独立社外取締役によるガバナンス対談

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当社グループのあるべきリーダー像について議論を重ね、「株主価値最大化(MSV)」に資する新体制を提言しました。

社長交代に伴う新体制として、「共同社長」という体制を選択したことで、国内外の株主・投資家やステークホルダーの皆様から高い注目を集めています。ここでは、独立社外取締役である中村昌義(取締役会議長)、原壽(指名委員会委員長)が、共同社長体制の背景や狙いについてご説明します。


新体制への移行に向け取締役会が果たした役割とは?

中村当社の取締役会は2021年4月28日、社長交代に伴う新体制への移行という大きな決断をしました。3月26日の株主総会後に田中正明さんからの辞任の意向を受け、1ヵ月ほどの短い期間の極めて濃密な議論を経て、新体制を創り上げました。
取締役会長 代表執行役 社長 兼 CEOであった田中さんの辞任は、当社グループの執行機能、監督機能の両方の責任者が代わる重大な転換点であり、新しい経営体制の構築は当社における最も重要な戦略的意思決定でした。
この転換点に際し、私たちは、若月雄一郎さん、ウィー・シューキムさんの2人が経営をリードし、この業界における長年の経験を有するゴー・ハップジンさんが2人をサポートする体制に決定しました。
本日は改めて、若月さん、ウィーさんによる「共同社長体制の採択」の決断に取締役会が果たした役割や指名委員会における議論とその背景、今日まで私たちが考え検討してきた内容などについて、指名委員長である原さんと振り返ってみたいと思います。

なぜ、若月氏、ウィー氏の両氏による共同社長体制なのか?

審議を重ねてきた「当社グループのリーダーのあるべき姿」が結実

中村なぜ、若月さん、ウィーさんによる共同社長体制としたのか。他にあまり例を見ないこの体制を最適とする結論に至るポイントは何であったと思われますか?

私たちはこれまで、取締役会や各委員会の場に限らず、常に当社が経営上のミッションとして掲げる「株主価値最大化(MSV)」に資する経営、そのリーダーのあるべき姿について考え続けてきており、まさにその成果が試された1ヵ月でありました。しかし、共同社長体制を採択するに当たっては、実はかなり熟考の時間がありました。私たちが独立社外取締役として当社に参画した2018年以降、指名諮問委員会、その後の指名委員会として実質3年余り、絶えず考えてきた「当社グループのリーダーのあるべき姿」が結実した結果であったと考えています。
中村まさにおっしゃる通りですね。当社グループのリーダー像については、私たちが絶えず検討を続けるとともに、布石を打ってきたテーマでありました。まずは、今回の決断に向けて私たちがこれまで考えてきたことや経緯について振り返ってみたいと思います。

次世代リーダー候補選定について私たちが考えてきたこと


私たちは、2019年3月に外部から田中さんを取締役会長として迎えましたが、これはアジア合弁事業の100%化、およびインドネシア事業の買収を含むさらなるグローバル化に向け、社内人材に加え社外の候補者との面談を含めた検討の結果でした。さらに、田中さんの金融界における経験、経営者としての国際感覚が当社のMSVの実現のために有益と判断し、2020年1月には取締役会長に加え、社長CEOに選任するとともに、指名委員会等設置会社への移行をはじめ当社のガバナンス体制を強化してきました。
この田中さんをトップとする執行体制のもと、2021年1月にはアジア合弁事業の100%化を果たし、同年3月には当社グループ共通の存在意義を示す「Purpose」や2023年度に向けた「新中期経営計画」を策定しました。これらは、田中さんの卓越したリーダーシップの賜物であり、当社のMSVの実現に向け確実に資する施策であります。
一方、指名委員会としては、当社がオーガニックな成長のみならずM&Aも駆使しながら、グローバル企業としてさらなる飛躍を目指すに当たり、コロナ禍の激変する環境下においては当社の次世代を率いる経営トップの選定がますます重要度を増し、世代交代が目の前に迫っているのではないかという感覚もありました。
田中さんも自らの後継者育成を重要課題と認識しており、私たちは田中さんとともに社内外問わず候補者を検討していました。その中で、次世代リーダー候補選定の布石として、2019年11月には外部から若月さんを招聘し、2020年1月には専務執行役員CFOに選任するとともに、グループ内からNIPSEAグループの経営トップであるウィーさんを田中さんの補佐として副社長執行役員に登用しました。
中村そのような中、「世代交代後のMSV実現の構図」「それを導く次世代のリーダー候補をどこに求めるか」については、指名委員会や取締役会で幾度も議論を重ねたポイントでした。私たちのリーダー候補に対する評価、選定の考え方について掘り下げてみたいと思います。

