若月共同社長メッセージ

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代表執行役 共同社長 若月 雄一郎

代表執行役 共同社長 若月 雄一郎

PROFILE
日本興業銀行(現みずほ銀行)、シュローダー証券を経て、2000年にメリルリンチ日本証券(現BofA証券)に入社。同社のM&A部門、投資銀行部門長、取締役、副会長を歴任し、顧客企業のM&A戦略や資金調達に関するアドバイザリー業務などを長年にわたり担う。
2019年に当社入社。2020年より当社専務執行役CFOに就任し、経営企画、財務経理、広報、インベスターリレーション、M&Aを担当。 2021年4月28日付で代表執行役共同社長に就任。


Purposeのもとでパートナー各社が一体となり、「株主価値最大化」と持続的な成長・発展を目指します。


“Integrity”を基軸に、経営の舵取りを担う

私はこれまで、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)のM&A部門や投資銀行部門の責任者を務めるなど、顧客企業のM&A戦略や資金調達に関するアドバイザリー業務、資金調達などの実務を約23年間にわたって担ってきました。当社グループとの縁も、2019年にトルコのBetek Boyaを買収する際、フィナンシャル・アドバイザーとしてプロジェクトに参画したことが契機です。

私が経営者として大切にしているのは、“Integrity”という言葉です。直訳すれば「誠実」ですが、私はもう少し深い意味で理解しています。前職では顧客の正しいM&A判断をサポートするために、Integrityを基軸にしてきました。つまり、自分の利益のために顧客を犠牲にすることはあってはならず、顧客と共生し、ともに繁栄することを常に意識していました。この言葉は、当社経営の考え方の一つ“Enjoyable Profit”に通ずるものがあります。「株主価値最大化(MSV)とは、ステークホルダーに対する責務を果たした上でのEnjoyableなものでなければいけない。誇れることを行った結果としてのProfitでなければならない」――当社へ入社する前、自身が大切にする基軸とMSVの志向が共鳴することが分かり、感銘を受けたことを鮮明に思い出します。

私の強みは、相手が海外の経営者であっても常に対等の立場でものが言えることだと考えています。この能力は、語学力というよりも、さまざまな海外経験で培われたものです。私は、幼少期や経営大学院留学時代に米国に滞在していたことに加え、グローバルファームのメリルリンチでも国内外のメンバーと連携して多くの顧客を支えてきました。そうした経験を通じて、相手を尊敬しつつも積極的に議論する姿勢を身に付け、当社でも海外パートナー会社のリーダーたちと同じ目線で直接コミュニケーションを図ってきました。文化の違いをブリッジすることができるこの能力は、共同社長としてタッグを組むウィー・シューキム氏とのパートナーシップにおいても、大いに発揮していけると考えています。



互いの強みを融合し、2人の力でMSVを実現

2019年秋に当社へ入社後、国内外のパートナー会社から塗料事業の技術的な可能性やさまざまな魅力を学ぶことで、塗料市場や当社の持続的成長力を資本市場に適切に伝える役割を果たすと同時に、長年の懸案であった「アジア合弁事業100%化・インドネシア事業の買収」や、2021年3月に発表した「新中期経営計画(2021-2023年度)」の策定に実務責任者として深く関与してきました。こうした中で、資本市場の要諦やファイナンス手法に精通し、当社グループの経営上のミッションであるMSVの本質を最も理解、実践し得る一人であるという自負を持っています。

MSVの実現に向けた私のミッションの中でも「PER(株価収益率)の最大化」は重要なポイントです。PERは資本市場の期待そのものであり、その最大化には積極的なIR活動や最適な財務戦略、サステナビリティの推進、そしてM&Aによるさらなる成長の実現が重要です。特に、優良なM&Aを実施するには、適正価値での買収の実現や潜在リスクの見極め、買収のための最適資本構成の仕組み、買収後の適切な運営などを総合的に考える必要があり、資本市場に最も近いところで長年リーダーシップを発揮してきた自身の経験や知見が存分に生かせると考えています。

