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ウィー共同社長メッセージ

混沌とした時代を照らす「輝く道標」

取締役 代表執行役共同社長 ウィー・シューキム

取締役 代表執行役共同社長 ウィー・シューキム

PROFILE
シンガポールの名門校ラッフルズ・インスティテューション卒業後、ロンドンのインペリアル・カレッジ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジーで理学士号(航空工学)(優等学位)、スタンフォード大学でMBAを それぞれ取得。1984年、Singapore Technologies Aerospace Ltd. の前身であるSingapore Aircraft Industries Pte. Ltd. のエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、STエンジニアリング社(Singapore Technologies Engineering Ltd.)で、副最高経営責任者 兼 社長(防衛事業)を務める。また、2001年から2011年まで、シンガポールの国会議員を務めた経験もある。現在に至るまでNIPSEAグループの最高経営責任者(CEO)を務め、2021年4月28日付で代表執行役共同社長、2022年3月に取締役 代表執行役共同社長に就任。

パンデミックからエンデミックへ:事業展望の転換

世界は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から抜け出したものの、サプライチェーンの混乱やロシアによるウクライナ侵攻で、グローバルな事業環境は厳しさを増しています。インフレ率は過去40年間で最悪の水準となり、忍び寄る不況の足音が企業の収益性を脅かしています。

当社グループはこうした状況下、「アセット・アセンブラー」モデルの確立を通じて「EPSの最大化」を図り、引き続き安定した経営を続けています。堅実で慎重な経営方針のもと、2021年度のEPSは前年比7.4%増の29.41円となり、「中期経営計画(2021-2023年度)」で掲げる最終目標の達成に向けて着実に進捗しています。EPSは過去10年で239%上昇しており、 TOPIX化学業種平均や競合他社平均を上回っています(下図参照)。

共同社長への就任初年度となる2021年度は、さまざまな困難を乗り越えながら、過去最高の売上収益を達成することができました。営業利益についても、原材料価格の高騰に対応する販管費の削減と製品値上げを進めた結果、前年並みの水準を確保することができました。

成功の鍵の1つは、塗料周辺領域で成長機会を見いだし、卓越した成果につなげる「アセット・アセンブラー」モデルに基づく当社の経営力です。「アセット・アセンブラー」モデルは、買収した企業の自律性を尊重することを特色としています。事業拡大には、買収以前から事業をけん引してきた経営陣による長年の経験が不可欠であることから、当社グループは彼らの経験や自律性を重視しています。

MSVに資するM&Aに当たっては、新たな分野でありながらも既存の経験が活用できる周辺領域へ事業を拡大してきました。塗料周辺領域は豊富な成長機会があり、塗料・コーティング製品だけでなく周辺製品も含めたラインアップへ多様化することで、リスクヘッジが可能です。当社グループは既に、防水材やフロアコーティング剤、SAF(密封剤、接着剤、充填剤)製品などを取り揃えています。

製品ポートフォリオを周辺領域まで拡充・強化するに当たり、既存の塗料・コーティング事業で培った製造技術やマーケティング、流通チャネルを活用することで、市場の潜在力を最大限に引き出すことが可能です。

当社グループはこうした戦略の推進によって、市場規模が約1,740億米ドルの塗料・コーティング市場に加え、900億米ドルとされるCC(建設化学品)市場などでの周辺領域において、さらなる事業拡大を見込んでいます。

当社EPSの推移
(米ドル)

当社EPSの推移
競合他社平均(平均値)$3.06(+27%)
TOPIX化学業種平均 $1.31(+162%)
競合他社平均(中央値)$0.62(-73%)
当社 $0.27(+239%)

※1 出所:FactSet(2022年6月30日時点)、Bloomberg
※2 競合他社には、Sherwin-Williams、BASF、Asian Paints、PPG Industries、Akzo Nobel、Berger Paints、Axalta、SKSHU Paint、Kansai Paint、TOA Paint、Asia Cuanon を採用
※3 EPS(今後12ヵ月間のEPS)の為替計算について、2022年6月30日時点の数値を使用(USD/EUR=1.04545、USD/INR=0.012663、USD/CNY=0.149381、USD/JPY=0.007361、USD/THB=0.028285)


船舶用事業の立て直しに向けて

当社グループは2021年度に数多く成果を上げることができましたが、今後数年にわたる目標の達成には、立て直しが必要な事業があります。その1つが船舶用事業で、2021年度は日本と韓国を中心に約19億円の営業損失を計上しました。

一般的に海運業は好不調が激しい産業であり、関連産業もその影響を受けやすい傾向があります。当社グループはこうした事業特性を踏まえ、船舶用事業の成長可能性が高い主要市場に焦点を合わせながら、財務改善へつながる効果的な戦略を打ち立てました。

