1. はじめに
皆様こんにちは。取締役会議長の中村です。
ご承知のように、当社には大株主が存在します。したがって、少数株主の利益を阻害しないガバナンスの徹底や取締役会の運営が不可欠です。
本日は、現在のガバナンス体制に至る経緯と実際の取締役会の運営状況などをご説明し、「少数株主との利益相反が存在しえない「株主価値最大化(MSV)」の追求が当社の全ての意思決定の判断基準」であることをご理解いただきたいと思います。
2. 現在9人の取締役がガバナンスを担う

当社の取締役会は9人で構成されています。説明資料の左端から共同社長の若月、ウィー。当社の株式58.7%を保有するウットラムグループの代表であり、当社取締役会長のゴー。日本を代表する企業法務の第一人者である原指名委員長、グローバル塗料業界の重鎮であるカービー、元シンガポール国会議員でありプライベート・エクイティ・ビジネスに造詣の深いリム報酬委員長、公認会計士の経験をもとにESG・サステナビリティのマネジメントに長けた三橋監査委員長、グローバルエレクトロニクス企業などでの経験をもとにITによるビジネスモデルの変革を提唱する諸星、グローバル投資銀行のバックグラウンドを有する筆頭独立社外取締役の中村です。
皆グローバルに展開するビジネスの経営経験がある、とりわけ人的資本のマネジメントの経験が厚い面々です。
3. ガバナンスの根底はMSV
この9人が現在のガバナンスを担うに至った経緯は、2018年のウットラムグループによる株主提案にまでさかのぼります。
4. ガバナンス改革の歴史

ゴーが主張するMSVに賛同する5人の独立社外取締役が就任しました。実際、2017年前半に私が初めてゴーに会ったとき、彼は握手もそこそこにMSVについて語り始め、MSVこそが上場会社の唯一の使命と主張しました。投資銀行業務に従事していた私にとっては、彼の考え方に完全に賛同するのに5分とかかりませんでした。MSV、すなわち、株主価値の最大化とは、全てのステークホルダーへの責務を果たした上で、残存する価値を最大化し、株主に報いることです。これら責務は法的な契約だけでなく、社会的、倫理的責任も含まれており、サステナビリティの概念も包含されています。
改革の歴史に戻りますが、その後、DuluxGroup、Betek Boyaなどの買収を進め、資本効率やEPSの向上を進めます。さらに、外部からCEOを招聘し、2021年にはウットラムグループとのアジア合弁事業の100%化、インドネシアの塗料ビジネスの買収を実現し、大株主であるウットラムグループとの利益相反を完全に解消しました。その後、ビジネスドメインを「Paint+」、「Paint++」に広げ、そしてさらに広い領域へと「アセット・アセンブラー」モデルを主導する現在の共同社長による執行体制に至っています。その間、取締役会のガバナンス体制を独立社外取締役が過半数を占める、現在最も先進的な指名委員会等設置会社に移行しました。2018年以降、取締役は8人が退任し、7人が新しく就任しています。当社の唯一のミッションとしてのMSVをガバナンスの根底に置き、一貫して追求してきた結果です。
5. MSVの追求

すなわち、2018年の取締役会、ガバナンス改革の時点から、少数株主との利益相反が存在しえないMSVの追求が当社の全ての意思決定の判断基準なのです。
6. 取締役会の実際

2024年度の取締役会は、3月末の株主総会後と9月末に大阪・東京本社に全員が集まり、ブレインストーミングを含めて2日間の戦略議論に注力します。また、この2回に加え、四半期決算ごとの5、8、11月、翌年2月の計6回開催します。重要な決定事項を除く業務執行の大部分を執行に権限委譲しています。取締役会に加え、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3つの委員会の委員長や過半数を独立社外取締役で構成し、執行のモニタリングに努めています。
指名委員会は取締役候補の選定と、執行役の選定を取締役会に答申し、報酬委員会は取締役の報酬と、各執行役のパフォーマンスを指名委員会とともに評価の上、報酬を決定します。監査委員会は会計監査人の任命はもとより、各取締役・執行役がその責務を果たしているか、内部統制システムのデザインとその有効性の監視に努めています。
取締役会と並行して独立社外取締役会を開き、取締役会の実効性の向上に努めています。具体的には、各ビジネスグループの主要な経営陣とのダイレクトな意見交換を通じて、現場のビジネス、リスクマネジメント、人材育成の実態などの把握に努めています。最終的には、共同社長をはじめとする執行役の評価の材料としています。
それぞれの取締役がお互いに意見交換をタイムリーに行うと同時に、年2回のNIPSEA GMMへの出席や、欧州を含むDuluxGroupのマネジメントとの定期的なミーティングを持つことをはじめ、各ビジネスグループの経営陣とも個別のコミュニケーションを維持しています。当社の取締役会は、実際の会議のみならず、常に「ON」の状態です。
11月の取締役会で「取締役会の実効性評価」の結果を議論する機会がありました。「概ね実効性が確保されている」ことが確認されましたが、2025年に向けたさらなる実効性の向上のために、
- 成長戦略議論の充実、執行による成長戦略の具現化に向け、さらなる戦略議論の機会と質の向上へ
- 後継者計画の充実、よりサステナブルな経営体制に向けた人材発掘・開発計画の検討・策定へ
- 「Audit on Audit」体制のさらなる高度化、「アセット・アセンブラー」モデルに相応しい監査体制へ
の3つを課題としました。
とりわけ3番目の「Audit on Audit」体制のさらなる高度化については、従来からの「自律・分散型経営」を執行する上で、お互いの信頼をベースにしたリスクマネジメントにさらなる高度化を図ることが求められましょう。
7. 「アセット・アセンブラー」モデルによるMSVの追求

以上、駆け足ではありましたが、当社のガバナンスを担う取締役、その改革の推移と現在の取締役会の実際の運営状況をご説明しました。そして、その根底には常にMSVの追求があります。
若月、ウィーの共同社長は、いわば2人でCEO、COO、CFOの3役を果たしています。彼らは信用とアカウンタビリティに裏打ちされた「自律・分散型経営」をベースに、既存ビジネスによるEPSの伸びと、低いファンディングコストのメリットを生かしてローコストでグッドリターンを生み出す優良な買収を通じたEPSの積み上げ、の両輪でMSV を追求する「アセット・アセンブラー」モデルを実行しています。
10月に発表したAOCの買収は、当社を新たなステージに引き上げるアセットの積み上げになりましょう。MSVの追求にはさらなるリスクテイクが不可欠です。当社の取り得るべきリスクは、既存ビジネス・アセットの価値向上に向けた施策に伴うリスク、新たなビジネス・アセットの積み上げに伴うリスク、資本市場からの資金調達を含むバランスシート・マネジメントに関わるリスク、の3つに集約されましょう。監督側である取締役会は、当社の将来の姿を執行とともに作り上げていく使命があります。そのためには、現状の問題解決もさることながら、よりサステナブルな飛躍に向けた成長戦略議論へ取締役会はさらに傾注してきています。長期的なロードマップに関するブレインストーミング、その実現のための施策の選択肢を検討するオフサイトミーティングなど、執行との意見の擦り合わせを繰り返し行い、彼らにタイムリーかつ適切なリスクを果敢に取り続けられるよう促しています。
当社は「アセット・アセンブラー」として、少数株主と共通の目標であるMSVの追求に邁進してまいります。
アナリストの皆様、投資家の皆様には、当社のガバナンスの実態をよりいっそうご理解、ご支援いただきますよう、お願いいたします。