質疑応答要旨:M&A戦略

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質問者A

  • A1当該競合2社の統合については、実際に多くの質問を受けており、銀行関係者からもさまざまな提案が届いていますが、具体的なコメントは差し控えます。当社が関与する可能性もありますし、全く関与しない可能性もあります。

    2017年の状況に関する2つめの質問についてまず申し上げたいのは、当時と現在では経営体制が全く異なるという点です。

    以前からお伝えしていますが、当該企業の推定価格は調整後ベースで150億米ドル前後とされていましたが、実際の純利益は1億米ドルに満たない水準でした。このため、150億米ドルで買収した場合、PERは150倍以上となり、通常の感覚では理にかなっていません。当時の経営陣の考え方についてコメントする立場にもありませんが、当社はMSVを唯一のミッションとしていることから、PERで150倍に達するような取引を今後行うことはありません。そもそも前提となる数字も今とは違いますので、2017年当時と現在を比較しても意味がないと考えています。

    どのようなM&Aであれ、最終的にMSVの観点から合理性があるかが全てです。「それは合理的か?」ということが唯一の判断基準です。将来何が起きてもおかしくなく、2社の統合に伴って売却される可能性のあるアセットも含めて、どのような取引も可能性としては否定しません。

    2社の統合によって競争環境が大きく変わる分野はそれほど多くないため、統合そのものが当社の事業ポートフォリオに重大な脅威をもたらすとは考えていません。

    例えば、自動車用分野では1社と競合関係にありますが、もう1社は自動車用事業を持っていません。当社の自動車補修用については、グローバル展開が限定的であることから、直接の競合関係にはありません。

    また、競合の1社は、アジアと欧州で建築用事業を展開しておらず、2社の統合が当社に脅威になるとは考えておらず、むしろ何らかのアセットが市場に出てくるのであれば、当社にとっては機会になり得ると考えています。

    ただし、先ほど明確に申し上げた通り、「絶対にやらなければならない(must do)」案件は1つもありません。重要なのはあくまで、バリエーションやシナジーを含めて「合理的かどうか」です。可能性としてはあらゆる選択肢があり得るものの、現時点でこれ以上にコメントできることはありません。

  • A2回答を差し控えます。

質問者B

  • A1当社のバリエーションが極めて低いという点については、私自身も非常に強くそう感じています。一方で、特定地域で非常に強力なごく一部のプレーヤーを除けば、業界全体としてバリュエーションが下がっているのも事実です。

    こうした状況は有意義な機会を生み出す可能性があるか?重要なのは「バリュー(価値)」です。当社がこれまで事業領域を大幅に拡大してきた理由の1つは、特に建築用を中心として塗料・コーティング業界のバリュエーションが極めて高かったためです。 当社は2022~2023年に「アセット・アセンブラー」モデルを掲げ、事業領域をSAF(密封剤・接着剤・充填剤)や建設化学品(CC)分野に拡大してきました。そこで重要なのは、当社がいくらでアセットを取得し、株主にどれだけの価値を提供できるのか、という点です。これは極めて重要な判断要素です。

    化学分野全体のバリエーションが低い可能性も考慮すると、AOCの買収対価がEV/EBITDAで8倍となる場合、8倍ではまず取引されない建築用アセットを取得するよりも極めて優れたリターンを得ることができます。8倍が「魔法の数字」と言いたいわけではなく、当社がどれだけ相対的な価値を引き出せるかが重要です。

    塗料関連アセットを極めて低いマルチプルで取得できて、シナジー効果を得ることができるなら、それをしない理由はありません。あくまで相対的な比較の中で決まるものであり、私はあらゆるアイデアに対して常にオープンな姿勢でいます。

質問者C

  • A1私は2024年以降、M&Aの対象事業・地域・規模を問わず、ノーリミットであると申し上げてきましたが、「おそらく銀行は買わないでしょう」ともお伝えしてきました。理由は、あまり儲からないからです。銀行は、戦略的な国家資産としての側面が強く、規制や国際的な問題に影響されやすい業種でもあります。また、鉄鋼会社が買収対象とならない理由も、政治色が強くなりやすい業界であるからです。当社は常に、政治的な関心や監視の対象にならないような領域に留まろうとしており、化学分野は当社の買収基準に合致する機会が十分にあると考えています。

    AOCは当社のフォーミュレーション事業やコーティング事業に近い領域にあり、従来の塗料メーカーという枠から良い意味で少し外れる展開になると判断しました。当社は今後も、継続的な成長性や高いマージン、優秀な経営陣、強いキャッシュ創出力を持つアセットを模索していく方針です。

    MSVに資するという観点では、EPSだけでなく、PERについても重要視しています。PERは、ROICや投資家からの信認度などの多くの要素で決まるため、当社はこれら全ての要素を勘案しながら判断しています。

    あまり具体的に回答できていませんが、これが当社が非常に厳格に持ち続けている経営哲学となります。

質問者D

  • A12019年に転換点があったとの指摘ですが、2018年にMSVを唯一のミッションとした事業重視の取締役会を実現するための株主提案をウットラム・グループから受けました。これが、当社が初めてMSVをミッションとして明確に掲げたタイミングであり、MSVは現在も唯一のミッションであり続けています。

