2023年12月期 第2四半期決算 質疑応答要旨(中国引当金の補足説明を追記)

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※中国引当金に関して補足説明(BofA証券株式会社 榎本尚志氏 Q1内A2箇所)を追記しています。

  • 2023年12月期 第2四半期決算 質疑応答要旨(中国引当金の補足説明を追記)
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質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏

  • A1NIPSEA中国の第1四半期は、昨年下期まで続いていたコロナ規制におけるロックダウンが解除され物流が再開するなど、経済活動が進展しました。その結果、昨年からのペントアップデマンド(繰り越し需要)の発生や、原材料価格の低下もあり、好調な決算でした。したがって、第2四半期が悪化しているのではなく、第1四半期決算が想定以上だったということです。なお、第2四半期の営業利益率は、実質ベースで前年同期の7.6%から9.4%へ改善しています。

    第2四半期については、4月は好調だった一方で、5-6月は景況感が悪化したことから、エコノミー製品などの一部製品で多少値下げをしてでも、シェア拡大を優先しました。また、前年同期がロックダウンの影響によって特級都市の需要が減少したこともあり、その反動増はありましたが、3~6級都市の売上伸長による製品ミックスの悪化の影響がありました。加えて、TUBでは法的措置を講じることで売掛債権を回収するケースも出てきています。当社の基準では、法的措置を講じた場合は債権の100%近くを引当金として計上するため、マージンに影響を与えています。

    このように足元の状況をチャンスと捉え、マージンが若干低下してでも、数量増加やシェア獲得に注力するタイミングだと考えています。しかし、前年同期比ではマージンはしっかり改善しています。

    A2中国の引当金に関して、以下を補足します。

    最初に、不動産ディベロッパーとの取引を含むTUBビジネスは、現在連結売上の約6%程度であり、TUBの変動が当社の業績全体に大きな影響を与えるものではないことを申し上げておきます。

    ※2022年と比較して、TUCの伸長に伴いTUBの比率は相対的に低下。イメージとしてはNIPSEA中国売上(連結の約35%)× 中国における汎用事業売上(中国の約80%)× 中国汎用におけるTUB売上(汎用の約20~25%)

    さらに、TUBにおいて、不動産ディベロッパーとそれ以外の取引先(ディストリビューター含む)との構成比は概ね40:60であり、ディストリビューター等向け債権は基本的に回収に問題はありません。

    大手民間ディベロッパー向け債権については、昨年約150億円を引き当てましたが、昨年は限定的な顧客群(10社強)に対するものであり、今年に入って当該顧客群への積み増しはありません。また2022年後半から今年にかけて潜在的に回収懸念のある先については順次現金取引に切り替えました。

    当社がこれまでフォーカスしてきたディベロッパーは100社以上に上り、昨今の情勢により現金取引に切り替える前の売上債権が遅滞しているものが増加し始めました。

    これらの過去(現金取引切り替え前)の遅滞売上債権に対しては法的措置で回収を進めるケースが増加しており、当社の基準では、法的措置を講じた場合は債権の75~100%を引当金として計上するルールのため、これが今回の引当金に該当し、マージンに影響を与えています。なお、法的措置におけるこれまでの回収率は50%強の実績ですので、引当水準としては十分であると考えています。

    具体的な引当金による影響については、通年のNIPSEA中国連結売上の約1%強であり、下期よりも上期が多く、四半期別では第2四半期が一番多い計上額(同四半期売上の2%弱)となります。基本的には現金取引に切り替える前の債権ですので、引当対象となる売上債権は下期から2024年にかけて漸減すると見込んでいます。

    なお、NIPSEA中国の第2四半期における実質ベースの営業利益率は9.4%ですが、今回の法的措置に伴う引当金を控除した場合、製品ミックスのエコノミー割合増加(3~6級都市のより高い成長含む)や一部エコノミー製品の値下げを含めても営業利益率は11%強となります。