1つ目は、日本と海外では必要な専門性や文化が異なることから、日本グループのマネジメントを他の地域から切り離すことで、オペレーション機能を再編しました。

2つ目は、日本事業を見直す中で、塩谷健氏のリーダーシップのもと、工業用と船舶用事業を一体運営していく決断をしました。現在、塩谷氏は日本ペイント・インダストリアルコーティングス(NPIU)と日本ペイントマリン(NPMC)の社長を兼務しながら改革を進めており、これまでの確かな実績とリーダーシップ、経営力によって船舶用事業を前向きに変革できると確信しています。まずはコスト管理手法や営業力など、工業用事業で培ったベストプラクティスを船舶用事業に展開することにより、船舶用事業の財務改善につなげていきます。

韓国でもオペレーション機能を見直し、経営陣を刷新するとともに、事業モデルと販売モデルを再構築することで、高い収益性と安定性をもたらす取り組みを進めています。従来「新造船」の比率が高かった事業構成は、財務計画が立てやすい「修理船」の比率を高める改革を進めています。こうした韓国での改革は既に実を結びつつあり、2023年度には黒字転換する見込みです。

船舶用事業をグローバルな体制へとさらに強化するため、国単位でアプローチしていた狭い思考から、より柔軟性の高いアプローチを意識した考え方へと転換を図りながら、サプライチェーンとマーケティング活動を拡充しています。こうして新たに確立したグローバルな視点により、優れた技術と高い性能を持つ船底用塗料「アクアテラス」「FASTAR」「A-LF-Sea」「NEOGUARD」「NOA」などの主力製品を前面に押し出し、幅広い顧客から高い評価と信頼を獲得することができています。

今後はさらにマーケティング活動を強化し、グローバル・サプライチェーンを通じた市場導入を促進することで、日本や韓国以外の市場でも高い評価を獲得していきます。既にインドネシアやベトナム、フィリピン、インドなど、NIPSEAグループが主力とする市場で成果を上げつつあります。

こうした戦略を継続的に実施していくことで、船舶用事業の改善が進み、より良い方向へ転換すると確信しています。


連携・統合による顧客からの信頼獲得

中国不動産市場を巡る当社事業について、投資家の皆様からさまざまな意見をいただいており、特に足元の経済状況や地政学的な観点から、今後の成長見通しに対して懐疑的な見方も出ています。こうした状況下にあって、NIPSEAグループはさらなる成長とMSVの実現に向けて、あらゆる変化に対して柔軟に対応できる経営を続けています。中国事業がこれまで示してきた好調な業績は、激しい競争環境でも成功できる力を有していることの証です。

当社グループは、中国建築用市場で1~2級都市を中心に圧倒的な市場シェアを誇っており、今後も「GDP+α」の成長とさらなるシェア拡大を目指していきます。断続的な都市封鎖(ロックダウン)が続く中であっても、消費者は生活環境を一新(リフレッシュ)したいと考えていることから、リノベーション・DIYの両事業ともに堅調な業績を維持してきました。特にDIY事業では、環境に優しい「キッズペイント」「エコエッセンス」などの新製品に対する需要が高まっており、環境への影響、喘息やアレルギーにも配慮した塗料への注目が集まっています。

また、3~4級都市の見通しについても明るい見方をしており、適切な対策と事業戦略の策定に向けて市場動向の詳細な分析に着手しています。生活環境は都市によって異なるため、各都市の顧客・消費者ニーズに対応した戦略の策定に向けて、徹底した分析を行っています。

当社グループは中国の不動産市場に対する世論も十分に認識し、今後の動向を常に注視しています。中国チームは事業のサステナビリティを維持するため、高い適応力を生かしながら、消費者マインドに応じて臨機応変に対応する体制を整えています。

市場ニーズが変化していることから、建設業者やサービスプロバイダーとの戦略的な連携を通じて、多様な製品やサービスを顧客に提供していきます。当社グループの規模と影響力によって、「ワンストップ・ソリューション」プロバイダーとして利便性を市場に提供し、顧客ニーズに応えていきます。

当社グループの調査・研究によれば、中国では都市部への人口集中に加え、都市化の進行とともに経済活動が活発化することから、住宅需要は今後も継続的に拡大する見通しです。足元の需要低迷は一時的な現象と分析しており、中長期的な成長可能性を引き続き確信しています。


新しい経済大国

当社グループはグローバル企業として、世界中の潜在的な可能性を捉え、成長機会を見いだしながら、事業運営に取り組んでいます。例えば、インドネシアでは、マーケティング活動の推進と販売網の拡大を継続的に行うことで、高い成果を生み出してきました。

