独立社外取締役への質問(一問一答)
投資家の皆さまとの対話を通じていただいたガバナンス関連のご意見やご質問に、筆頭独立社外取締役の中村昌義がお答えします。
取締役の人数およびスキル・マトリックス
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当社取締役会は、株主・投資家の皆さまをはじめとするすべてのステークホルダーに対する責務を認識し、適切な権限行使を行い、当社の中長期的な株主価値最大化(MSV)を実現することに責任を負っています。そのため私たちは、取締役会を信頼の深化を図り得る適正規模、現状11名とし、独立社外取締役が過半数を占めるとともに、スキル・マトリックスも用いて経験・スキルのバランスを考慮することとしています。
独立社外取締役の貢献はMSV実現に向けた前提条件です。当社の取締役会は、2020年の指名委員会等設置会社へ移行以来、多少の人数増減を経ながらも常に独立社外取締役が過半数となる構成を堅持してきました。これにより、独立社外取締役が自らの知見に基づき、当社グループの持続的な成長を促し、中長期的MSVを図る観点から助言を行う監督機能を果たしています。なお、現在(2023年2月末)の取締役11名のうち8名が独立社外取締役です。更に、非業務執行の取締役会長としてゴー取締役、執行と監督の情報共有の強化を図るべく代表執行役共同社長を兼務する取締役として若月・ウィー両取締役を加えた構成としています。
また、現在の取締役会には、事業会社や金融機関およびプロフェッショナルファームなどの多彩なバックグラウンドを持った取締役が集っており、加えて、国際性、ジェンダーの視点からも十分な多様性を備えた構成となっています。
他方、取締役会のこれらの多様性を作り上げるプロセスについては、当社特有のアプローチがあると捉えています。
私たちは、「先んじて取締役や執行役に対する画一的な後継者計画を作り、それに沿って足りないピースの形に合う候補者を探し絞り込んでいく」という進め方を採っていません。相互信頼に基づき真に実効的な議論の深耕を追求する当社取締役会においては、適正な人数や理想的な保有スキルが先にあるのではなく、経歴や人となりを手掛かりにどのようなパフォーマンスが期待できるのかなどを問い、総合的にその人物が信頼に値するかを見極めることを主眼としています。つまり、徹頭徹尾、人物そのものや人とのつながりを拠り所とした進め方を採っています。
このアプローチを経て、私たちが、ともにMSVの実現を目指す仲間として信頼に値すると得心する人物には共通する3つの経験があります。それらが当社のスキル・マトリックスに掲げる「事業会社経営経験」、「グローバル経験」、「M&A経験」であり、「アセット・アセンブラー」モデルを推進する当社グループにおいて、実際の職歴を通じて得られたこれらの3つの経験はとりわけ重要です。
また、そのような人物にはこれらの経験に裏打ちされた固有のスキル(「ファイナンス」、「法務」、「IT/デジタル」、「製造/技術/研究開発」など)があります。これらの各取締役の高い専門性が余すところなく発揮されることにより、当社取締役会の議論の基盤が形作られています。
しかし、将来に望むべき取締役候補者は、これらの条件によって自動的に絞り込まれるものではなく、あくまでも人のつながりや、十分なコミュニケーションの末に確信される相互信頼よって選ばれるべきものです。
直近の事例として、2022年3月に当社取締役に就任したカービー取締役は、グローバル塗料メーカーでの長きに亘るCEO経験を有しており、その辣腕や「人となり」は私たちもよく知るところでした。また、リム取締役のシンガポール政府系投資会社であるTemasekにおける経験や、シンガポール政界におけるリーダーシップは同じく私たちが実際に目にしてきたものです。最終的には、指名委員会が本人との直接のコミュニケーションを重ね候補者として選定しましたが、このような実際の人のつながりに基づく洞察は極めて重要な示唆となりました。つまり、MSVの実現に向け当社の「アセット・アセンブラー」モデルを推進するために必要不可欠な仲間を探し求め続けた結果が、現在の取締役構成となりスキル・マトリックスとして現れているのです。
この私たちのアプローチは、当社グループのM&A対象の選定においても同様です。世界中の塗料メーカー等をロングリストとし外形的要件により絞り込んでいくのではありません。既存事業および「Paint++」事業領域への拡大を進める中で顔の見える相手を増やし、彼らとの十分なコミュニケーションに基づき、真に信頼すべき相手を見極め、パートナーとして手を結んでいきます。これが自律・分散型経営である「アセット・アセンブラー」モデルにふさわしい考え方であると確信しています。
当社グループの成長に伴い、取締役会は今以上にその視座を押し上げ、当社の将来を指し示すことが求められます。当然、必要な監督機能の質も刻々と変わっていきます。それに応え得るチーム作りへの努力を絶え間なく続け、これからも私たち取締役会は進化していきます。