    今後こうした法的措置に伴う引当金の計上の割合は第2四半期をピークに漸減傾向に向かうと予想しており、またシェア向上を優先するとは申し上げましたが、利益を度外視して製品値下げなどを実施するわけではありません。一部中国のマージンが悪化の一途を辿るかのような誤解がありましたので、少し補足させていただきます。

  • A2TUCの業績予想の引き上げの中には、シェア拡大も含まれています。

    一過性要因+56億円の内訳は補助金と不動産売却益のみであり、法的措置に伴う引当金の計上は含まれていません。

  • A3具体的な金額の開示は、差し控えさせていただきます。

    ※上記補足説明(BofA証券株式会社 榎本尚志氏 Q1内A2箇所)参照

質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏

  • A1第2四半期の営業利益率が大幅に改善した要因は複数あり、自動車用・船舶用では数量増加と製品値上げの効果がともに貢献しています。汎用・工業用では、数量は減少したものの、製品値上げの効果が出ています。加えて、2022年に実施した希望退職制度「ネクストキャリアプラン」なども含め、収益性の改善に向けた各種取り組みを進めてきており、その積み重ねの成果が見え始めている部分もあります。

    営業利益率10%はあくまで通過点ではあるものの、2023年通期で10%を超えるにはまだハードルが高く、引き続き収益性改善に向けた取り組みを進めていきます。また、汎用事業では引き続き製品値上げを実施しており、原材料価格の動向次第ではさらに改善できる余地があると考えており、将来的には2017-2018年の収益レベルを目指していきます。

    第3四半期以降も10%を超えるかについては、原材料価格などの動向次第であるものの、通期の営業利益率は、前年比+2ポイント以上の改善とした2月時点の予想をさらに上回ると見通しています。

  • A2現在の原材料価格が大きく変化しなければ、一部の事業においてまだ製品値上げを継続していることもあり、価格差が縮小する可能性は低いと考えています。しかし、汎用や工業用における販売数量の回復度合いによって、マージン改善の状況も変わってきます。

質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏

  • A15-6月に少し伸び悩んだのは基本的にTUBであり、TUCは月別推移の変化が顕著だったわけではありません。ただし、全般には景気は4月に比べて5-6月が不調であったのが実感です。どちらかと言えば、TUBの方が少し厳しかった認識であり、都市部・地方部で特色の差があるわけではありません。先ほど申し上げた通り、TUCは前年同期からの反動増もあり比較的好調だったのに加え、プレミアム製品を値下げしているわけではありません。エコノミー製品で一部値下げをしている一方、3~6級都市ではシェアを拡大しており、数量はかなり成長しています。

    TUBでは、これまでトップ30~100の大手ディベロッパーとの連携を深めることで、彼らの新築市場でのシェア拡大に比例して当社のシェアを伸ばしてきました。しかし、現在では大手ディベロッパーとの取引を非常に精選しており、結果として代金引換取引を中心に進めるとともに、ディストリビューターなどの顧客層の拡大を進めています。

    そうした中で、例えば、病院や学校などの非住宅案件やディストリビューター向けの債権は基本的に問題ないのですが、一方で一部ディベロッパー向けは現金取引に切り替える以前の債権の支払いが遅れるケースが発生しています。回収を早めるために法的措置を講じたことで通常の引当金として計上しています。一過性扱いで金額を示すのは誤解を生むため開示しませんが、通常のビジネスの範囲内で引当金額が想定より多くなっているため、あえて言及し、マージン低下の一因にもなっているとご説明しています。

    ※上記補足説明(BofA証券株式会社 榎本尚志氏 Q1内A2箇所)参照

  • A2需要を喚起するため、競合に打ち勝つために一部の製品値下げを実施しています。あらゆる製品で値下げしているわけではないものの、3~6級都市の一部の製品については積極的なプロモーションを進めており、これまでより少し安く販売することで競合に打ち勝っていくことを目指しています。結果として販売数量は伸びており、根強い需要はある中で、今この機会に3~6級都市という巨大市場でのシェア拡大を狙いにいくべきと考えています。現時点ではマージンよりもシェア拡大を重視して取り組んでいますが、赤字ではなく利益は出ています。