評価については、候補者とコミュニケーションする中で、その経営者としての総合力について、私たち取締役一人ひとりの見識に基づく、より実効的な審議により導き出されるべきものと考えます。
単に要求スキル一覧表に「○」の多い人物を候補者パイプラインの中から機械的に、順次絞り込んで選んでいくようなものではなく、日々変化するビジネス環境に対して、当社グループのリーダー候補がどのように対峙しているかをしっかり見守り、見定めていくことが起点になると考えます。
そのため、指名委員会だけではなく、私たちは取締役として、グローバルに広がる当社グループの各地域・事業のトップ・マネジメントをグローバル・キー・ポジション(GKP)として注視しながら、直接コミュニケーションを密に取ることに腐心してきました。
中村そうですね。GKPの皆さんとは、指名委員会、報酬委員会、監査委員会、そして、独立社外取締役会議でもコミュニケーションの深化に努めてきました。とりわけ2020年度は、Purposeや新中期経営計画を策定する年に当たり、それらについて取締役会で重ねてきた審議もGKPを評価する側面が大いにあったと思います。
実際Purposeの審議においては、当社グループが今や30の国と地域で事業を展開し、さまざまな文化的背景や価値観を持つ3万4千人余りの多様な人材によって構成されている、まさにグローバル組織であることが再認識されたこと、また新中期経営計画の審議においては、各GKPの皆さんが目指す目標、経営課題について直接ディスカッションを行い、それぞれが相互にどのようなビジネスを推進していく関係にあるのかについて十分な理解ができたことなど、彼らを評価する視点においても極めて重要だったと思います。

若月氏、ウィー氏の両氏による共同社長体制へ

中村そのような次世代リーダー選定に向けた準備を進めている時に田中さんからの辞任意向の表明があり、私たちは結論を急ぐ必要に迫られたわけですが、若月さん、ウィーさんの両氏による共同社長体制が最適と判断した理由について改めて考えてみたいと思います。
私たちの考えていたことを大胆に単純化すると、株主価値はすなわち、「EPS(1株当たり当期利益)×PER(株価収益率)」が重要な指標になることから、「EPSの最大化」と「PERの最大化」を成し遂げれば、MSVは実現することになります。こう考えた場合、「EPSの最大化」と「PERの最大化」を託すべき次世代リーダー候補は誰か、が問いになりますが、私たちの回答は、最適な人物がそれぞれ別々にあり、敢えて一人に絞ることは適切ではないということです。
先ほど中村さんがおっしゃったPurposeや新中期経営計画の審議や、従前に行っていたGKPとのコミュニケーションの結果を踏まえ、GKPの相互の関係、各ビジネスの相乗効果を勘案した上で、当社グループの現在あるいは将来を考えた時、今回の若月さんとウィーさんの両氏による共同社長体制が最適であると私たちは判断しました。
中村2019年に外部より招聘した若月さんは、CFO就任直後から資本市場とのコミュニケーションの改善、効率的な長期買収資金の調達、またアジア合弁事業の100%化を資本市場に評価される形で仕上げるなど、次世代のリーダーとして十分相応しい姿を私たちに示しました。また、ウィーさんは2009年来、NIPSEAグループの責任者を務めてきており、現在の当社グループの売上収益の5割、営業利益の7割※を占める中核事業へと成長をけん引してきました。さらに2019年のDuluxGroupの買収に伴い、DuluxGroupとNIPSEA間、および当社グループ内のシナジー創出に多大なるリーダーシップを発揮してきました。このような若月さんとウィーさんの経験や実績が、今の当社グループの次世代を担うリーダーに必要であると私も確信しています。
共同社長体制については一般的に、求心力の分散や指揮命令系統の煩雑さによる意思決定の鈍化などが懸念されるとは思いますが、私たちの決断はその心配よりも、この両氏の経営手腕の有機的な結合による効果の方が、当社のMSVに資すると理解しています。
また、当社の取締役によるガバナンスの特徴と言えると思いますが、私たちが日ごろ考えていることは、当社経営トップやGKPの実績を正しく把握し、評価するためには、取締役会において個別議案の報告を受けて審議するのみでは足りないということです。各委員会でのそれぞれの目的に合わせた対話に加え、独立社外取締役会議では、フランクな意見交換を通じてより踏み込んだ関係構築を目指しており、このようなコミュニケーションは今後もさらに重要になると考えています。

