ウィー共同社⻑メッセージ

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逆⾵下でも堅調な成⻑を実現

「中期経営計画(2021-2023年度)」がスタートした2021年以降、当社グループを取り巻く環境は大きく変化したものの、当社グループはこうした難局を冷静な対応で乗り越え、2022年は売上収益・営業利益ともに過去最高を達成することができました。世界がどのように変化しようとも、資本市場にコミットした売上収益や営業利益などの計画を、当社は必ず達成していきます。今後さまざまな困難に直面したとしても、高い能力を持つ意欲的な仲間たちとともに、新たに挑戦していく風土を醸成し続けることが、将来の当社グループの成功につながると確信しています。

当社グループは、「アセット・アセンブラー」モデルを着実に実行し、引き続き堅調な成長を維持しています。「アセット・アセンブラー」モデルのもと、それぞれが非常に強固な事業基盤を持つ、自律的な事業グループであるパートナー会社が、当社グループの豊富な資金力を活用しながら、飽くなき成長を目指しています。各パートナー会社は、中核事業の成長だけでなく、中長期的に周辺分野へ事業領域を拡大することで、成長の機会を追求しています。また、塗料周辺分野でも魅力的な買収候補先が見つかれば、当社グループは周辺分野の企業もパートナーとして積極的に迎え入れ、より幅広い分野で競争力のあるアセットを積み上げていく方針です。

例えば、2019年に当社グループへ加わったDuluxGroupは、当社グループの豊富な資金力を生かして成長を加速し、連結業績に貢献している好事例です。この4年間で中核事業である塗料・コーティングのみならず、SAF(密封剤、接着剤、充填剤)やガーデニング用塗料分野での買収を繰り返し、太平洋地域での存在感を高めてきました。欧州地域においては、2021年までの複数の買収に加え、2022年にフランスのCromology、スロベニアのJUBへ戦略的なM&Aを実施したほか、2023年にはイタリアのNPTを買収するなどにより、事業基盤を大幅に拡大しています。これらの買収先企業は、DuluxGroupの専門知識やノウハウ・経験、技術力、豊富な製品ラインアップを活用しながら、持続的な価値を創造しています。加えて、DuluxGroup以外のパートナー会社も、これら買収先企業の技術や製品を取り入れることで、収益を拡大することが可能です。

また、DuluxGroupを買収したことで、NIPSEAグループはDuluxGroupの保有する「Selleys」ブランド製品を既存の販売網を通じて積極的に販売するとともに、マレーシアのVital TechnicalやCMIを買収したことと併せて、SAF事業に自信を持って参入することができました。このように、各パートナー会社は当社グループの資金力やリソースの活用によって着実な成長を遂げています。

事業ポートフォリオの合理的な運営に当たっては、事業売却も選択肢の1つです。欧州の自動車用事業とインド事業は、コロナ影響による需要低下とサプライチェーンの混乱継続によって高まった市場の不確実性に直面しました。こうした状況を勘案し、当社グループは2021年、これらの事業に買い戻しの条件を付けてウットラムグループへ売却する経営判断を下しました。こうした手法の活用により、市場環境が好転した場合、欧州の自動車市場やインド市場に再参入する機会を確保しています。

一方、新しいパートナー会社を迎え入れるだけでなく、既存事業における力強い売上成長と収益性の改善を追求しており、MSV実現に向けて、今後も全社一丸となって取り組んでいきます。


競争に打ち勝ち、塗料・コーティング分野で市場支配権の獲得へ

当社グループが中核事業とする塗料・コーティング市場は、グローバルで約2,000億米ドルに上る市場規模と推定され、人口増加や経済発展に伴って持続的な成長が見込める魅力的な産業です。収益性が非常に高く、安定したキャッシュ・フローを生み出すビジネスでもあることから、競合他社や異業種からの注目を集めています。最近では、防水剤や接着剤、セメントなどのメーカーから参入が相次ぎ、競争が激化しています。当社はこうした非伝統的なプレーヤーとのゲームにも打ち勝っていかなければなりません。