    2018年以降、MSVから逸脱したことはありません。新たに5人の独立社外取締役が就任しましたが、全員が事業最優先の考え方を持ち、MSVに精通しています。さらに、その全員がMSVの実現と少数株主利益の保護が自らの役割であることをはっきりと表明しています。

    M&Aの規模が大型化したとの指摘については、当社は少なくとも2017年に150億米ドル規模の案件にチャレンジしていました。当社の規模や能力が大きく変化したわけではありませんが、M&Aの対象は、PERが150倍を超える企業から、安定した経営をベースに急成長し、景気変動の影響を受けにくい企業へと変化したと考えます。

    その最初の具体事例が、豪州の建築用塗料市場で高いシェアを持つDuluxGroupの買収であり、2019年に実施しました。豪州は急成長している市場ではありませんが、DuluxGroupは長年にわたって安定した成長を続け、5%程度の売上成長に対して、オペレーティング・レバレッジの寄与によって7~8%の利益成長を実現してきました。DuluxGroupのような企業こそが、当社が求める買収対象です。

    その他、Betek Boyaも建築用を手掛けており、NIPSEA合弁事業の100%と併せて買収したインドネシア事業も建築用が80%、工業用が20%となっています。

    MSVが当社の唯一のミッションとなったことで、結果的に事業の重点は確実に変化しています。以前に比べ、景気変動の影響を受けず、はるかに安全で、安定した優良資産を選ぶようになりました。

    中国市場から距離を置こうとしているとの見方は適切ではありません。「日本経済が成長していないから、海外で成長する必要がある」という考え方も適切ではないと言えます。当社は、M&Aを通じて成長の可能性がある領域を見出し、それを追求しています。 実に単純な話です。中国に成長機会があれば追求しますが、中国に資本を投入する意味のある機会は、今のところ存在していません。評価額があまりにも高く、投資対象も限定的であるためです。これらの状況から、当社は機会のある他の地域への投資を重視し、結果的に当社事業ポートフォリオに占める中国の割合は小さくなりました。

    当社の事業ポートフォリオ運営に関して、「これは成長を抑え、これは成長を加速させよう」といったアジェンダは一切ありません。ウィー・シューキムがご説明した通り、中国事業は今後も利益ある成長を続け、他の地域についても同様です。新たなM&Aも当社の継続的な成長に貢献するでしょう。重要なのは、「当社は中国以外で何かしなければならない」と考えているわけではないということです。当社はあらゆる機会を模索しており、これが現時点で最も適切な方向性です。

  • A21つ目と2つ目のシナリオについては絶対にあり得ないと断言します。

    58.7%の株式を保有するウットラム・グループは、ファミリー経営の資産管理会社であり、当社の経済的価値の向上、すなわちMSVのアジェンダを共有している点を理解することが重要です。ウットラム・グループは、上場企業としての当社の企業価値を可能な限り高めるアジェンダを共有しています。ファミリー経営の資産管理会社としては、流動性は極めて重要であり、非公開化を進めることは全く合理性がありません。

    また、当社は資本市場を活用し、買収を通じたさらなる成長を目指しており、新株発行を行った上でもEPSが確実に増加するように努めています。私はこれらを率直に述べており、これが当社の戦略です。

    3つ目の事業ポートフォリオの見直しについては、先ほどご説明した通り、当社の全てのアセットはキャッシュを生み出しており、現在も利益に貢献しています。そのため、追加資本を緊急に必要としているわけではありません。現時点で事業を売却すればいくらかの資本は回収できるかも知れませんが、その資金は債権者に返金されるだけで、利息もごくわずかにしか減少しないので、EPSを希薄化させる結果になります。

    この点に関して、当社は常にアイデアを歓迎しています。これは将来を見据えた財務上の決定であり、最善の選択肢と考えています。

質問者E

  • A1当社のKPIはMSVです。当社のM&Aチームは私を含めて非常に小規模で、2~3名程度となります。NIPSEAグループ、DuluxGroup、AOCにもそれぞれM&Aチームが存在し、ボルトオン買収(既存事業の補完・ 強化を目的とする買収)案件を検討しています。ただし、ディールの実行が目的ではありません。

    M&Aの成功がMSVに貢献することは明白です。M&A成立後に失敗すれば、反対にマイナスの影響を受けます。当社は評価の一環として、想定ROICと実績値をトラッキングし、当初の計画・承認内容と実績が整合していることを確認しています。計画通りに進まない場合、一部の関係者の報酬にマイナスの影響が出る可能性があります。

    これらは機械的なものではなく、自社のリスク許容度を意識しつつ、官僚主義的になり過ぎたり、数字至上主義になり過ぎないよう十分注意する必要があります。

  • A2当社は非常に慎重に評価を行っているため、魔法のようなハードル・レートは存在しません。

    しかし、一般的には、当社のWACC(加重平均資本コスト)は日本円ベースで約5~6%です。M&Aを実施する場合、初年度は無理でも、この数値を上回る必要があります。EPSの増加は確実に初年度から達成させますが、ROICについては3年目までに達成することを期待しています。これは一般的な指針であり、絶対的な基準ではなく、状況によって異なります。

    当社の株価が非常に高かった時代には、ハードル・レートの設定はそれほど厳格ではありませんでした。しかし、現在ははるかに厳しい状況となっており、先ほども申し上げた通り、AOCのROICは初年度から6%を超えています。つまり、当社はこの点でも確実に進化しています。

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