※2020年度のNIPSEA事業の実績値にBetek Boyaの実績値を加えて算出

同感です。会議体にこだわらず、いつでもクイックに連絡が取り合える関係が構築できていたからこそ、若月さん、ウィーさんの実績に加え、それぞれの人間性も理解しながら、執行と監督の双方にとって、安心感を持って指名できたプロセスであったのではないかと自負しています。
中村ありがとうございます。私たちが、若月さん、ウィーさんの両氏による共同社長体制を採択するに至った経緯を振り返ることができたと思います。
ところで、私たちは、ウィーさん、若月さんが経営をリードし、ゴーさんが2人の経営をサポートする体制としましたが、これについても振り返りたいと思います。
指名委員会では今回の新体制決定に先立ち、若月さん、ウィーさん、ゴーさんの3人と当社グループの今後の経営に関して意見交換を行いました。3人が共有する考えは、経営の透明性や経営に関与する者同士の信頼を高めるとともに、形式主義を排し、決定・行動を迅速化させ業績を向上させるという、実質を重んじる経営を追求するということでした。
この「形式主義にとらわれず実質を重んじる経営」という点については、私たちが繰り返し問うてきた「当社の目指すMSVに真に資することは何か?」という命題に密接に関連すると考えています。
当社の共同社長体制において、ゴーさんの当社グループにおける40年に及ぶ経験と、サステナブルで飛躍的な成長を成し遂げた広範囲かつ長期的な視野は、共同社長による業務執行に対して、私たち独立社外取締役には果たし得ないサポートとなり、MSVの実現に資するものと確信しています。
中村私も全く同感です。他方、ゴーさんが当社の大株主であるウットラムグループの代表者であることを、私たちは極めて重く受け止めています。ゴーさんを取締役会長に選定することを決定した私たち取締役会は、会社や株主共同の利益を尊重し、少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備に対して、甚大な責務を担っています。
そうであるからこそ、私たち取締役は取締役会規則を改正し、大株主であるウットラムグループの代表者でもあるゴー取締役会長に代わり、筆頭独立社外取締役である中村さんを取締役会議長とすることを定めました。
コーポレートガバナンス・コードにおいては、大株主を有するプライム市場上場会社は、取締役の過半数が独立社外取締役であることが求められています。当社の取締役会構成は、既に独立社外取締役が過半数を占めていますが、それに加えて私たちを律するルールを策定すべきと考えたからです。
また、大株主と少数株主との利益が相反する可能性のある重要な取引などについては、独立性を有する特別委員会を設置すべき旨も推奨されていますが、開示している当社のコーポレート・ガバナンス方針や、私たちの取締役会規則においても、明文規定としてこれらの審議・検討に関する定めを構築し、それに従った運営を実行しています。
これらガバナンス上の仕組みはもとより、私たち取締役の一人ひとりは、議論の実質への貢献、ひいては取締役会の実効性向上について大きな責任を日々感じています。
独立社外取締役による ガバナンス対談

取締役会の実効性向上に向けて

中村新体制の発足に伴い、さらなるMSVの実現に向けた飛躍をするべく、私たち取締役の職責はさらに重大になったと考えています。また、取締役会議長が執行のトップを兼務しない現在の体制については、指名委員会等設置会社としてモニタリング・ボードを志向する当社にとってまさに相応しいと実感するとともに、課題もあると感じています。
真にMSVに資するモニタリング体制の確立のためには、共同社長はもとより、GKPも含めた執行側との緊密なコミュニケーションによる正確な当社の状況把握が必須であり、その上で自らの取締役としての役割を踏まえ、自らのレピュテーションを懸けた取締役相互の真剣な議論をいかにリードするかが問われていると認識しています。私にとっても襟を正す日々です。

それらの課題と真摯に向き合い、解決を図っていくことは取締役全員のコミットメントであると思います。また、指名委員会としては、私たち取締役の責務を果たし続けるべく、ダイバーシティの向上も含めたさらなる取締役構成の進化を図っていかなくてはなりません。
中村今回の新体制決定までのアプローチを振り返り、改めてMSVの実現、今後の飛躍に向けた私たちの共通認識が確認できたと思います。
そして、新体制発足後の私たちの次なる課題は、取締役会のさらなる実効性向上とのご指摘も全く同感です。MSVの追求に向け、当社ガバナンスの改善にともに邁進したいと思います。
本日はありがとうございました。
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