ウィー氏との最初の出会いは、先述したトルコのBetek Boya買収の案件です。顧客として出会ったウィー氏率いるNIPSEAのディールチームには、とても大きなエネルギーや情熱を感じました。また、ウィー氏は大変優秀で合理的でありながら、ハートのある人物です。非常に頭の回転が速く、「結果(consequence)」をしっかりと理解し、常に「正しい判断」を求めます。そうした意味では、ウィー氏も“Integrity”を持つ経営者だと思います。だからこそ、部下も納得感を持って仕事をしていると理解しています。

共同社長体制が決定してから、ウィー氏とは毎日メールやチャットで頻繁に意見交換する傍ら、週に2、3日は2時間ほど直接打ち合わせしています。それぞれ主軸とする責任範囲はありますが、だからと言って相手の管掌範囲に不干渉であるということは一切なく、経営判断は2人で行うことにしています。例えばM&Aの直接の担当者は私ですが、事業部門に主体性がないとM&Aは意思決定できません。このように、何事を決めるにも必ず2人で話し合って「MSVの観点から何が正しいか」を判断していますが、私たち共同社長体制の特徴は、その判断が圧倒的に速いということです。これは顧客を重視する私たちの経営哲学や経験が可能にしたものです。このようにお互いの強みを融合することで、経営上のミッションであるMSVは必ず実現できると確信しています。



グループ共通の存在意義“Purpose”を策定

当社グループは2016年頃まで、主に日本とNIPSEAだけで構成される企業グループでしたが、2017年に米国Dunn-Edwards、2019 年に豪州DuluxGroupやトルコBetek Boyaが加わり、2021年1月にはアジア合弁事業の100%化およびインドネシア事業を買収したことで、グローバルで多様な価値観を持つ企業集団となりました。

こうした状況変化を踏まえて策定したのが、当社グループ共通の存在意義を示す“Purpose”です。MSVの実現には、パートナー会社同士を強固につなぐグローバル共通の指針が必要です。Purposeは、パートナー各社が意思決定をする際の羅針盤としての役割を果たすほか、ステークホルダーとのエンゲージメントの起点として、持続的な成長機会につなげていくためにも重要な機能を持っています。

Purpose策定の大きな契機は、やはりアジア合弁事業の100%化です。合弁時代は海外市場でNIPSEAチームと日本のチームが時に競合するケースもありましたが、「One Team」となった今は、Purposeの共有により、グループ一体でMSVを追求しています。

Purposeの検討に当たっては、さまざまな文化的背景や価値観を持つパートナー各社のマネジメント層にも深く関与してもらいました。「私たちは何者であるか」「なぜともに手を携え、進んでいく必要があるか」「社会に何をもたらしていくのか」「大切にしたい価値は何か」――そうした問いに対してグローバルな議論で一つひとつ明確にし、パートナー各社の思いや認識を織り込みながら、Purposeステートメントを構築し、Purpose達成に向けたBusiness Philosophyを策定していきました。このような参加型アプローチは、パートナー各社の考え方をより深く知る契機にもなり、参加者全員にとって非常に納得感のある理念体系を構築することができました。

多様な人材が集まる当社グループには、外部から登用した人材を積極的に受け入れるインクルージョンの企業文化、風土があります。今後、当社グループに加わる未来のパートナー会社にもPurposeを共有し、しっかりと理解してもらうことで、MSVへの貢献につなげていきたいと考えています。



サステナビリティ戦略の推進で新たな事業機会を探索

当社グループは2021年度より、3ヵ年の新中期経営計画をスタートしました。2023年度の経営目標として、M&Aを除いたオーガニック成長で、売上収益1兆1,000億円、営業利益1,400 億円、EPS(株式分割考慮前)225 円を掲げています。この目標を達成するために、「地域・事業戦略」と「サステナビリティ戦略」の2軸で事業を推進しています。

サステナビリティ戦略では、SDGsやESGの視点が、企業の持続的な成長とMSVの実現において重要であると認識しています。気候変動や資源枯渇、急速な都市化、新型コロナウイルスをはじめとした感染症、自然災害など、社会の急激な変化や社会課題を視野に入れながら、これまでもサステナビリティを意識した経営を推進してきました。2023年度に向けては、2020年度に公表した「ESGステートメント」や「マテリアリティ」を踏まえた「ESGアジェンダ」に基づく具体的なアクションを前進させていく方針です。

