NIPSEA中国を巡る経営対談

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NIPSEA中国を巡る経営対談

逆風下でも伸ばす―
「シェア×マージンの規律」でつくる
“利益ある成長”

NIPSEA中国の競争優位性は、成長局面だけでなく逆風局面でも崩れない「規律」にあります。中国の市場構造が大きく変化する中、NIPSEA中国は「シェア×マージンの規律」を軸に、TUC・TUBそれぞれの事業分野で「利益ある成長」を追求してきました。本対談では、Top of Mind(第一想起ブランド)の維持から需要創造、組織改革、デジタル化・AIを活用した生産性の向上まで、NIPSEA中国の自己変革の実行力と10年視点の経営哲学(自律性・アカウンタビリティ・MSV)を紐解きます。

取締役 代表執行役共同社長ウィー・シューキム
Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

エグゼクティブサマリー

Executive Summary

  1. 01

    ブランド価値を守り、資金管理を徹底し、機会が訪れた時に投資できる組織体制を整えておくことが、さまざまな景気局面を通じてMSVを追求する当社グループのあり方

  2. 02

    イノベーションとサービスの戦略を組み合わせることにより、競争の激しい市場においても競合他社との差別化を図り、持続的な成果を生み出すことができる

  3. 03

    各セグメント固有のニーズや市場特性に応じて戦略を調整することで、市場変化に対してより効果的に対応し、NIPSEA中国の持続的な成果につなげる

  4. 04

    競争が激化する中、NIPSEA中国のカラー戦略は、ブランドの差別化とTop of Mindの維持において重要な役割を担う

  5. 05

    自己変革は事業の環境変化への対応力を高める中核要件であり、景気循環を通じて投資余力を確保する上でも重要

  6. 06

    10年先を見据えても、中国市場に対するNIPSEAの揺るぎないコミットメントと、「シェア×マージンの規律」を持って実行する方針は、今後も変わることはない

01

長年にわたり築き上げてきた
NIPSEA中国の競争優位性

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

当社グループの経営上の唯一のミッションである「株主価値最大化(MSV)」は、あらゆる市場で実現を目指すべき使命です。中国でMSVを実現するためには、成長と収益性の明確なバランスが不可欠です。NIPSEA中国は長年にわたり、市場シェア拡大とマージン向上の一方を犠牲にして他方を優先するのではなく、その両立こそが持続的な成長に直結することを示してきました。こうした両立は、規律に裏打ちされているからこそ、厳しい事業環境下においても再現可能です。ブランド価値を守り、資金管理を徹底し、機会が訪れた時に投資できる組織体制を整えておく――これこそが、中国のみならず、それ以外の地域においても、さまざまな景気局面を通じてMSVを追求する当社グループのあり方です。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

中国市場は極めて競争が激しく、マージン規律を欠いた成長は長続きしません。収益性を犠牲にして販売数量を拡大しても持続しにくく、ブランド価値を損ないかねません。NIPSEA中国は、価格競争一辺倒のモデルを採らず、「イノベーション+サービス」を両輪とするモデルの構築を進めており、容易に模倣されにくい強固な競争優位性を築きつつ、競合他社に先んじることができます。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

それは非常に重要な点です。中国の競争環境において、「イノベーション+サービス」の両輪モデルがNIPSEA中国をどのように際立たせ、持続的な成果につながっているのか、説明してもらえますか?

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国は、イノベーションへの取り組みを象徴する「Magic Paint」を注力製品として位置付けています。「Magic Paint」は単なる塗料製品ではなく、レザー、ファブリック、マイクロセメント、石材といった質感表現を通じて、独自のスタイルと審美的な体験を提供しています。感性やライフスタイルを発信するアンバサダーと協力し、テレビ番組「Dream Home Makeover」、クリエイティブ・コンテンツや音楽などの自社IPを活用することで、「NIPPON PAINT」をセンスと専門性で選ばれるブランドとして位置付け、全ての製品カテゴリーにわたってブランド価値の向上につなげています。

