「自律・分散型経営」の具体的実践

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取締役 代表執行役共同社長 ウィー・シューキム
「持続的なEPSの積み上げ」に向けた
未来への布石
取締役 代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

成熟市場における日本グループの変革と未来への挑戦

時に困難を伴いながらも、近年稀に見る非常にユニークな手法や施策で構造改革を進めてきた日本グループは今、その運営モデルの大胆な変革に取り組んでいます。顧客と業界に重点を置いたパートナー会社(PC)を中心とした従来の運営モデルから脱却し、2025年1月にスタートさせた「CXO体制」のもと、顧客中心主義をさらに強化し、組織の垣根を越えた協業促進に力を入れています。4人のCXO(最高営業責任者(CCO)、最高サプライチェーン責任者(CSCO)、最高技術責任者(CTO)、最高管理責任者(CAO))の任命は象徴的かつ戦略的な転換を図るものであり、「One NIPPE」の旗印のもと、顧客中心主義の強みを引き続き生かしながら、5つの事業会社があたかも1つの事業体であるかのように一体的に運営しています。こうした変革は、各パートナー会社の利益を優先する「個別最適」から、日本事業全体の利益を優先する「全体最適」への意識転換を図り、「持続的なEPSの積み上げ」に貢献する組織としてのシナジーを最大限に引き出すことを狙いとしています。

幸運にも、日本グループは経験豊富で優秀なリーダーが揃っており、これまでPC責任者であった喜田氏と塩谷氏が全体最適実現のためのCXOに就任すると同時に、日本ペイントコーポレートソリューションズ(NPCS)で日本全体の視点から事業運営に携わってきた井上氏がCAOとして、3年前に策定した技術計画を着実に実行しているホン氏がCTOとして引き続き職責を果たしています。また、ともに船舶用事業の改革で大きな功績を残した榎本氏、加賀美氏を新たにPC責任者に抜擢することで、次世代リーダーを育成する機会も提供することができました。才能ある若手従業員が急速に成長し、新たなポジションに迅速に就任できる環境を併せて整備することで社内の人材プール、組織の活性化を図るとともに、日本グループ全体としてのシナジー創出につなげていきます。

2024年9月に東京で開催された「Japan-Group Management Meeting(J-GMM)」では、日本グループが伝統的な日本企業の枠組みを超え、時にそこから逸脱する経営・人事慣行を受け入れるべきとする意欲的な挑戦を掲げました。こうした大胆なテーマを採用することができた背景としては、近年抜本的な改革を進めてきた船舶用事業の成功があります。日本ペイントマリン(NPMC)は新造船分野で過去20年間にわたって「不可能」と考えられてきた黒字化を実現するなど、従業員の意識と行動の変化が組織の成長を支える不可欠な要素であることを日本グループの従業員に証明しました。また、グローバルな競争環境において、世界の顧客が求める迅速な対応力を磨き、効率的なコスト構造を強化することで、3年間の中期経営計画を初年度で達成する目覚ましい成果を上げ、中期目標の上方修正を迫られる嬉しい状況となりました。こうした成果は、強力なリーダーシップと従業員の挑戦意欲を高める職場環境によって、日本グループでも「変革の魔法(magic of transformation)」が起こり得ることを示しています。

四機能CXO/PC社長体制

四機能CXO/PC社長体制

グローバル自動車市場で未来を切り拓く競争力

自動車用事業においても、グローバル市場に向けた挑戦や未来を見据えた取り組みを加速しています。当社は日本市場への注力にとどまらず、世界各地で生まれる事業機会を捉えるべく、グローバル市場での競争力強化に焦点を当てた改革を推し進めています。

自動車業界は現在、大きな転換期を迎えています。顧客である自動車メーカーはカーボンニュートラル製品やコスト効率を追求するとともに、従来の内燃機関車から電気自動車(EV)や水素燃料車への移行を加速し、塗料とフィルムの最適な組み合わせを模索しています。当社はこうした変化に対応するべく、次世代自動車の設計において重要な要素である「軽量化」や、先進的なフィルム・コーティングを中心的なテーマに据えた新たなソリューション開発に取り組んでいます。