マテリアリティの中で最重要課題と位置付ける「気候変動」については、CO2排出量ネットゼロに向けて既に具体的な課題抽出と対策の検討を開始しています。グループ全体で再生可能エネルギーの調達やカーボンプライシングの財務影響を把握するとともに、世界各地で省エネルギー設備の採用や再生可能エネルギーの自前調達に向けた投資も検討しており、CO2対策と収益力向上の両面から対応していきます。

また、ESGへの取り組みを通じた新たな事業機会の探索も進めたいと考えています。特にBtoBビジネスでは「低CO2排出製品」に対する顧客の需要が高まっていることから、洋上風力発電設備用塗料や環境負荷が低い次世代型船底防汚塗料「FASTAR」などの拡販に注力していきます。また抗ウイルス・抗菌ブランド「PROTECTON」などの製品は、「正にそこにある社会課題」への対応を通じて収益にも寄与するものであり、引き続きPROTECTONブランドの新製品を順次発表していく計画です。ESGやコンプライアンスに対する社会からの要請レベルは日増しに高まっていると感じており、感度を常に高く保ちながら、社会の要請にキャッチアップし、しっかりと社会・環境に対する責務を充足していきます。

Digitalizationによる業務プロセスの効率化

Digitalizationについては、「目的ではなく手段である」という基本認識のもと、目的を一つひとつ明確にした上で、投資に見合う効率・効果を検討していきます。新中期経営計画では国内外のパートナー会社のベストプラクティスを参考に、①顧客満足度の向上、②経営効率・生産性の向上、③従業員満足度の向上、④リスク対策の強化の4つの側面でDigitalizationによる業務変革を推進していきます。

社内に向けたDigitalizationも積極的に進めていきます。新型コロナウイルスの影響が続く中、当社でもテレワーク体制が進んでおり、確立したリモートワーク環境をポストコロナ時代においても引き続き活用していきます。私はもともと毎日出社することが業務にとって効率的とは考えていません。Faceto Faceにこだわらず、チャットやメールで済ませることで会社全体の業務効率性はむしろ上がるはずです。DXの本質は、現状の業務プロセス自体の効率性を改めて考え直すことにあります。

少数株主の利益を保護するガバナンス体制を構築

当社グループは、事業活動に関わる全てのステークホルダーからの信頼を得るために、ガバナンス改革に継続的に取り組んでいます。2020年度に指名委員会等設置会社へ移行し、監督と執行の分離、経営の透明性・客観性・公正性を大きく向上させました。現在の取締役会は、8人中6人を独立社外取締役が占める構成により、会社や株主共同の利益を尊重し、少数株主の利益保護を図っています。また、筆頭独立社外取締役である中村昌義氏が取締役会議長に就任し、取締役会の実効性のさらなる向上を図っています。独立社外取締役は全員が経営の経験を有しており、実務に即した監督や助言を行うなど、少数株主に不利益とならない実効性のある仕組みを整えています。

共同社長体制の発足に合わせて、大株主Wuthelam(ウットラム)グループのマネージングディレクターかつ当社取締役のゴー・ハップジン氏が新たに会長に就任しました。ウットラムは、これまでアジア合弁事業を49%保有し、潜在的に利益相反が生じる可能性を有していましたが、2021年1月に当社がアジア合弁事業を100%化したことで、この問題は解消に至りました。ゴー氏は1979年から共に支え合ってアジア事業を拡大してきたパートナーであり、かつ世界の塗料市場を当社で最も熟知している取締役ですので、会長就任はMSVに向けて強力な後押しになると考えています。加えて、独立社外取締役が75%を占める取締役会では実効性を確保しているほか、大株主としてのゴー氏も少数株主と同じ視点を共有しており、MSVの観点から真摯かつ活発な議論が行われています。