  • A3その考え方に変化はないものの、以前にもお伝えした通り、営業利益率15%ありきではビジネス機会を失いかねないと考えています。まずはシェア拡大し、競合他社を引き離した上で、しっかりマージンを確保していくのが当社の基本的な戦略になります。過去に営業利益率15%の時期もあったので、全力でシェア向上だけを目指すというわけではなく、市場の状況に応じてシェアとマージンの優先度を変えています。そうした中、3~6級都市は明らかに成長が見込まれる市場のため、全体のマージンに過剰に固執することなくシェア拡大に取り組んでいます。NIPSEAの柔軟性や積極性はこうした点にも表れています。

質問者:CLSA 証券株式会社 張一帆氏

  • A1足元の原材料価格は安定しており、今後も現在の水準が続く前提で見通しを立てています。そのため、日本では一部の事業で製品値上げを継続するものの、世界的には今後も積極的に製品を値上げする気運ではないと考えています。そうした中、NIPSEA中国は下期もシェア拡大に注力していくため、販売数量は伸長するものの製品ミックスの悪化によりマージンが若干低下することも想定しています。NIPSEA中国以外の地域では、引き続きシェア拡大とマージン改善を目指しています。

  • A2当社では流通在庫が増加している認識はなく、特に大きな懸念をしていません。ただし、景況感の悪化に伴い需要が低下する懸念もある中、需要喚起や競合他社への流出を防ぐために値引きやインセンティブ施策を実施している側面はあります。

    当社は特級・1~2級都市でトップシェアを確保していますが、現状、競合他社の追い上げが非常に激しいわけではありません。むしろ、3~6級都市において競合他社に打ち勝つべく、積極的な拡販対策を実施する必要があると考えています。 全体的に特級・1~2級都市では、コロナ禍にあった2022年との比較では大幅に回復・成長しています。元より特級・1~2級都市は塗り替え需要が中心であり、景況感の悪化や引っ越しの減少に伴い塗り替え需要が先送りされる可能性はあるものの、基本的な対策は実施済みです。一方で、3~6級都市は新築市場が依然として好調で、当社としてもさらなる市場拡大を見据えて、積極的な対応を進めています。

    特級・1~2級都市と3~6級都市において、それぞれの需要に基づく戦略の違いはあるものの、需要動向では大きな変化はないと考えています。

  • A3特級・1~2級都市のシェア拡大も3-5年程度続いており、当社としては常に全方位体制で積極的な対応を進めていきます。

質問者:東洋経済新報社 山田雄大氏

  • A1現在、2024年以降の次期中期経営計画について社内で議論しています。詳細は差し控えますが、どの地域も継続してさらなる高みを目指しています。

    例えば、豪州のDuluxGroup社は既に50%のシェアを有しているものの、さらなる成長、シェア拡大に向けた議論をしています。直近の景況感が厳しい欧州では、Cromology社のプラットフォームをさらにもう一段高めていくための手法などを巡って、共同社長が取締役の一員として参画しつつ、DuluxGroup社内で検討しています。

    NIPSEAは、既にシンガポールで75%のシェア、マレーシアで45%のシェアを有しており、高シェアであるがゆえのハードルは多少あるものの、引き続きシェアを維持・向上させていきます。

    日本は、直近数年間は業績が芳しくなかった反省のもと、各事業が個別最適で対応していたことを日本グループ全体で共通化できるかなどの議論を進めています。こうした取り組みを通じてマージン改善やシェア向上、売上増加につなげていくため、成長の余地は依然として大きいと認識しています。

    マージンについては、現状が最適な水準であるとは考えていません。原材料費率は市況動向の影響は受けるものの、継続的な製品価格の見直しとコスト削減はKPIの1つでもあり、シェア向上とマージン改善の両輪で成長を目指していきます。オーガニック成長を継続した上で、オペレーティング・レバレッジの活用による限界利益の貢献によってマージンを拡大していきます。