サービス面では、製品の選定から納品に至るまで、シームレスで一貫した顧客エクスペリエンスを提供することに注力しています。NIPSEA中国は2011年という早い段階で、「手間のかからないリフォーム・サービス(Hassle-Free Renovation Service)」、つまりは「指一本動かす必要のない(No-Need-to-Lift-a-Finger)」リフォーム・サービスのシステムを立ち上げ、これを2025年の戦略構想でさらに強化しました。拡大を続けるコミュニティストア網を活用することで、消費者が身近な場所で購入判断できるようにし、利便性を高め、リピート購入を促進しています。2025年末時点で、NIPSEA中国のコミュニティストアは全国で300店舗に拡大しています。2026年にはコミュニティストア高度化プログラムを実施し、店舗イメージ、製品ラインアップ、運営モデルの高度化を通じて、「ラストワンマイル配送(last-mile delivery)」の信頼性をさらに高める予定です。並行して、人材認定制度を通じて業界のベンチマークとなる仕組みを構築し、当社基準に沿った高い施工技術を備えた塗装工を育成しています。これは、信頼の醸成につながるだけでなく、高品質な施工に対するNIPSEA中国の評価をさらに高めるものです。

こうしたイノベーションとサービスの戦略を組み合わせることにより、競争の激しい市場においても競合他社との差別化を図り、持続的な成果を生み出すことができます。

02

変化する市場環境への対応

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

中国経済は安定的かつ底堅い拡大を続ける一方で、住宅・不動産市場では大きな構造変化が進んでいます。NIPSEA中国はこうした傾向を積極的に注視しながら、戦略上の優先課題を機動的に見直すことで、環境変化に強い事業基盤を維持し、新たな機会の取り込みにつなげています。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

中国国家統計局によれば、不動産ディベロッパーによる着工床面積は2025年に10%減少し、竣工床面積は18%減少しました。こうした業界全体の逆風にもかかわらず、2025年におけるNIPSEA中国の売上収益は、業界平均と比べて減少幅は限定的にとどまり、相対的な底堅さを示しました。こうした実績は、NIPSEA中国の戦略施策の有効性と、厳しい事業環境への適応力を裏付けるものです。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

こうした業績の底堅さを支える重要な要因の1つが、TUCとTUBの各セグメントに対する差別化したアプローチです。各セグメント固有のニーズや市場特性に応じて戦略を調整することで、市場変化に対してより効果的に対応し、NIPSEA中国の持続的な成果につなげています。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国のTUC戦略は、3〜6級都市の成長の取り込みと、テクスチャーペイント・ポートフォリオの拡充を中心としています。NIPSEA中国は、小規模都市への迅速な展開を可能にするため、アセット・ライト型のアプローチを採用しており、その重要な要素の1つが、「Application Service Partner」モデルです。塗装工との直接的な接点を強化することで、これらの市場での事業拡大を加速しています。県レベルの販売代理店がサービス・プロバイダーを支援し、サービス・プロバイダーが顧客獲得や施工対応に専念できることで、効率的な流通と高品質なサービスを後押ししています。

1,200万人を超える人々が地方に戻る、あるいは移住するなど、地方の住宅需要が高まっています。地方活性化に向けた政府補助金は、2025年に総額1,593億元に達しました。地方の住宅建設に対する顧客ニーズも、従来の基本的な居住機能の確保から、装飾性や機能性を重視する方向へと変化しており、人々は快適な暮らしを求めています。NIPSEA中国は、こうした需要の高度化に対応するため、地方市場に適した競争力のある幅広いテクスチャー・ペイント製品を展開しています。さらに、生産効率と価格競争力の向上により、地方においてもテクスチャー・ペイントをより手の届きやすく魅力的な選択肢としています。こうしたNIPSEA中国のTUC戦略により、市場全体が逆風に直面し続ける中でも、着実に事業機会を捉え、底堅い業績を実現しています。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

一部の投資家は、依然としてTUBを不動産市況の影響を強く受ける事業として捉えています。しかし、より重要なのは、住宅建設市場の回復を待つのではなく、事業のあり方そのものを主体的に見直し、再構築している点です。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

