財務・M&A戦略
M&A戦略
「アセット・アセンブラー」モデルの競争優位性を生かし、M&Aの機会を積極的に模索することで、EPSの積み上げスピードをさらに加速していきます。
M&Aを成長戦略の柱の1つに位置付け
当社は、低リスクで安全なM&Aを成長戦略の柱の1つとして位置付けています。既存事業で生み出したキャッシュを、MSV(株主価値最大化)に貢献する良質な資産へ振り向けることで、インオーガニックな成長につなげています。
M&Aそのものを目的化せず、買収価格の規律を徹底しながら、買収後は各パートナー会社の自律性を尊重し、その潜在力を最大限に引き出します。オーガニック成長とM&Aを両輪として、持続的なEPSの複利成長を目指します。
M&Aにおける2つの柱
当社のM&Aは、パートナー会社が主体となる「ボルトオン型」と、持株会社である日本ペイントホールディングスが推進する「アセット取得型」の2つで構成されています。
ボルトオン型
既存事業の拡大とシナジー創出を主眼とし、各パートナー会社が主体となって推進します。一定規模以下の案件は各パートナー会社で決議する仕組みとし、迅速な意思決定とオペレーションを可能にしています。
- シナジー創出を最優先に追求
- 既存事業の拡大、近隣地域への展開
- 新規事業分野への参入や業務改善の機会
- 定量化可能かつ実現可能なシナジーのみを評価に反映
アセット取得型
比較的大型の案件を対象とし、シナジー効果がなくても十分に魅力あるリターンが見込める案件を追求します。経営のエゴを排除するため、バリエーションはシナジーを見込まずに算定しますが、買収後はグループのプラットフォームを活用し、シナジーを積極的に追求します。
- 大型のターゲットを対象
- シナジーなしでも魅力的なリターンを確保
- 高いバリエーションをシナジーで正当化しない
- 買収後はグループ内連携による成長機会を追求
厳格な買収基準と当社の強み
買収対象は、従来の「ノーリミット」から対象をより具体化し、現在は化学領域を主たる対象としています。手堅い成長が見込まれる市場において、競争優位性を有し、当社グループ傘下でさらなる成長が期待できる会社を厳選します。
買収基準・対象
- 手堅い成長が見込まれる市場
- 優れたマネジメント、マージン、キャッシュ・フローなどの競争優位性
- 初年度からEPSへプラス貢献
- 約3年以内にROICがWACCを上回るバリエーション
- 当社グループへの持続的な貢献
当社の4つの強み
- 良質なターゲットを精緻に見極める力
- 買収後も自律性とアカウンタビリティを維持する経営モデル
- グループ入りした人材のモチベーションを維持・向上させる仕組み
- 低ファンディングコストを積極的に活用できる財務基盤
- 新たなM&A機会を生み出すトラックレコードとレピュテーション
-
当社のM&Aは、欧米型の単なるコストカット・モデルとは一線を画しています。対象会社の歴史、ブランド、経営陣を最大限に尊重し、優秀な現地経営陣に権限と責任を委譲する「自律・分散型経営」を基本としています。
こうした実績と評判は、新たなM&A機会の創出につながっています。成長を志向する現地企業のCEOや、次世代への橋渡しを模索する非上場会社のオーナーから、当社グループへの参画に関心が寄せられる事例も増えています。今後も、MSVに貢献するローリスク・グッドリターンを確保できる案件を継続的に実行していきます。
M&Aのトラックレコード
当社は2019年以降、継続的に企業買収を実施しています。買収した会社の多くは、当社グループ入り後も売上収益、営業利益、市場シェアを着実に拡大しており、M&AがEPSの積み上げに継続的に貢献しています。
M&A件数推移
| 年 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 4 | 4 | 8 | 9 | 5 | 2 | 6 |
※各地域・事業における小規模な事業買収(未公表)も含む
調整後営業利益におけるM&A貢献
| 年 | 調整後営業利益 合計(億円) |
うちM&A貢献 (億円) |
合計成長率 (YoY) |
M&A貢献度 | 当年買収企業 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | 873 | — | — | — | — |
| 2019 | 959 | 86 | 11.1% | 10.0% | DuluxGroup、Betek Boya |
| 2020 | 925 | 136 | –3.6% | 14.1% | — |
| 2021 | 1,013 | 140 | 9.6% | 15.2% | PT Nipsea、Vital Technical |
| 2022 | 1,408 | 82 | 39.0% | 8.1% | Cromology、JUB |
| 2023 | 1,815 | 13 | 28.9% | 0.9% | NPT |
| 2024 | 1,996 | 64 | 9.9% | 3.5% | Alina、NPI |
| 2025※3 | 2,742 | 553 | 37.4% | 27.7% | AOC |
- ※1 M&A貢献は、買収後1年間の損益を集計