激しい競争環境の中であっても、適切な取り組みを続けることで、当社グループが展開する各市場で支配権を獲得するという方針に変更はありません。当社グループは、ブランド、販売網、テクノロジー、サプライチェーン、市場に関する知識・ノウハウ、優秀な人材などで優れた強みを持っています。特に、アジアNo.1ブランドとして、アジア・太平洋地域で非常に強いプレゼンスを有しており、今後もこれらの全ての強みを活用しながら世界各国・地域で成長を続けていきます。MSVの実現に向けて、単純に規模ばかりを追い求めるのではなく、収益性を確保しながら成長を追い求めていきます。

収益性の改善が課題の日本グループでは、特に自動車用と船舶用に焦点を当てながら構造改革に取り組んでおり、2022年に船舶用事業で早くも黒字化を達成するなど、既に成果が現れ始めています。国内のパートナー会社は、各事業領域に特化した独立組織で構成されていますが、国内機能会社として誕生した日本ペイントコーポレートソリューションズ(NPCS)の運営が軌道に乗れば、日本グループ全体を網羅したシナジーを発揮し、国内各社の事業収益に恩恵をもたらすと考えています。


革新的な技術と柔軟な行動変容により、中国市場で成長を加速

中国事業は、当社グループの業績に占める割合が大きいため、常に注目を集めています。現中計期間中に中国市場で多くの逆風に見舞われました。中でも、コロナ影響に伴う長引く景気低迷や、政府による不動産ディベロッパーに対する過剰な借り入れ抑制策の導入によって、TUB(Project顧客や主要建設会社とのBtoBビジネス)市場の成長が大きく鈍化しました。こうした状況下、当社グループはこれまで取り組んでいた大手不動産ディベロッパーに焦点を当てた市場シェアの拡大から、より広範に顧客基盤の多様化を進める方向に舵を切っています。多様な顧客へ働き掛ける一方、既存顧客に対して付加価値の高い製品を継続的に提供することで、重要顧客を慎重にサポートしていきます。近いうちに、緩やかながらも着実な市場回復を受けて、TUB事業は回復に転じると見込んでおり、併せて「中古住宅・エコノミー住宅時代」の到来などによる新たな事業機会も踏まえると、今後も継続的な発展・成長が期待できる市場であると認識しています。

TUB市場が縮小したことで、TUC(消費者向け事業、DIY事業、代理店・販売店経由、EコマースなどBtoCビジネス)市場は、先述の通り、非伝統的なプレーヤーも含めた競争が激化していますが、TUC事業は私たちが熟知している分野であり、さらなる市場地位の確立に向けて取り組みを強化しています。NIPSEA中国では、TUC事業でのさらなる成長余地を見出しており、圧倒的な市場シェアを持つ特級・1〜2級の大都市でのさらなる成長に加えて、3〜6級の地方都市でさらなる市場浸透を強力に推し進めています。小規模都市では、専門チームを組成し、強力なブランド力や販売網などを活用しながら急成長を目指しています。加えて、卓越した高意匠性と環境配慮を両立した消費者向けの革新的な新製品「MagicPaint」を中心とした拡販にも注力しています。顧客に対して新たな付加価値を提供することで、差別化要因を革新性・性能・審美性・付加価値にシフトさせたい考えです。NIPSEA中国は企業文化として俊敏性を有しており、顧客の期待に対して機敏に対応し、市場シェアをさらに獲得することが可能です。

取締役 代表執行役共同社長 ウィー・シューキム
EPS ⾼い能⼒を持つ意欲的な仲間たちとともに、
新たに挑戦していく⾵⼟を醸成し続ける

強みを生かして、塗料周辺分野で新たな成長

SAF・工具・フロアコーティング・建設化学品・防水材などの塗料周辺分野は、新たな成長領域として存在感が高まっています。当社グループは、塗料・コーティング分野で培ってきた市場へのリーチ力、ブランド構築力などを活用しながら、周辺分野へ事業を拡大しています。現時点では、多くのパートナー会社において、周辺分野の売上規模は大きくないものの、「無駄のない成長(LFG:Lean For Growth)」を志向する各パートナー会社は、現中計期間において大きな成果を生み出してくれると確信しています。