TUBは大きな変革の途上にあります。住宅建設の減速を受け、産業・インフラ関連プロジェクトへのシフトが加速しています。これらの分野では、価格競争力以上に、技術力、サービス品質、信頼性が重視されます。NIPSEA中国は、差別化した性能を発揮し、納期を守り、リスクを適切に管理できるプロジェクトに重点を置いています。こうした取り組みにより、マージンの質を高めるとともに、景気変動の影響を受けやすい住宅需要への依存を低減しているほか、プロジェクト選別の規律強化や与信管理の厳格化にもつなげています。2021年以降、企業、公共工事、重工業、ホテル、複合商業施設などの非商業住宅事業の割合は徐々に増加し、現時点でTUB事業全体の50%を超え、2026年には60%まで上昇する見通しです。こうした戦略的転換により、TUBは変化する市場環境において長期的な成長基盤を着実に築いています。

不動産ディベロッパーによる中国商業住宅販売・着工・竣工の推移(2021–2025)

不動産ディベロッパーによる中国商業住宅販売・着工・竣工の推移(2021–2025)
出典:中国国家統計局

TUB売上高・事業構成比(2021–2026E)

TUB売上高・事業構成比(2021–2026E)
出典:中国国家統計局
03

ブランド力と需要創出

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

NIPSEA中国の強固なブランド力は、需要創造を支える重要な原動力です。高いTop of Mindとプレミアムなブランドイメージを維持することで、消費者から購買時に最も選ばれるブランドとしての地位を確立しています。そして、そうした地位を支えているのが、ブランド構築とチャネル開発への一貫した投資です。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

過去30年にわたり、NIPSEA中国は競争の激しい塗料市場におけるブランド認知の重要性を認識し、ブランドイメージの構築と強化に一貫して投資してきました。その結果、競合他社の約2倍となる50%を超えるTop of Mindを維持し、絶対的な優勢を確立しています。

NIPSEA中国のブランドコミュニケーション戦略は、11年連続で放送されているテレビ番組「Dream Home Makeover」との長年の協業を含めて多面的であり、美しい生活空間を蘇らせるブランドイメージを消費者の心に着実に浸透させてきました。また、カラー(色彩)の提案力を発信し、壁面カラーのトレンドをけん引するブランドとしての地位を確立してきました。その集大成として、2022年には「Magic Paint」シリーズを発売し、さらにテクスチャー・ペイントの新たな潮流をけん引するブランド・アンバサダーを起用しました。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

カラーは、顧客との接点を築く上で中核となる要素です。競争が激化する中、NIPSEA中国のカラー戦略は、ブランドの差別化とTop of Mindの維持において重要な役割を担っています。トレンドを取り入れた幅広いカラーパレットを展開することで、消費者が自らのライフスタイルに合った選択肢を見つけやすい環境を整えています。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国のカラー戦略は多層的です。まず、CCM(自動調色機)のデータを活用し、地域別、年齢層別、季節別にどのカラーがトレンドとなっているかを把握することで、市場の変化を先取りしながら、具体的な顧客ニーズに即した提案につなげています。また、毎年カラー・トレンド・レポートを発信し、SNSのインフルエンサーとも連携して人気カラーの訴求を強化しており、特にRednote(小紅書)ではカラー分野で第1位の評価を獲得しています。保守的な嗜好を持つ顧客に対しては、定番で汎用性の高いカラーを提案し、店舗での販売研修や売場での演出の最適化を進めることで、使いやすい配色・組み合わせを提供しています。

NIPSEA中国は、AIツールを導入し、高品質な施工事例素材の生成や、WeChatミニプログラムを通じた双方向型のカラー選択体験を提供しています。主要なデザイン展示会では、カラーをテーマにした没入感のある空間演出を行い、著名な美術館との提携を通じて、特に若年層に対するブランド訴求力の強化を図っています。こうした取り組みを積み重ねることにより、NIPSEA中国のカラー戦略は需要創出の真の推進力となっており、ブランド力を構成する重要な要素となっています。