- ※2 2025年は、AOCのPPA確定に伴う遡及修正後のプロフォーマ値
成長を加速する4つの事例
Case 1 DuluxGroupのボルトオンM&A加速
DuluxGroupは、当社グループ参画後の6年間でCromologyやJUBを含む24件の買収を実現しました。豪州証券取引所への上場時代の9年間における9件から大きく加速しています。当社が買収を強制するのではなく、DuluxGroup自身の信念と意思を起点に、合理性と規律を重視した議論を通じて支援しています。
2010~2019年:買収9件・約2億5,000万豪ドル
2019~2025年:買収24件・約24億豪ドル
Case 2 NIPSEAグループにおけるSAF事業の成長加速
DuluxGroupのSAF(密封剤・接着剤・充填剤)事業の「Selleys」ブランドを、広範な流通網を持つNIPSEAグループへ移管したことで、アジアでの成長が加速しました。2021年のVital Technical買収にもつながるなど、パートナー会社間の対話と合理的判断が新たな成長を後押ししています。
2019年を100とした2025年の売上指数:914(約9.1倍)
Case 3 AOCとの関係深化
2025年3月に買収を完了したAOCの経営陣が同年9月に来日し、共同社長やパートナー会社の経営陣との会議を開催しました。AOCの高収益を支えるビジネスシステムを共有し、各社から具体的な質問やレクチャーの要望が寄せられるなど、グループ連携と協力に向けた第一歩となりました。
Case 4 NIPSEAグループの連携加速
NIPSEAグループは2026年4月、19の地域が参加する「LFG Excellence Award」を開催しました。優れた取り組みを称え、パートナー会社間の知見共有と連携を強化することで、グループ全体の成長をさらに加速させています。
主要パートナー会社のトラックレコード
2014年以降に当社グループ入りした主要パートナー会社について、買収時からの成長や市場ポジションを一覧でご紹介します。各社の自律性を尊重しながら、グループの経営資源や知見を活用することで、高成長国・成熟国の双方で成長を積み上げています。
※売上収益などの実績は、2025年実績に更新しています。各社のより詳細な業績・市場情報は、ページ下部の「アセット運用報告」をご覧ください。
Dunn-Edwards
- 2018年
446億円 - 2025年
723億円
+68.2%
DuluxGroup
その他周辺事業
- 2019年
1,349億円 - 2025年
2,512億円
+86%
Betek Boya
その他周辺事業
- 2019年
288億円 - 2025年
948億円
+223%
PT Nipsea
自動車用塗料など
- 2020年
303億円 - 2025年
659億円
+117%
NIPSEAグループ
(2014年連結化、
2021年100%化)
自動車用塗料・
工業用塗料など
- 2014年
2,365億円 - 2025年
8,875億円
+275.3%
Vital Technical
中国自動車用
連結子会社5社
Cromology
No.2(フランス、ポルトガル)
- 2021年
1,091億円 - 2025年
1,539億円(DGL欧州合算)
+41%(DGL欧州合算)
JUB
その他周辺事業
- 2021年
1,091億円 - 2025年
1,539億円(DGL欧州合算)
+41%(DGL欧州合算)
NPT
- 2021年
1,091億円 - 2025年
1,539億円(DGL欧州合算)
+41%(DGL欧州合算)
Alina
その他周辺事業
- 2024年
258億円 - 2025年
243億円
-6%

NPI
工業用塗料など
(タミルナドゥ州、カルナータカ州)
- 2024年
90億円(2ヵ月分) - 2025年
494億円
-
NPI・BNPA合算

BNPA
AOC
ター
(北米市場)
リーディングポジション
(より細分化された欧州市場)
- 2025年
1,573億円(10ヵ月分)
-
※買収時と現在では、会計基準が異なる場合、市場シェア算出に関わる各種前提条件が異なる場合があり、買収時比の値は概算値
※市場シェアはNPHD推計
※Dunn-Edwardsの買収初年度(2017年)は10ヵ月分の業績のため、2018年で比較
※DGL(欧州)の2021年実績はプロフォーマ値(Cromology・JUBの合算値)で、為替レートは1EUR=138.5円を適用。2025年実績はCromology・JUB・NPTを含むDGL(欧州)の合算値
※NPI・BNPAの2024年実績は買収後2ヵ月分、2025年実績は両社の合算値
※AOCの2025年実績は買収後10ヵ月分
※スペシャリティ・フォーミュレーターとは、建築物・インフラ設備・輸送機器・船舶等で使用されるCASE(Coatings, Adhesives, Sealants and Elastomers:コーティング剤・接着剤・密封剤・エラストマー)や着色剤、複合材料等のコーティング周辺製品向けに、不飽和ポリエステルやビニルエステル等の配合設計・製造・販売を行う企業
各アセット会社の最新実績を詳しく見る
買収時からの成長、直近の業績、市場ポジションなどは「アセット運用報告」に掲載しています。