    また、「アセット・アセンブラー」モデルのもとでM&Aを実施していくに当たり、引き続き日本円は海外の通貨に比べて相対的に金利が安いため、低い資金調達コストの恩恵を享受できます。自律性と説明責任を組み合わせた経営モデルのもと、買収した企業の自律的な成長を促すという当社の考え方に共鳴する企業が増加しており、M&Aの積み上げにも引き続き注力していきます。

    2024年以降もオーガニックとインオーガニックの両輪で成長を目指しており、当社の成長に上限はありません。

  • A2何か特定のリスクを懸念しているわけではありません。常に健全な警戒心を持ちながら、例えばM&Aを実施する場合でも「本当に大丈夫なのか?」という意識を持ち検討しています。

    皆さまからはとりわけ「中国リスク」を指摘されがちですが、当社のビジネスは基本的に地産地消です。製造業でイメージされるような、世界経済から中国が締め出されると、たちまち世界中の全製品の流通が止まるようなビジネスモデルではありません。中国に全く依存していないわけではないものの、NIPSEA中国は地産地消をベースにキャッシュ・フローを十分に創出した上で、そこから配当や投資も賄っています。当社のパートナー会社は、外部資本を必要とせずとも、それぞれが自律的に成長できることが強みです。

    敢えて申し上げれば、優秀な人材が我々の強みの源泉の一つですので、その流出リスクや現地の経営陣との間で軋轢が生じるリスクには常に留意しています。しかし、パートナー会社の自律性を重んじる文化のもと、当社としては現地の優秀な経営陣を適切に動機付けしながら自律的な成長を促し、グローバルなプラットフォームにつなげていくなどの支援を行っており、人材に関するリスクが大きいとは認識していません。むしろ、そうしたリスクの低いアセットを積み上げていくことを当社の強みとしており、リスクをあまり懸念しなくて良い経営モデルを作り上げてきた自負があります。リスクをなるべく抑えながら、収益性を上げていくのが当社の姿です。

質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏

  • A1地域ごとの強弱感や方向感に関しては、説明資料P25-26の右側で記載している、2月予想との比較の通りです。

    NIPSEA中国の売上収益については、TUCで上振れ、TUBで下振れ、自動車用はやや厳しく見込んでおり、NIPSEA中国全体では2月予想並みと見通しています。

    日本の売上収益は2月予想並みと見通す一方、自動車用の回復もあり、営業利益率は2月予想からの上振れを見込んでいます。

    NIPSEA中国以外では、全体でやや上振れる見込みです。マレーシア、シンガポール、タイの3グループは、売上収益の上振れと原材料費率の低下によって、マージンが改善する見通しです。インドネシアは、2022年下期から2023年初にかけて懸念していた状況に比べると回復傾向にあります。トルコは、第2四半期は好調だったものの、通年では超インフレ会計による影響額の予測が難しいため、上振れ要因としては見込んでいません。

    DuluxGroupセグメントについては、ほぼ2月予想並みと見込んでおり、米州は汎用の下振れを自動車用の上振れで補い、米州全体では2月予想並みと見通しています。

  • A2先ほどご説明した中国における補助金などの一過性要因+56億円は通期でも押し上げ要因として残ります。一方、豪州は下期に見込む一過性費用c.-15億円により、上期の一過性要因によるプラス効果がほとんど相殺されます。

    下期の営業利益率は一過性要因を控除した場合でも、上期よりもやや悪化する見通しとなるものの、必達目標として示ししています。

    NPT社は下期から新規連結されるため、プラス効果はあるもののM&Aなどの初期費用で打ち消されるため、通期での利益貢献はほぼなくなります。

  • A3NIPSEA中国の一過性要因+ 56億円は、営業利益予想修正の+180億円に含まれており、「数量成長と原材料費率の低下などによるc.+90億円」と「2月想定為替レート比で円安に推移したことなどによるc.+90億円」の両方に含まれています。

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