04

自己変革と生産性向上

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

特に不確実性の高い事業環境下においては、市場における成長施策だけでなく、生産性の向上とリスク管理も重要です。グループ全体の観点から見ても、自己変革は任意の選択肢ではありません。それは事業の環境変化への対応力を高める中核要件であり、景気循環を通じて投資余力を確保する上でも重要なものです。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国は過去数年にわたり、IPD(Integrated Product Development)やPDT(Product Development Team)の導入をはじめ、重要な組織変革を進めてきました。そして、フロント、ミドル、バックオフィスの各機能をシームレスにつないで、部門横断で一貫した連携を可能にするプラットフォーム型の組織モデルを構築しました。フロントオフィスでは、重点業界と重要顧客に焦点を当て、顧客価値を理解し、取り込むことに注力しています。ミドルオフィスでは、特に製品・技術イノベーションを通じた利益の創出と組織能力の強化に焦点を当て、市場において真に差別化したソリューションを開発することを可能にしています。一方、バックオフィスでは、組織全体を効率的かつ一体的に運営し続ける統合サービス機能を構築しました。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

投資家からは、中国におけるリスク耐性についての関心が一段と高まっています。NIPSEA中国では、適切な管理をどのように確保し、問題をいかに早期に把握し、どう対応しているのでしょうか?

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国は、特に不動産関連事業において、与信評価と管理プロセスを強化してきました。現在では、個社ごとの信用リスクや流動性リスクを把握できる体制を整えており、問題が深刻化する前に対策を講じることができるようになりました。また、法務、財務、事業の各部門が連携できる体制を構築することで、与信リスクや貸倒れリスクに迅速かつ包括的に対処しています。これにより、潜在的な問題を早期に顕在化し、強固なリスク管理体制を維持しています。

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

グローバルで見ても、デジタル化とAIにより、スマートファクトリー化、予知保全、高度な品質管理、個別最適化された顧客エクスペリエンスの提供が可能となるなど、塗料業界に変革をもたらしています。こうした技術を積極的に取り入れる企業は、イノベーションの推進やオペレーションの高度化を実現し、顧客や規制当局の高まる期待への対応力を高めています。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国のデジタル化とAI戦略は、「データフローの統合+AI主導」の変革を推進することに重点を置いています。その着実な実行に向けては、変革推進委員会(Transformation Committee)が戦略立案と意思決定を監督し、部門横断のワーキング・グループやコンセンサス会議を通じて、プロジェクトの遂行を促進しています。また、AI人材の育成に重点を置いた全従業員向けのエンパワーメント制度を整備しており、定期的な調査とレビューを通じて継続的な最適化を図っています。

AIプロジェクトの具体例としては、壁面の完成イメージや3D動画を2分以内に素早く生成できるTUCの「AI Design」アプリケーション、手作業による処理比率や例外対応の時間削減を図るTUBの「AI Intelligent Delivery Assistant」、製品販売からサービス販売へと店舗の高度化を支援する「百城千店(Hundred Cities, Thousand Stores)」施策などがあります。

05

持続的成長に向けて

取締役
代表執行役共同社長
ウィー・シューキム

10年先を見据えても、中国市場に対するNIPSEAの揺るぎないコミットメントと、「シェア×マージンの規律」を持って実行する方針は、今後も変わることはありません。

Nippon Paint China(NIPSEA中国)
最高経営責任者(CEO)
エリック・チュン

NIPSEA中国は、今後も「シェア×マージンの規律」という基本原則に引き続き注力していきます。質の高い経済変革やグローバルな構造変化に対応するため、イノベーション主導の成長、サービスの強化、スマートファクトリー化、柔軟な配送、組織変革、効率改善、技術リーダーシップ、AI活用、持続可能な開発といったコア戦略を推進していきます。さらに、テクノロジーを活用することで、価値創造型のエコシステム・プラットフォームを構築し、総合コーティング・ソリューションにおけるリーダーシップを一段と強化していきます。

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