買収会社の強みとグループ支援力を組み合わせた独自のM&A成功モデルを構築

M&Aは当社グループの持続的成長における重要な要素です。現状の事業ポートフォリオに基づく高い成長を基盤としながらも、成長をさらに加速させていくために新たなパートナーの参加を積極的に検討しています。M&Aのターゲットとしては、塗料市場の過半を占め、今後も引き続き成長が見込める建築用を中軸に、工業用や塗料周辺市場も視野に入れています。また、現地で市場シェアの高い会社、強力なブランドや優秀な経営陣を有するなどのポイントはありますが、一言で言えば「MSVに資するかどうか」になります。あまり買収要件を細かく設定せず、EPSに貢献するか、将来の事業成長に寄与するかを見極めて、柔軟かつ迅速に判断していきます。例えば、A社を買収すれば将来的にB社は買えなくなるといった場合、長期的な視点でどちらがMSVに貢献するのかを見極める必要があります。従って、一つの選択肢にこだわるのではなく、他の選択肢や機会と併せながら検討し、MSV へ寄与するM&Aを実施していきます。

これまでM&Aアドバイザーとして多くの案件に携わってきた経験から、私はM&Aを成功させる条件の一つは、買収後の統合プロセス(PMI)や現地オペレーションの支援を、当初からしっかり見据えて体制を構築していることだと考えています。具体的には、人材の獲得も含めてM&Aを実施し、買収後も、各社の自律性を尊重しながらガバナンスを効かせることで、彼らのモチベーションを高く維持しています。加えて、原材料の共同調達や資金面での支援、ベストプラクティスの共有など、グループとしての強みを生かして買収企業のオペレーションを強力にバックアップし、現地市場での高い成長につなげています。

当社はこのような考え方に基づき、買収会社のコストカットだけを求めるのではなく、むしろ成長ポテンシャルを最大限に発揮させることができるため、こうした考え方に共感する会社を中心に、今後も当社グループのパートナーをグローバルに拡大することができると考えます。



「攻め」と「守り」の両視点で成長に向けた設備投資を継続

製造業にとって生産設備は、持続的成長を果たしていくために欠かせない要素の一つです。新中期経営計画の3年間をさらなる成長のための「土台」を構築する期間と位置付け、世界各地の需要を取り込むための「攻め」の投資と、自社のリスク耐性を強化する「守り」の投資をそれぞれ実行していきます。

「攻め」の投資のうち大きな案件の一つは、米国テネシー州に建設中の自動車用塗料の新工場です。今後の北米自動車用塗料生産の戦略拠点と位置付けており、米国南部やメキシコ向けの塗料生産を拡大していきます。また、アジア市場でも特に成長率が高いベトナム(ハノイ)に樹脂工場を建設し、アジア全体のサプライチェーンを強化します。さらに、中国(天津濱海)にも新しい樹脂工場を設立します。中国の新工場については、アジア合弁事業の100%化によりNIPSEAとの重複投資がなくなったことで、投資額を大幅に抑制することができました。このほか、日本でも岡山県に自動車用塗料向けの工場を、神奈川県では汎用(建築用)塗料向けの調色工場を立ち上げる予定で、いずれも高度なサプライチェーンを実現するためのスマートファクトリーとする計画です。

一方、「守り」の投資に向けては、日本国内を中心に既存設備の更新を進める方針です。日本の既存工場ではこれまで長期間にわたって設備投資を厳しく抑制してきた結果、施設・設備の老朽化が進み、製造現場で事故や生産性低下・品質阻害のリスクが増えるなど、BCP(事業継続計画)の観点からも対策が喫緊の課題となっています。老朽化した設備では、ESG対応も困難であることから、設備の刷新とともにCO2排出ネットゼロに向けた対策を実施していきます。



新たな経営体制の実力を「結果」で見せていく

新中期経営計画で掲げた2023年度の経営目標は、直近の業績進捗を踏まえれば十分達成可能です。相応のチャレンジは必要ですが、これまでどん欲に成長を追求してきた当社グループの強みを発揮することで、目標数値を上回っていきたいと考えています。

共同社長としての私の使命は、持続的な成長を確保するための投資と、正しいアジェンダの設定です。国内外のパートナー各社の自律性を確保しつつ、グループとしての一体感をさらに高め、従業員のマインドセットも一段階引き上げることで、飽くなき成長への欲求を持ち続ける企業集団を形成していきます。

共同社長という新しい体制の実力と有効性を示すためにも、まずは「結果」を出すことが肝要であると認識しています。株主・投資家の皆様のご期待に沿えるよう、当社グループの持続的成長を図り、MSVを実現してまいります。



代表執行役共同社長
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