先述の通り、DuluxGroupが有する「Selleys」ブランドは、豪州・ニュージーランドで高い認知度を誇っており、NIPSEAグループが展開する市場に持ち込み、流通力を生かして拡販したところ、良好な成果を上げています。NIPSEAグループ各社では、「Selleys」ブランド製品の売上拡大だけでなく、家庭用品やホームケア製品などのブランド化も推し進め、金物店や大型量販店での販売スペースの確保に取り組んでいます。一部の地域では、「NIPPONPAINT」ブランドと「Selleys」ブランドのクロスプロモーションを展開することで、顧客認知度が向上し、市場での存在感が増しています。

欧州においても、ETICS(断熱材)を成長分野の1つとして注目しています。2019年に当社グループ入りし、トルコのETICS市場をけん引するBetek Boyaとともに、欧州のCromologyやJUB、NPTは、個社単独で生み出す価値以上のシナジー効果を創出するべく、互いに成長を支援し合える協力体制の構築を進めています。

当社グループの各国・地域の経営陣は、塗料周辺分野の拡大に向けて意欲的に取り組んでおり、その取り組みはまだ第一歩を踏み出したばかりです。


正しいリーダーのもとで、挑戦を後押しする⼈材・組織基盤を構築

私は、組織は人によって作られるものと確信しています。人が鍵であり、人こそが事業成長の原動力です。当社グループで持続的な成長を果たしているパートナー会社には、強力なリーダーシップを持つ優秀なリーダーがいます。「アセット・アセンブラー」モデルを追求する中で買収対象となり得るのも、優れた実行力を持つ強力な経営陣を擁する企業になります。

当社グループは2022年度も引き続き、グループ全体で組織開発に向けた取り組みを強化しています。日本では、「J-LFG」を通じた企業文化の変革に加え、上級幹部職や中間幹部職の能力開発にも取り組んでいます。最終的には、全経営陣を動員し、幅広い階層の従業員を参画させることで、これまでの慣習に束縛されることなく、潜在的な能力を発揮し、現時点で後塵を拝するようなセグメントでも競争に打ち勝って欲しいと考えています。その出発点となるのが、リーダーや従業員のトレーニングとエンゲージメントであり、あらゆる階層の従業員が、新しい未来に向けた大胆な一歩を踏み出せる環境を構築していきます。技術者を対象とした試験的な報酬制度の導入が成功したことを受け、業績に連動したインセンティブや報酬制度を補完する幹部職・専門職のキャリアアップ制度を抜本的に見直し、日本グループ全体に適用していきます。近い将来、成長が緩やかな成熟市場である日本においても、高いモチベーションを持ってトレーニングを受けた従業員がより高い業績を達成してくれると確信しています。

当社グループのグローバルなサステナビリティへの取り組みは、若月共同社長が陣頭指揮を執り、「環境&安全」、「人とコミュニティ」、「イノベーション」、「ガバナンス」、「調達」のサステナビリティチームが推進しています。「人とコミュニティ」チームでは、ダイバーシティ&インクルージョンと社外コミュニティとのエンゲージメントに特に注力しています。当社グループはサステナビリティ推進の一環として、従業員の福利厚生と能力開発のあらゆる側面で徹底した取り組みを実施しています。


MSV実現の重要な指標である「EPS」を持続的に拡大

当社グループのミッションはMSVの実現です。私は、世界各国のリーダー陣やそのチームがMSV実現に向けて一致団結していると強く信じています。まずは全てのステークホルダーへの責務やコミットメントを充足した上で、残存する株主価値の最大化の実現に向けて全力で取り組むことが必要です。MSVの実現に向けては、その重要な指標である「EPS」を持続的に拡大していきます。

先行きは依然として楽観視できないものの、当社グループは「アセット・アセンブラー」モデルのもと、各パートナー会社の独自の企業文化を堅持しながら、従業員・顧客を重視し続けることで、今後も持続的な成長を遂げていきます。

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