こうした変化の激しい状況下、当社は新たなパラダイムにおいても活躍できる人材の育成に注力しています。自動車用事業を地域ごとに個別に運営する方法から、顧客のニーズに応じて1つのグローバルユニットとして機能させる中、アジアや米州、欧州において日本の自動車メーカーによる海外進出を継続的に支援してきましたが、近年では中国の自動車メーカーがEV分野での成功を背景に海外進出を進めています。そのため、NIPSEA中国が現地で培った専門知識や技術力を生かし、NIPSEA中国の中国国内の自動車メーカーへの対応力とNPX(当社グループの現地事業体)の現地サポート力・納品力を融合した事業モデルを構築することで、グローバル競争力の強化に取り組んでいます。NIPSEA中国とNPXの連携を深化させることによって、コスト効率が高い運営体制を通じて地域に最適化されたソリューションを機敏に提供することで、グローバル化する中国自動車メーカーにおけるシェア獲得につなげています。

グローバル・キー・アカウント・マネージャー(GKAM)は現在、カスタマイズされたサービスやソリューションでグローバルに事業を展開する顧客をサポートする一方、世界各国の事業・機能責任者は自動車用事業全体としての競争力をさらに高めるプロセス強化に取り組んでいます。

こうした顧客中心の取り組みに加えて、新たに開発した環境配慮型のソリューションや、フィルムという新分野への展開も含め、当社グループは自動車業界において進化するトレンドを先取りし、グローバル市場の多様なニーズへ積極的に対応していきます。そして、将来の事業機会を確保するべく、長期的かつ持続可能な競争力の構築に尽力していきます。


再参入したインド市場で成長に向けて築く未来

当社のインド事業は2021年当時に成長性と収益性を巡って大きな課題を抱えていましたが、3年にわたる構造改革や大胆なマーケティング施策などの奏功によって持続的な利益成長の道筋を見出し、2024年に当社グループへ再統合する運びとなりました。インド市場の競争激化に冷静に対処し、インド市場への再参入を果たせたことは、インドにおける将来的な成長機会の確保に向けた当社グループの強い意志と自信の表れとなります。

今、かつてないほどの急速な変化を遂げているインド市場の中でも、最も著しい変化が生じているのが建築用塗料市場です。従来5社程度の主要プレーヤーで構成された市場でしたが、近年は異業種からの新規参入が相次ぐなど、競争が激化しています。このような環境下で当社が優位性を維持するためには、競合他社の動向を注視し、新規参入企業のイノベーションに注意を払いながら、慎重に戦略を練る必要があります。当社は南インドのタミルナドゥとカルナータカの2州に注力しつつ、強力なブランド認知と流通ネットワークを構築しながら安定した市場シェアを確保しており、今後も現地チームの独自の強みと当社グループの多様な製品ラインアップを組み合わせることによって、競争の激しい市場において差別化を図っていく考えです。

インドの自動車市場も急速に成長しており、将来的には世界第3位の自動車市場になる見込みです。当社としてはこうした成長の勢いを捉え、主要顧客との連携深化を通じて持続的な事業拡大を目指しています。合弁パートナーと手を携えながらインド国内外の自動車メーカー、自動車部品メーカーの期待に応えることで、市場需要の拡大から生み出される利益を確保していきます。

自動車補修用事業も引き続き着実な成長を遂げており、この3年で実施した企業買収によって機能強化を図りつつ、当社と顧客の双方の成功をもたらす強固なサポート体制に支えられた幅広い製品・サービスを市場に提供するべく注力しています。

工業用事業では、コイルコーティング分野の売上の半分を輸出で稼いでおり、高品質でコスト効率の高い輸出拠点としてインドを活用しながら、中央アジアや東アフリカなどの海外市場へ製品を供給しています。このように国内市場と海外市場の需要をバランスよく組み合わせることで、国内で競争が激化する中でもレジリエントな成長を確保しています。

インド事業(NPI・BNPA)の概要

インド事業(NPI・BNPA)の概要
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