インドネシアの市場規模は約20億米ドルに上り、年率17~18%で成長しています。現政権下で新たな政策が相次いで導入されており、2021年のGDP成長率が前年比5.02%に達するなど、将来的な成長機会がますます拡大しています。こうした中、2045年までに環境に優しいスマートシティーとして新首都「ヌサンタラ」をカリマンタン島に開発する計画が発表されるなど、インドネシアでは複数の大型プロジェクトが進行しています。

当社グループはインドネシアにおいて、景気後退やインフレの影響を受ける局面で慎重に価格管理してきたことが奏功し、健全な財務体質を維持しています。これらの取り組みと良好な市場環境により、当社グループの中でも高い収益性を確保しています。

今後も競争優位性を維持するため、インドネシアでは広告宣伝活動に注力し、業界トップのブランド認知度と好感度の向上に努めています。また、コンピュータ調色システム(CCM)の増設に取り組み、CCM設置店舗を通じた全面的な製品展開を進めています。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)やテクノロジーを活用した販売チャネルへの移行など、時代の流れを十分に踏まえた取り組みを進めることで、事業を拡大していきます。テクノロジーとデータ追跡の活用によって、特にインドネシアではECチャネルに大きな需要があることが分かりました。インドネシアは主要な島々で構成され、小さな都市が点在し、実店舗を訪れることが容易でないためと考えられます。当社グループは、オンラインでの購入や問い合わせを増やすため、新たなチャネルの設置を進めているほか、物流拠点や倉庫を増設するとともに、営業チームを強化することで、インドネシア事業の地理的範囲の拡大にも取り組んでおり、顧客だけでなく、販売店や代理店をより効果的に支援していきます。

また、インドネシアでも他の地域と同様に製品の拡充に取り組んでいます。塗料のみならず、その周辺領域でも需要の強い製品は多いことから、今後の拡販に向けて大きな可能性を秘めており、インドネシア事業は引き続き好調が続く見通しです。


周辺領域を通じた事業の加速

不確実性が高い時代にあって、全ての業種が多くの課題に直面する中、当社グループは独自の「アセット・アセンブラー」モデルを引き続き活用することによって、今後も課題に打ち勝ちながら良好な成果を上げることができると考えています。

これまで実施してきた複数のM&Aにより、当社グループは確実にスケールメリットによる恩恵を受けています。例えば、マレーシアでは、「Selleys」ブランドの導入やVital Technicalの買収によって、塗料周辺事業を拡充することができました。当社グループはプレミアムブランド「Selleys」を通じて、これまでも主要小売業者などの顧客層へ画期的なSAF製品を提供してきましたが、マレーシア以外においても、高品質でありながらも低価格であることが求められるNIPSEAグループが主力とする市場向けに新たな製品ラインアップを提供しました。

こうした成果は、DuluxGroupとBetek Boyaが持つ専門知識をNIPSEAチームへ導入することで実現しています。CromologyとJUBの買収については、建築用事業の拡充に寄与するだけでなく、欧州地域における販売網を飛躍的に拡大させています。

当社グループは将来を見据えて、塗料周辺領域や塗料を補完する事業で多くの成長機会を見いだしていきます。こうした取り組みはさらなる成長に不可欠な原動力であり、業績向上を加速させるために必要と考えています。


自律的パートナーシップに向けた取り組みの加速

当社グループは「アセット・アセンブラー」モデルを巧みに実行することで、MSVを実現 していきます。しかしながら、「アセット・アセンブラー」モデルが真に効果を発揮するためには、自律的な事業運営と成長を維持するよう各パートナー会社に絶えず働き掛け、各パートナー会社が持つ強みを生かす体制を提供することが重要です。各パートナー会社は「アセット・アセンブラー」モデルのメリットを享受しており、自律・分散型経営によって当社グループは一段と高い目標を確実に達成できるようになると考えています。

自らが多様性を受け入れ、全ての従業員に対しても同様の働き掛けを実践しない限り、チームワークと従業員の潜在能力を引き出すことはできません。このため、当社グループは学習意欲と向上意欲を常に持ちながら、有益な事例やメリット、成功例などをチーム内で共有することを推奨しています。

共同社長に就任してから1年、予想不能な出来事に直面しながらも、中計最終年の売上収益目標を1年前倒しで達成できる見通しであり、営業利益目標についても引き続き堅持できることを誇りに思います。今後も売上成長とマージン改善を通じて、目標の達成に向けて取り組んでいきます。

2022年08月31日
取締役 代表執行役共同社長
取締役 代表執行役共同社長 ウィー・シューキム サイン画像

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