取締役会の実効性
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株主価値最大化(MSV)を経営上の唯一のミッションとする当社の「取締役会の実効性」は、中長期的には当社の株主価値そのものによって評価されるべきものです。
このMSV実現に向けて、私たちは信頼をベースとしたグループ経営が最善であると考えており、具体的には「アセット・アセンブラー」モデルであると確信しています。当然、取締役会においても、取締役相互および執行との信頼の深化が不可欠となり、まさにこれが当社の「取締役会の実効性」をさらに向上させる鍵となります。また、これが現時点における「取締役会の実効性」を計る尺度にもなると認識しています。
この相互信頼を醸成するために、各取締役は取締役会や各委員会のみならず互いに直接コミュニケーションを密に取っています。また、取締役会の開催後には独立社外取締役会議を都度開催し、取締役会の進行や議論内容についての意見交換に加え、グループ主要経営陣であるGKP(Global key Persons)をはじめとする執行側からの声を直接聞くことも適宜行っています。例えば、監査委員会では各パートナーカンパニーのマネジメントチームとの対話を継続的に実施しており、2022年には16回のセッションが設けられました。このようなコミュニケーションから得られる現地における成長施策の手応え、課題解決に向けた示唆は取締役会にも共有されております。これらにより、私たちが自律的・分散型経営を指向しながらも、事業実態を踏まえた実効的な成長戦略議論を行うことを可能にしています。このように集約された意見を共同社長両名やゴー会長との意見のすり合わせに活かすことが独立社外取締役としての貢献の礎であり、ここから紡ぎ出される取締役会の議論が最終的な決定の質を高めていくと考えます。
また、私たちの「取締役会の実効性」向上へ向けたこのような取り組みの進捗については、第三者機関である株式会社ボードアドバイザーズにより他社比較等も含めた客観的な評価を毎年行っております。2022年の実効性評価は、総評として、「取締役会の実効性は概ね確保」され、取締役各自の異なる知見を活かしながら「執行を後押しする観点から活発な議論に臨んでいる」とし、一定の進捗を見たと認識しています。一方、更なる取締役会の実効性向上に向け、「独立社外取締役の貢献」が今まで以上に求められることも確認されています。その結果を真摯に受け止め、私たちの課題を常に見直し改善を重ね、MSVの実現、更なる飛躍へ向け邁進していきます。 -
当社の成長戦略は大きく2つあります。1つ目は既存ビジネスのオーガニックな成長、2つ目は新たなアセットを買収によりアセンブルするインオーガニックな成長です。
この2つの成長を実現するためには、適切な資本の調達とともにビジネスポートフォリオの視点が不可欠です。例えば、既存ビジネスの強化に投資を行うのかまたは、新たな買収を行うか、もしくは既存ビジネスの売却か、様々な状況を俯瞰的に捉え当社の成長へつながるベストな判断を執行側ができるように後押していくことが求められます。
塗料・コーティングに関するグローバル市場においては、当社を含めたグローバル企業10社を足し合わせてもシェアは50%に満たず、残り半分は中小のローカル企業等が占めており、当社の拡大の余地は依然として大いにあります。さらに、当社が「Paint++」という言葉で表現している周辺市場は塗料市場の約3倍と言われています。これらをグローバルマーケットにおける当社グループの成長領域として視野に入れ、ビジネスポートフォリオを冷静に分析し投資判断を最適化していくことが、当社取締役会における「成長戦略議論の充実」に資すると考えます。
2022年8月に開催したオフサイトミーティングでは、グローバル競合他社の戦略との比較において当社の独自性・優位性を検証するとともに、周辺業種も含めて当社の「アセット・アセンブラー」モデルの位置づけを見直すなど、当社の成長戦略について徹底的な議論を行いました。共同社長ら執行が推進する「Paint++」戦略における当社グループのポテンシャルや、その実行のための真に適切な資金調達の在り方についても議論が深耕され、私たちのMSVへのロードマップをより精緻なものにすることができました。これらの成長へ向けた共通認識の醸成や課題共有の深化は、取締役会における個々の事案の審議の質を向上させることにも活かされています。2022年の取締役会実効性評価においても「戦略をじっくりと議論する機会を持った」ことは「株主価値最大化(MSV)を目指す方針が共有され」た上で「中長期の経営戦略など重要な審議事項について概ね議論されている」と高く評価されました。
当社グループのガバナンス上の最大の課題は、MSVに向けてタイムリーかつ適切なリスクを執行側が果敢に取り続けられるかにあります。私たちの取締役会は、上述の相互信頼の下、執行側から必要な情報のアップデートを常に受け、MSVに向けた執行側のリスクテイクをサポートする体制の深化に努めています。