サステナブル製品の創出によって長期視点で事業へ貢献
製品のサステナビリティ
当社グループの製品が社会に貢献し、ビジネスの成功を長期的にもたらす上で、サステナビリティは不可欠な要素です。当社は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の枠組みに従い、製品ライフサイクルの原則に基づいてサステナブル製品、技術を定義しています。これは、製品ライフサイクルにおける生産、使用、サービスの3つの主要段階などを網羅する体系的なアプローチであり、各段階において塗料製品の特性をSDGsに照らし合わせることで、市場に流通している主力製品よりも当社製品が優れている点を評価しています。製品の生産段階では、製造効率や原材料、物流、包装などが評価の重要なポイントになります。使用段階では、エネルギーや資材の消費量と化学物質の排出量をともに削減し、化学物質の有害性の低減による顧客や消費者への支援が評価対象となります。サービスの段階では、製品の耐用年数、クリーンテクノロジーへの応用、健康や福祉への寄与、使用後の処理などを評価しています。
こうしたサステナビリティに関する原則のもと、新製品の評価に用いる「サステナビリティ・スコアボード(得点システム)」を開発し、NIPSEA中国と日本グループのNPSIシステムに導入しました。2023年のNIPSEA中国と日本グループを合わせた新製品売上高のうち、66%が新たに開発したサステナブル製品でした。
また、「グリーンデザイン・レビュー」も併せて開発し、日本グループとNIPSEAグループの研究開発プロジェクトの管理システムに導入しています。日本グループとNIPSEAグループのプロジェクトポートフォリオにおいて、研究開発費の63%が「グリーンデザイン・レビュー」の原則に従ってサステナブルな優位性を持つ製品の創出に使用されています。
サステナブル製品データ(2023年)
新製品売上高指数(NPSI) |
|
新製品売上に占める サステナブル製品売上比率 |
|
研究開発費に占める サステナブル製品開発関連比率 |
|
サステナブル製品事例
Metalshield Rust Defence
DuluxGroupは、溶剤ベースのプレミアム製品の後継品として「Metalshield Rust Defence」ブランドの水性トップコートとプライマーを新発売しました。水性フォーミュラの採用により、さびや腐食を防ぐ性能を損なうことなく、簡単に金属表面を保護することができます。
Intergrain Ultradeck Timber Oil
DuluxGroupのCabot's事業部門は、木材表面を保持・強化・保護するカテゴリートップの水性ソリューションの開発に力を入れています。2023年に再発売された「Intergrain Ultradeck Timber Oil」は、従来の油性コーティングよりも3倍長持ちする最高クラスの耐久性を備えています。この取組みにより水性技術による売上が増加しており、従来の油性デッキオイルに比べライフサイクル温室効果ガス(GHG)排出量の少ないソリューションへの市場の移行を効果的に促進しています。
EVEREST®
「EVEREST®」は、超ハイグレード、低臭気、ゼロVOC、下塗不要の100%アクリル塗料で、高級住宅や商業施設での使用に最適です。塗装が容易で、優れた隠蔽性や耐スクラブ性、耐洗浄性、接着性を特徴としています。「EVEREST®」は、エチレングリコールやAPEO界面活性剤などの懸念化学物質を使用せずに製造された、市場をリードするゼロVOC塗料です。その優れたEHS(環境・健康・安全)性能により、家庭での使用に最適です。 耐洗浄性、耐擦傷性、耐光沢性の向上を目標とした世代改良プロジェクトを完了したことにより、性能寿命の延長を実現しています。
Dulux envirO₂™
Dulux envirO₂™は、低臭・低VOCで優れた性能を発揮するプレミアムアクリル塗料です。2022年には同シリーズの15Lパッケージで50%のリサイクル率を達成しました。豪州の塗料ブランドで唯一Global GreenTag™認証を獲得しています。
加飾フィルム
当社グループは、持続可能な低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電システムやリチウムイオン電池(LIB)向けの製品開発にも取り組んでいます。
トヨタ自動車株式会社とNPACは、太陽電池モジュールにデザインと色の自由度を提供する太陽電池モジュール用加飾フィルムを共同開発しました。
高密着プライマー
NPSUは、パウチ型リチウムイオンバッテリーのパッケージ用高密着プライマー「サーフコートNR-Z」を開発しました。電解質に長時間浸漬した後の優れた密着性を実現しています。
低温・高速硬化『ACECRON 130』
Nippon Paint Chinaの「ACECRONシリーズ」は、自動車産業のESG性能を強化するために設計された画期的な低温硬化型エレクトロコート(電着塗装)プラットフォームです。この製品は、特に低温での乾燥や複雑な組み立てが必要な部品に適しており、エネルギー効率が高く、環境に優しい塗料に対する市場の需要に対応しています。「ACECRON 130」は、鉛やスズを利用せずに130℃まで硬化可能である点が評価されており、従来の硬化プロセスと比べてエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を大幅に削減することができます。さらに、優れた耐食性と塗膜の
安定性を実現し、低温で高い性能を維持することが可能です。
低炭素バインダー
セメントは基材製品の原材料として広く使われていますが、生産時に多量の二酸化炭素を排出します。当社は二酸化炭素の排出削減に向け、セメントに代わる低炭素バインダーの開発を進めています。2024年にはパテに含まれるセメントの40~50%を自社開発の低炭素バインダーに代替しました。代替後の性能は従来の配合と大きく変わらない一方で、二酸化炭素排出量を30%以上削減することができました。現在は配合の模擬検査を実施しており、2025年には二酸化炭素排出量をさらに削減した新しいパテ製品を発売する計画です。
低温速乾型万能プライマー『NPEP FLEKS 760N』
『NPEP FLEKS 760N』は、2024年第2四半期に発売された低温速乾型プライマーで、乾燥炉の温度を下げることで最大28%のエネルギーを節約し、CO2排出量の削減につながります。また、クロムフリー前処理基材にも対応し、高い密着性や耐食性、優れた作業性を備え、加熱保管時の安定性も確保しています。家庭用電化製品向けのプライマー統合製品シリーズとして、塗装工程の生産効率向上にも貢献します。2024年5月にはRong Ge-Technology Innovation Awardを受賞しており、家電メーカーのコスト削減や環境負荷低減、生産性向上をサポートします。
低温焼付け型PD『HAA』
粉体塗装においては、塗料の製造工程よりも焼付け工程でのCO2排出量が多くなるため、焼付け温度を下げることでCO2排出量の大幅な削減に貢献できます。HAA硬化粉体塗料は、日本で広く使用されているBI硬化塗料と比べて、低温硬化性に優れており、HAA製品を使用することで焼付け温度を180℃から160℃へ下げ、焼付け工程でのCO2排出量を11.3%削減することが可能です。
さらに、当社のHAA製品は静電気付与技術による優れた塗装作業性も特長で、スチール家具メーカーなどによる採用が加速しています。