、米国ではドミナントな地位にある競合他社が大幅な値上げを発表しており、それを受け入れる素地が米国にはあると言えます。他方、Dunn-Edwardsも値上げを実施していくものの、値幅については別の議論が必要です。
    コストが下がる中で、価格戦略と収益性のバランスをどう取るかが経営の要諦であり、現地チームは収益確保に向けて適切に判断していきます。

質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏

  • A1資金が十分に回れば売掛債権の支払い遅延も発生しないため、市況が改善すれば与信管理上の問題は自然に解消される見込みです。過去には話題に上がるほどの与信問題は発生しておらず、現在は市況が厳しいことから、販売代理店の資金繰りが悪化し、売掛金の支払いが遅れるケースが生じています。
    市況が改善して販売と資金回収が順調に進めば、当社にとって問題はなくなります。特殊な販売代理店で問題が起きているのではありません。第2四半期は規模のやや大きな顧客で売掛金の支払いが長期化した事例があったものの、TUCの慣習として年度末には債権を回収する運用を徹底していることから、下期にはキャッシュ・フローも大きく改善する見込みです。与信管理の強化は期中に一部売上が鈍化した理由の1つと理解しています。

  • A2TUCにおいては過去に同様の事例が全くなかったわけではありませんが、目立つほどではありませんでした。第2四半期にやや目立つ事例が発生したものの、与信管理は政策として状況に応じて柔軟に対応しなければなりません。最終的に安全な回収ができることが重要であり、画一的な運営ではなく、市況の良し悪しによって対応も変えながら、一定の規律を保ちながら資金回収を徹底していきます。 なお、TUCで過去にも同様の事例がないわけではないものの、過去にTUBで長期化した債権とは性質が異なる点を改めて強調させてください。

このWebサイトには、いくつかのCookieと同様の機能が必要です。
お客様が当社を許可する場合、当社はサービスを改善するために、これらの手段を使用して集計統計のお客様の訪問に関するデータを収集します。さらに、YouTubeを使用して動画を表示します。動画を視聴することにした場合にのみ、Cookieなどの手段を使用します。許可しない場合は、技術的なCookieのみ使用されます。
Cookieポリシーについて詳細を見る